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臆病な極道と月のウサギ?2(竜次郎・湊)
「ん……っ、ふ、……ぁ」
厚い舌に口内をくまなく探られ、貪られて、呼吸が苦しくなってきたところで顔が離れた。
着ていたTシャツを奪われると、いつの間に脱いでいたのか、畳の上に敷いた竜次郎のワイシャツの上に転がされる。
背中が擦れるのを気にしてくれたようだ。
室内は暗いが、廊下からの明かりが微かに入り、目が慣れてくれば相手の姿がちゃんと確認できた。
湊を見下ろす竜次郎の指先が、手触りを楽しむように肌を辿る。
「やっぱ、月よりお前を観賞する方がいいな」
「ん……っ、そこは、比べるところなのかな」
「背中、痛くねえか?」
「うん……、大丈夫」
今日は、このままここでするらしい。
障子は閉めたもののその向こうの窓は開いたままで、それが少し気になったが、湊もまた竜次郎を求めていて、わざわざ寝室に行きたいと主張する気にはならなかった。
竜次郎が体重をかけるようにして身体を重ねてくる。
再び顔が近づき、素直に目を閉じて口付けを受け入れた。
ちゅっと密やかな音をたてて舌が絡む。
湊の舌を押し込むようにして入ってきた舌を吸うと、あからさまな音がたって、猥雑さに煽られて息が上がった。
「ん、っんんっ……!」
キスを楽しんだのも束の間、密着しているせいで互いの下腹部が擦れて、強い刺激にびくんと体が跳ねる。
過剰な反応が面白かったのか、更にぐりぐりと硬くなったものを擦り付けられ、湊はすぐに限界まで追い詰められてしまった。
まだ、ズボンははいたままだ。下着を汚してしまう危機感を感じ、湊は必死に訴えた。
「だ、だめ、でちゃう、から」
「出しちまえ」
「や、ぱんつ、汚れちゃ、っ~~~~~~」
低い声でそそのかされ、ぐっと強く擦り付けられた刺激で、湊のそこは呆気なく弾けてしまった。
「っは………っ、や、」
胸を喘がせながら、粗相をしてしまったような情けなさに眉を下げる。
濡れて張り付く感触が気持ち悪い。
「ぅ……りゅ、りゅうじろうの、いじわる……」
恨みがましく見上げたつもりだったのに、至近の竜次郎は、何故かごくりと息を呑む。
「……お前……、あんまエロい顔すんなよ」
抗議したのに、どういう感想なのだろう。
もっと何か言いたかったが、ズボンのウエストに手をかけられて、それどころではなくなった。
剥がすようにして脱がされると、下着との間に体液が糸を引いたのがわかり、いたたまれない気持ちになる。
「べったべただな」
「あ、洗わないと……」
「後で俺が洗っといてやるから」
じたばたする湊を適当にあしらった竜次郎は、汚れた衣類をぽいとその辺に放ってしまう。
「この部屋にはローションの用意もねえし、ちょうどよかったな」
「あ……!」
先走りと白濁の混じったものをすくった指が、ぬぐ、と後ろに入ってくる。
待ち侘びていたように、そこがきゅっと食いついたのがわかった。
「んん……っ、あ、ぁん」
熱くうねる場所を拡げながら、もう片方の手は、戯れのように胸の尖りを弄ぶ。
弾かれ、摘まれ、引っ掻かれ、放ったばかりの前が再び頭を擡げるのがわかった。
「ぁっ、や、そこ、だめ、」
「だめか?どっちが?」
「んっ、どっちも、き……気持ち……から、だめ、あっ」
ぐっと突き上げられると、いつも湊の中をいっぱいにしてくれる熱を思い出してしまい、もっと繋がりたいという欲望が膨れ上がる。
「りゅうじろ……、」
震える手を伸ばし、快楽に潤んだ瞳で強請るように見上げた。
「欲しいのか?」
「ん……」
「俺も入れてえ」
ストレートに欲望を伝えられて、湊も口元を綻ばせた。
足を抱えられて、欲しがって震える場所に熱いものが押しつけられる。
「あ、」
ぬぷっと入ってきた大きなものは、無理に深い場所をこじ開けたりはせず、最初のうちはゆっくりと中を擦った。
「あ……、っあ、あっ……あ、」
緩い抜き差しの繰り返しが気持ちいい。
ずっとこうしていたいと思うほど、ただ気持ちが良くて、緩んだ口元から唾液がこぼれた。
「ん……っ、りゅうじろ、きもち、い、……っ」
とろけた思考のまま、素直にそれを伝えると、湊の中の竜次郎がどくんと震え、体積を増す。
圧迫感が強くなり、息を呑むと同時に膝裏を抱え直されて、折り畳むようにして深く突き入れられた。
「ああっ!」
突然始まった、体重をかけて打ち下ろされるような激しい抽挿に、湊は敷かれたシャツを握りしめて悶えることしかできない。
「あ!あ、や、りゅ、りゅうじろう……っ、は、はげし……っ」
「悪い、お前がエロすぎて腰止まんね……」
「やあぁっ、待っ……、あっ、だめぇ、」
音が高く鳴るほど打ち付けられて、応えるように腰が動いてしまう。
「あっ、あ、も、っい、いっちゃ、」
「湊……っ」
「あぁ……っ」
竜次郎に奥深くを濡らされ、湊も絶頂へと押し上げられた。
奥への刺激で極めた時の絶頂の余韻は長く、一足先に息が整った竜次郎が体を起こしても、湊はまだぐったりと横たわっているしかできない。
内部を圧迫していたものが抜け出ていくと、竜次郎の放ったものがとろりと狭間を滴り落ちるのがわかった。
「ぁ……竜次郎のシャツも……汚れちゃった……ね……」
「シャツくらい新しいのを買やいいだろ」
もったいない、と思うけれど、汚れ以外にも、湊が掴んだせいでぐしゃぐしゃになってしまっている。このシャツが現場復帰できるかどうかはちょっと怪しい。
湊はそれに慌てるほどの元気もないが、竜次郎はもうすっかり復活したようだ。
「もっかい、明るいとこでやりてえな」
「いいけど、その前にちょっと水分とりたい……」
「んじゃ、冷蔵庫寄ってから二階に上がるか」
機嫌のよさそうな竜次郎が、台所でってのも悪くねえななどと呟きながら、湊を抱き上げる。
運ばれながら、ふと、月見の途中だったことを思い出した。
「お月見……、お酒とか用意すればよかったのかな」
盃に月を浮かべたりするのではないだろうか。とても風流な感じだ。
酒でもあれば竜次郎も退屈せずに済んだのではと思ったのだが、腕の中から見上げた竜次郎は、眉を寄せ、苦悶の表情になってしまった。
「………月見のことは忘れろ」
どうやら(恐らく自分のせいで)竜次郎にとっての十五夜は、十三日の金曜日的な凶日となってしまったようである。
申し訳なく思いながらも、リアリストな竜次郎がそういうものを恐れているのが少しだけ可笑しくて、こっそり笑ってしまった湊だった。
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