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「ほら、いい加減白ちゃんから離れろよ」 「……」 「先輩を無言で睨むなっつーの。白ちゃん大丈夫?」 「ありがとーございまーす」  どうせならもっと早くに助けてほしかった。  差し伸べられる神原の手を掴んで立ち上がり、葉っぱを払ってジト目で睨む。  頭を撫でられた気恥ずかしさから顔をそらした。 「俺は神原先輩×白乃瀬でもいいぜ」  ものすごくいい笑顔でグッと立てられた親指をへし折りたい。 「てかさぁ白金はなにしてんのぉ?」 「萌えの気配を察知して」 「うわぁ意味わかんなぁい」  真顔で言い放つ白金は鼻から赤い液体が滴り落ちているのに気づいていないのか。 「俺としては白ちゃんが森林公園にいることが気になってんだけど?」 「あーヒツジ役らしいんで。神原さんは青空と見回り?」 「三角関係キタコレ!」  隙あらばキスを迫ってくる青空に自重する気のない白金と、収拾のつかなくなったカオスな状況に神原を見た。  投げ出したとも言う。 「じゃ、俺は俺らで仕事あるんだから。そろそろ行こうか朔君」 「……仕事増やすなよ糞毬藻」  毬藻? と首を傾げた紅葉に溜め息を吐く風紀二人。  どこかやつれた哀愁漂う雰囲気の二人を見送る。  姿が見えなくなったところで、白金と顔を見合わせて人の居なさそうなルートを辿りながら校舎へと向かうことにした。  ちょっとした物音にすら反応してしまい、校舎へ着く頃には昼休憩に突入してしまうかもしれない。  お腹鳴ったら恥ずかしいなぁなんて的外れなことを考えていたら、腕を勢いよく引かれて茂みの中に突入した。 「いっ……! 白かっ」 「静かにっ」  人差し指を唇に当てた白金があまりにも真剣な表情をしていることに気づいて口を閉ざす。  葉と葉の隙間から何か覗いているその視線の先を追えば、歩いてくる生徒が見えた。 「会計様だ!!」  見つかっちゃった、とボーっとする紅葉の手をとって走り出したのは白金だった。 「見つかっちゃったじゃなくて逃げろよ!」 「逃がしてくんないの?」 「俺運動神経そこそこだから無理!」 「あは、白金役立たずぅ」 「んなこと言うなら捕まえるぞ!」 「そんなことしたら隊長さんにチクるもん」  ね、白金、と振り返って、絶句。 「、白金!?」  背後で白金が倒れていた。  なにがあったのかなにをしたのか、後頭部からは血が流れていた。 「ねぇ、ちょっと、冗談でしょ!」  抱き起こし、必死に声を呼びかければ小さく呻き声を漏らした。  気を失ってるだけとわかり、安堵の息を漏らす。  しかし、誰が一体。  警戒心が高まる。風が頬を撫でる感触に鳥肌が立つ。 「みーっけた」 「っ、」  ぞわり、と背筋が泡立つ感覚。  後ろから抱きすくめられ、口元に布を押し当てられる。甘ったるい、鼻腔を擽る匂いがして、息苦しさからそれを深く吸い込んでしまった。 「まさか会計様を捕まえることができるなんてな、俺ちょーラッキー」 「とにかく、見つかんねえように行こうぜ」 「こっちはどーすんの?」 「会計様だけでいいだろ」  聞き覚えのない複数の声。体から力が抜けていくのを感じた。背後の生徒に寄りかかるように体に力が入らなくなり、意識も朦朧としていく。  抱き上げられた浮遊感を最後に、意識は沈んでしまった。

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