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 触れる手つきは酷く丁寧で慎重だった。大切にしたい、という想いに溢れて、羞恥心に顔が赤くなる。  常夜灯だけが点けられた室内は暗いようで明るかった。  首筋から、ゆっくりと胸元を撫で、脇腹を辿っていく手のひらの熱さに涙がにじむ。 「紅葉君って、意外と敏感だよね」  クスクス、と喉で笑う彼。  胸で感じられると後ろでも感じられるみたいだよ、と言う神原に辱めを受けている気分だ。それでも、指先で軽く胸の芽をひっかかれると重たい熱が腰に溜まっていった。  こんな、優しいセックスは初めてだ。セックスはいい思い出なんかない。新入生歓迎会の時の無体なんて思い出したくない。ぞわり、と鳥肌の立った肌に神原が顔を上げる。 「嫌?」 「いや、じゃない……」 「本当に? 嫌だったら、」 「ヤじゃない! ただ、新歓のときのを、思い出して」 「……そっか」  眉を顰めて、哀しげに表情を歪める。 「ちがっ、あの、風璃さんが嫌なんじゃなくって」 「大丈夫、わかってる。ふふっ、あのクズを俺が直々に手を下せないのが残念だなぁって。それに、忘れるくらい、俺で塗り替えてしまえばいいんだろ」  強く鈍い輝きを秘めた瞳に息を呑む。あ、食われる、そう思った。 「あ、ぁ、の、初めて、だから……優しく、して」 「……あー、もう」  ガシガシと頭を掻いた神原に息を呑む。何か言っただろうか。  こういうことは初めてだ。自分が、他人とこういう関係になるとも思わなかったし、男同士のやり方なんて、分からない。そもそも、女性ともまともに付き合ったことがないのだ。正しいセックスのやり方なんて誰も教えてくれない。  女役、というのだけはわかった。女扱いされてることに憤ることもないが、受け身でしかいられないことが辛かった。 「そういうこと、あんま言わないで」 「え、やっぱり、初めては嫌……」 「じゃなくって! 今、必死に我慢してるから、あんまり煽ること言うと我慢できなくなる」  口を塞がれてしまう。目を見開いて、赤い瞳とかち合った。紅葉を映した瞳は、情欲に塗れ、滾った熱を孕んでいる。  ゴリ、と腰を押し付けられてものが硬くなっている。ひく、と喉が引き攣った。大きい、硬いし熱い。無理だ。こんなの入んない。 「だいじょーぶ、入るから」  下腹の柔い性器を手のひらで包まれる。直接的な快感に息が詰まる。 「我慢しないで。気持ちよかったら声出して」 「は、ずかしいっ」 「声出してくれた方が、俺は嬉しい」  困った顔で微笑まれるのに弱い。そんな、捨てられた子犬みたいな顔で見ないでほしい。  人差し指と親指で輪っかを作り、上下に扱かれる。硬く芯を持って首をもたげる性器に唇を噛む。 「んん、ふっ、んぁ、」  口付けられて、呼吸もままならない。声が溢れて悶えずにいられない。  ぐち、ぐち、と粘着質な音を立てながら、一定のペースで緩く扱かれる。もっと、もっと強い快感を求めてもどかしさに腰が動いてしまう。まるで自分から懇願しているようで泣きたくなった。  性は淡白なほうだったのに。こんなの、想像してなかった。だって、全部が気持ちイ。  触れるだけのキスも、深く繋がるキスも。肌を撫でるだけでも気持ちがいい。苦しいくらいの熱量が押し寄せる。 「んぁ、え、え、えっ!? や、待って、かざ、風璃さん!?」  胸を滑って、舌先が臍を抉って、かぷり、と性器を口に含まれる。  ぶわっ、と全身から汗が吹き出す。そんなとこ、咥えるなんて頭おかしいんじゃないの!? 羞恥と、ぬるぬる滑る口内に、声が我慢できない。  唾液と、先走りを絡めた指先が後ろの窄まりをくすぐる。つぷ、と爪先が埋め込まれると言い知れない、骨が痺れる感覚に顎を逸らした。  じゅぷ、ず、ズッ、と音で犯されているようだった。  口元を両手でキツくおさえていないとあられもない声で喘いでしまいそうだ。  いつの間にか、後孔をイジる指は三本に増えていて、浅くしこった所を押されるともうすぐにでもイッてしまう。 「ぁっ、あっ、あ……あぁ、ん……ッ、ダメだって、もう、イッちゃ……!」  責める手を止め、膨らんだ先に吸い付いて離れた神原。  うっとりと頬を赤らめ、口の端から垂れた唾液を赤い舌先が舐めとる。雄の、捕食者の顔に心臓が高鳴った。 「ゴム、ないよね」  片膝を持ち上げ、くぷくぷと先っぽを飲み込もうとする浅ましい孔だ。  腰を押し付けて、ゆっくりと飲み込んでいく。 「んぅ、ふ、は、ぁ、はぁ、」 「くっ……」 「かざりさ、んっ……風璃さんも、気持ちィ?」  目を細めて神原を見る。  眉を顰めてスローペースだった律動が、深く強く熱を打ち込まれる。 「だからッ、煽るなって……!」 「あっあっ、ぁ、っん、や、らぁっ、つよ、強いぃ……!」  汗で黒髪が肌に張り付く。白い肌が赤く火照り、酷く扇情的だ。  澄ました顔で、誰にでも柔らかく微笑む紅葉が、自身の下で喘いでいる。顎を逸らして、必死に声を抑えようとしているのがいじらしい。  初めて、と言っていたが後孔で快感を得られている様子に頬が緩んだ。自分のモノで感じいっている姿はとても可愛らしかった。 「ふっ、あン、んっ、やだっ、イく、ィくから……!」 「いいよ、一緒にイこうッ」  腰を打ち付けるペースが早まり、奥がゴリゴリと抉られる。  ぐちゅ。ずりゅ。ずちゅっ。打ち付けるほど、深く奥まで届く熱に腹を犯される。孕んでしまう、なんて戯言が溢れた。  一番深いところを抉られて、手のひらが性器を包み込んで、鈴口を擦られ――目の前が明滅する。 「ッ――」 「ぁっ……!! ッ!」  薄い腹に白濁を吐き出して、脱力する神原を抱きしめた。  息が浅く乱れ、高みから戻れない。バクバクと高鳴る心臓がこのまま破裂してしまいそうだった。

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