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突っ込みたいのは男の本能だ

「あっ、ああっ、ああぁぁぁぁ、イク……」 「いいよ、俺もイクから、イって、ウッ……」  オレに覆いかぶさってた男の腰使いが激しくなる。直後、中に広がる熱。ああイったんだなって思った。 「生でヤったからね、掻き出してあげるからお風呂行こっか」 「んんー大丈夫、オレ自分で出来るよ。気持ち良かったよ。また会ったら遊んでね」 「そっか。じゃあ先に帰るね」  今夜の寝床ゲット!  別にホームレスじゃないからちゃんと帰る家はあるんだけど、今から帰るのはかったるい。そもそもここに入ったのが遅い時間だから宿泊料金だし、だったら明日のチェックアウトまでのんびりした方が得じゃね?って思うんよ。  平日はあんまり気にならないけど、週末になると何か人恋しいんだよね。 「……はっ、ん……っ、んんっ」  さっきの男が出したのを指を使って掻き出す。多少は感じるけど、それでおしまい。 「ふぅ……」  シャワーでナカをキレイにして、それから徐にテレビを付ける。付けた直後はAV女優がアハンウフンしてる番組だけど、チャンネルを変えて普通の番組にする。おっ、まだギリギリスポーツニュースやってる時間じゃん。  ボーっとテレビを見ながら思う。オレってさぁ、もしかしてタチなんじゃねぇの?  会社ではゲイってのは明かしてない。お堅い会社だし、いろいろ柵もあるから別に自分の性癖をカミンガウアウトする気は全くない。会社は金を稼ぐ場所で人生の中心じゃないから。  特定の相手がいないオレは週末になると人恋しくてゲイバーに繰り出す。一夜の相手じゃなくもっと続く相手が欲しいと心の内っ側で思いつつ。でもさ……、ゲイバーで男漁りするヤツのほとんどはタチなんだよ。皆誰かに突っ込みたくてタマンナイヤツら。  オレは身長は高めなものの細身でそこそこキレイな顔をしてるから、週末の夜の相手には困ったことは無い。お初もあるし、なじみの奴もいる。でも皆タチなんだよ。  そうなんだよ。ゲイバーに来る7割はタチで、オレに声かけてくる10割もタチだ。  ネコと知り合いになりたいと思う。って言うか突っ込みてぇ。突っ込むのはオスの本能だよな。でも残念、今のままじゃムリなんだよ。  あのゲイバー界隈ではオレはネコってことになってるから。  ボーっとしてたらスマホに着信。 「久しぶり、今どこよ? ひとりなら遊ばないか?」 「んんっ、オレ今ラブホなんだけど」 「どこ? そうやって答えるってことは相手は帰ったんだろ?」 「よくわかるなぁ……。まあ、そんなワケだから、お手柔らかに頼むな」  知り合いのタチからデンワ。明日の朝までまだ時間あるし、ひとりでゴロゴロしてるもの何だから、まぁいっか。 「よっ、これ差し入れ」 「ビールとツマミじゃん。サンキュ!」  暫くしてやって来たコイツは、かなり古い知り合いになるのかな? 知り合ってからもう5年くらいは経ってる。もちろん最初は身体のお付き合いから、知り合った場所もやっぱりゲイバーだ。  コイツとは月に1~2度会ってセックスするけど、考えてみたら特定の相手がいたって話しは聞いたことがないな。まあそこまで深い関係じゃないから、プライベートなことはほとんど知らないけど。  オレたちはソファに寛いて、しばしビールとツマミを堪能した。夜は長いんだ、ガツガツする必要は無いっとな。 「今日の相手はどんな人だったん?」 「ん? お初の人。40過ぎてるんじゃないかな。ワリと穏やかなカンジの人だった」 「じゃあエッチも穏やかだった?」 「どうだろ? 1回しかしなかったから、もしかしたら淡白なのかも。あっ、でもフェラや前戯はしつこかった」 「淡白ねぇ……、こんなところにマーキングしてった人が?」  突然鎖骨を触られてビックリ。あのオッサン、キスマークなんか付けてたんか。そう言やぁチクっとしたような気もするなぁ……。  そこでハタと思い出す。チクっとしたのは鎖骨だけじゃなかったぞ。 「げっ!」  思わずそんな声が出た。太ももの内側にもキスマークが2つ。げげげっ。 「おまえさぁ、何個付けられてんだよ。ちょっとそれ脱いでみろ」 「えっ、なっ……」  身に付けていたホテル備え付けのガウンを無理矢理剥かれてしまった。パンツ履いてなかったからあっちゅう間にスッポンポンだ。まあいいけど。 「すごいな……。