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2-1 同級会 ~ケンイチ~

「おっかしいな。ここでいいんだよな?」 俺は、スマホのメールを確かめる。 間違いない。 美映留中央(みえるちゅうおう)駅の改札を出た所。 今日は、成人の日って事で、スーツと晴れ着の若者達を数多く見かける。 いやぁ、希望に満ちて羨ましい。 って、おっさんみたいな言い草だが、実は俺も去年に成人式をやったばかり。 そこへ、俺の肩を叩く女性があった。 その女性は、俺を見てにこりと笑う。 やべぇ、この女、同級会の出席者? という事は、同級生だろ? まったく、思い出せない。 「えっと……名前なんだっけ?」 俺は焦って目を泳がせる。 「なぁ、ケンイチ、お前、何言っているんだ。オレだよ、オレ。カオルだ」 「えっ、えーっ!」 俺達は、駅ビルの中のカフェに入った。 俺は、腕組みをしながら、今まさにカオルに文句を言うところだ。 「なぁ、カオル。同級会さ、中止になったんなら早く言えよ」 「わりぃ、オレもさっき知ったんだよ。ははは」 カオルは、手でごめんなさいの形を作り、片目をつぶって誤魔化し笑い。 そんなわけあるか。 どう見たって、ガチガチに女装してるじゃないか。 そんな時間あるなら、一本連絡くれればいいじゃないかよ。 けっ。 笑えば済まされると思っていやがる。 だけど……。 くそっ。 可愛いじゃないか! どうも調子狂うぜ。こいつの女装。 それに、本音のところ、まぁ、中止になってホッとした自分がいる。 よくよく考えてみれば、思い出せるやつも少なさそうだって事が先程の件でよく分かった。 「まぁ、いいけど……」 「そっか。ケンイチなら許してくれると思ったぜ。ふふふ」 カオルは、満面な笑みで微笑む。 やべぇ。 また、ドキドキして来た。 いや、待てよ。 今日のカオルは、ゴスロリじゃねぇ。 なのに、どうして俺はときめいているんだ? 俺は、まじまじとカオルを見た。 丸首の白セーターに赤チェックのミニスカート。 黒タイツに、もこもこブーツ。 普通のおしゃれ女子じゃないか。 そっか、髪型か。 こいつウィッグでロングにしているから、印象が全然違うんだ。 それに、化粧で童顔を誤魔化して大人っぽくしてやがる。 これじゃ、ぱっと見、カオルって気付かない。 なるほど。 だから、カオル自身にじゃなく、普通の可愛い女ってことで、ドキドキしたってことか……。 そうだよ、カオルは男。 男にときめくってのも変だもんな。 「カオル。で、どうしてお前女装しているんだ?」 「だから、言っただろう? 姉貴に無理やりさせられているって」 カオルは、伏せ目がちに照れ笑いし、髪の毛の先をくるくる回す仕草をした。 やべぇ。 こいつ、普通に可愛い。 これって、(はた)からみると普通にデートしているのと同じじゃないのか? 俺は、彼女は生まれてこの方一度もいないから想像だが……。 初デートがカオルとか……。 しかも、ミニスカートって、前回同様に、どストライク。 まっ、まさか、こいつパンツとかも女物を穿いているって事ないよな? そうしたら、お願いして、少し見せて……。 いかん、いかん。 俺は一体何を考えているんだ。 相手はカオルだぞ? 男だぞ? しっかりしろ、俺。 って、言ってる(そば)から、また、胸が熱くなる。 ん? ところで、こいつの今日の格好はコスプレなのか? 「なぁ、カオル」 「なんだ?」 「今日の格好は割と普通だよな? この間は、コスプレって言ってなかったか? 姉貴の趣味って」 「へっ?」 カオルは、素で驚いた顔をした。

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