おまえさ、次にそのオッサンに会ったとき苦労するかもよ」 「えっ、なんで?」 「独占欲の塊じゃんか。鎖骨に1コ、胸んとこに2コ、わき腹に1コ、背中に2コ、それと太ももの内側にもあるんだろ」 「げっ、そんなにあるん? あんにゃろう、もう二度と誘いには応じないぞ」 「こんなに跡残すってことはさ、自分以外のオトコに食われないようにってことじゃないの? おまえ当分あのゲイバー行かない方がいいかもな。行ったら確実に捕まるぜ」  なんつう失態。週末のゲイバーはオレの楽しみだったのに。当分行けないってことは悶々しちゃうんじゃないか。  あっ、でもネコやめるんだったらいい機会なのかも。  おっとその前に……。 「オレさ、マーキングされてるの知らなかったんだ。知ってたら電話もらったときこの場所教えなかったと思う。他人のマーキングがある状態で会うって失礼だよな。ほんと、ごめんなさい」  マジメな顔して頭を下げた。電話もらった時点でラブホにいたんだから、オレが他のヤツとエッチしてたのはお互いわかってるんだけどさ、それとキスマークは別だと思うんだ。いろいろ遊んでるオレでも、そこはそう思うんだ。つか、勝手にマーキングなんかしやがってあんちくしょう! 「意外と律儀なんだな。まあ知らなかったんだからしょうがないさ。それよりも、スッポンポンで頭下げられても、ギャグにしか見えないし」  そう言って笑われた。ひでぇ。マジメに謝ったのに、しかも裸になったのはオレからじゃ無いし。  むくれた顔をした直後、手を引かれた。 「おいで。許す代わりに、その印をオレので上書きしてやる。他のオトコのがついたままなのはムカツクし」  直後、鎖骨にチクッとした刺激が2回。 「上書きと、あとオレからの新しいのもね」 「もしかしてオレ……、身体中キスマークだらけにされるの?」 「ふふっ……、いっぱい愛してあげるさ」  そう言ってベッドに押し倒された……。 「ん……、あっ、ぁあっ、あっ、はぁ…ぁん」  手と唇が執拗にオレの身体を這い回る。時折感じるチクッとした刺激。同じ場所で何度も感じるのは、おっさんに付けられた跡にしつこく重ね付けしているせいだろう。本当に身体中、オレの身体で唇が触れてない場所はもう無いんじゃないかと思う。 「ひぅっ!」  ローションを纏った指がオレのナカに入ってきた。いきなり3本も。一度おっさんとヤってるとは言え、それも数時間前だ。かなりキツい。が、直ぐにそれも気にならなくなる。ナカのオレの一番感じるところを刺激されてあっという間にイってしまった。 「今日は、ぁあっ、一段とっ、んんっ、あっ、あっ、はげっ、しっ、んあっ」 「他人からの印を目にしちゃったからね、やっぱムカツクわ」  そう言って前も扱かれた。激しいその手の動きにガマンできず昇天。  それから指が抜かれて、ソイツのモノが入ってきた。ゆっくりとじゃなく、勢いをつけてズンっと一気に。あまりの衝撃に息が出来ない。でもそんなオレの状態なんか全く気にせず、激しい腰使いでオレを攻める。コイツとは何度も身体を繋げたことがあるから、激しい動きのクセしてオレの感じるところを突いてくる。 「ひっ、ぃぁぁああぁぁぁっ」 「キツ、締めすぎ……」  イったのはほぼ同時。と言うか、オレのナカがコイツを強引にイカせたか。  そんなこんなで、只今賢者タイム中。  珍しい。普段ならがっついて3回はするのに、今夜は何故か1回で終了。もしかしたら休んだ後にあるのかもしれないけど。オレとしてはもう1回くらいはヤリたいんだけど、どうなんだろ? 「何か難しい顔してね?」 「ん? 嗚呼……」  眉間に皺を寄せて考え込んでるようだったので、思わず聞いてみてしまった。でも言いたく無いようだったし、オレとしてもプライベートな部分には踏込みたくはないしな。とりあえず曖昧な返事をもらっただけで良しとした。 「なあ……」 「ん、何?」 「おまえさ……、このままずーっといろんなオトコを渡り歩くの?」 「へ?」 「特定のヤツとか作んないのか?」  珍しく真剣な顔でそう聞かれた。この人は普段オレ以上に遊んでる雰囲気なんだよな。だからそんな質問をされるのがめちゃ意外ってカンジ。 「まあ、好きなヤツができたら落ち着くんじゃないかな」  だからオレも、オレなりにマジメに答えたんだ。 「それってオレじゃダメか?」 「へっ?」 「へじゃなくて、オレじゃダメかって聞いてるんだよ」 「あー、ダメっす。ゴメン」 「即答かよ。傷つくなぁ」  まさかまさかの展開にちょっとビックリ。もしかしてこの人、オレのこと好きなんか? かなり遊んでる雰囲気の人だから、その言葉に驚くのは仕方ないと思うぜ。 「なあ、何がダメなんよ?」 「何がって……」 「おまえ好きなヤツいないだろ。だとしたらオレを断る理由って何さ?」 「何さって言われても……」  穏やかな表情で言ってるけどその目が真剣で、何と言うか、捕食者の目ってカンジだ。オレなんかを捕まえてどうすんのさ?って思うんだけどなぁ……。 「うーん……」 「もしかして迷ってる? なら脈アリ?」 「そうじゃなくて……」 「そうじゃなくて?」 「オレさ……、ネコ止めたいワケよ」  やっと言ったオレのその答えに「へっ?」と思いっきり怪訝な顔をされた。 「何つぅかさ、オレだって男じゃん。突っ込まれて気持ち良いけど、でもそれ以上に突っ込んで気持ち良くなりたいワケ。別にヘンじゃないだろ、それが理由。だからタチのアンタとは付き合えない」  正直に理由を話した。別にヘンじゃないだろ? 突っ込みたいなんてオスの普通の欲求だし、突っ込む同士が付き合ってっも不毛なだけだしさ。 「おまえさぁ……」 「えっ? ぅおっ! んんっ、んっ、ん、ん」  出来の悪い息子を見る母親のような目でオレを見たと思ったら、いきなり押し倒された。舌と舌が絡み合って熱を分け合う。その熱は身体全体を熱くしてオレの中心に集まってきていた。 「アアアッ!」  何の前触れもなく、いきなりソイツのモノが入ってきた。さっきヤツが出したもののおかげで勢い良く最奥まで貫かれて、その刺激であっけなく昇天。 「あっ、やっ、んんん、はぁぁ、激しっ、ああまたっ」  その後も激しく抽挿されてワケが分からないまま、またイった。 「突っ込まれただけで簡単にイケちゃう身体のクセして、前扱かれなくてもイケるクセして、今さらタチになれるワケないじゃん」 「あっ、ヤダ、ダメッ、あっ、ドライ来そっ」  久しぶりのドライは、一瞬オレを別の世界へ連れてった。そこは一面星が瞬きそして火山からマグマが噴火していた。もしかしてオレって異世界に来ちゃった?って思ったけど、次の瞬間目の前にはヤツの顔があった。吸い込まれるような黒い瞳に何故が心臓の鼓動が大きく跳ねたような気がした。 「やっぱおまえオレと付き合え。突っ込みたい件もオレが叶えてやるから」  優しそうな目でそう言いながら、汗で額に張り付いた髪の毛をかきあげてくれた。  突っ込みたい件を叶えてやるってどうやるんだろ? あいつと付き合うってことは、あいつ以外とのエッチは無いと思ってるんだけど違うんだろうか? リバってオレがあいつに突っ込むのか?  何か知らないが付き合うことになったあいつの言葉に期待しつつ待つこと数日、突然オレの家に宅配便が届いた。差出人は知らない名前……たぶんアイツだ。 「んなっ……」  中に入ってたのはオナホールだった。右手だけじゃモノ足りないアナタにオナホール、違うか。オナホールって一言で言ってもいろいろ種類があって、あいつがオレに送ってきたのはフェラチオタイプってヤツだった。  いやそうじゃなくて、これに突っ込めってこと? なんだよアイツ、全然嬉しくねぇ。オレが突っ込みたいのはこんなもんじゃねぇっつうの。  とか何とか言っちゃって、好奇心に負けて使ってみちゃったけどな。確かに気持ち良いが所詮は右手の延長線、オレの願いは叶わず虚しさだけが漂うのさ。  そう思ってた日がオレにもありました。 「あっ、あっ、また、またイク、イっちゃう」 「いいよ、イケよ。何度でもイかしてやるから」  あいつに後ろから貫かれながら、オレの息子にはあいつが送ってきたオナホール。自分でやったら虚しいだけなのに、何で人にやってもらったらすごいんだろ? 前も後ろも刺激されて、しかもズチュズチュと耳からも犯されて理性なんて星の彼方だ。  突っ込んでるワケじゃないけど、突っ込んでるようなカンジ? これって擬似3Pじゃん。そう思った途端にキュッと後ろが締まって直後ジワっと熱を感じた。  突っ込みたいって希望は叶った……のか?  まあでも、こいつ相手ならネコのままでもいいかって思えたかな。  アブノの世界につま先だけ触れたような気がしないでもないけど。  まあいっか。

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