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極道とウサギの甘いその後5-6

 絶句していると、続けて募集内容らしきSNSの投稿画面のスクリーンショットが送られてくる。  それには、こう記されていた。  単発ホワイト案件・簡単なお掃除のお仕事  時給 五万円~  都内の清掃で社会の役に立てるやりがいのある仕事です♪  お客様と世間話をするだけの簡単なお仕事で法外な給料をもらっている湊が言うのもなんだが、時給だけでも、通常の清掃業務の相場と違うのがわかる、完全にアウトな案件である。  一体何を清掃するのかも書かれていないのが恐ろしい。  こんな胡散臭い募集で人が集まるのか、いや集まるからこそ出しているのだろう。  白木組がバックにいるということは、再び人を集めて昨晩のような襲撃をかけようとしているに違いない。  そんな中に潜入するなんて、危険すぎる。  湊は慌てて八重崎に電話をかけた。 『こんばんは……私八重子……』 「あっ、八重崎さん、闇バイトに応募なんて」 『湊も……一緒に行く……?』 「えっ、いや、俺は……。ちなみに、他に同行される方などはいないんですか?」 『湊が行かなければ一人で行く……』  流石に、八重崎一人で行かせるわけにはいかなくて、考えてしまう。 「危険ですよ。ええとその、三浦さんも心配されるのでは」  危険もあるが、八重崎一人で行かせたら、何らかの高度でサイバーな技術を駆使して、余人には想像もつかない大変な事態を引き起こしてしまうかもしれない。  とんでもなく大変な後処理をすることになったりして、また、三浦の眉間の皺が増えてしまう。  心配する湊に、しかし八重崎は力強く答えた。 『大丈夫だ、問題ない……』  根拠も示されておらず、どういうわけか不安が増幅する言葉である。 『ダークサイドの粋……『SILENT BLUE』でしか働いたことがない湊も……市井の人々のまっとうな労働を経験することで……社会経験を積むべし……』 「闇バイトは同じダークサイドビジネスですよね!?」  説得をするつもりが、逆に湊の方が社会人経験のなさを突っ込まれるという惨事となった。  埒が明かない。  これはもう、八重崎の中では決定事項であり、思いとどまらせるのは不可能ということだろう。  困っていると、どすどすと足音が聞こえてきて、すぱんと襖が開いた。  どうやら、金と日守との話し合いを終えた竜次郎が戻ってきたようだ。 「と、とにかく、明日連絡しますから!それまで危険なことはしないでくださいね!」  話し合いの内容がどうなったのかも気になり、ひとまず、湊は少々強引に通話を打ち切った。 「誰からの電話だ?……男か?」  不機嫌そうな竜次郎のいつもの御下問である。 「八重崎さん……」  湊の方もいつもの返事となった。  案の定、竜次郎は頭痛を堪えるような表情で唸る。 「またあいつか」  勝手なことをするなと言われていることもあり、素直に八重崎との電話の内容を説明すると、竜次郎は「はあ!?」と目を剥いた。  何考えてんだ、と頭を抱えているが、八重崎が何を考えているのかわかる人は恐らく世界中探しても一人もいない。 「おいまさか、お前も行こうってんじゃねえだろうな」 「八重崎さんが思いとどまりそうにもなくて心配だから、ついていこうかなって……」 「あいつにはいろいろ護衛がいそうだから平気だろ」  確かにその通りで、オーナーや三浦が彼を安易に危険な目に遭わせるとは思えないし、湊が同行したところで護衛を果たせるわけではないのは自分でもわかっている。  だが、竜次郎に説明しているうちに、相手の手の内を確認するのにそれほど悪くない手なのではないかと思えてきた。  表向きは白木組と無関係な風に偽装されていることで、良くも悪くも核心からは程よく距離がありそうだから、危険も少ないだろう。 「相手の手口とか、松平組的にも何か得られるものがあるかも?」 「それは、お前がやんなくてもいいんだよ」 「じゃあ、竜次郎もこっそりついてくるってのはどうかな」 「お前……自分の組にカチコミかけようって集団を、俺がこっそり見守ってんのは何かもう、絵面がおかしすぎるだろ」 「他の組への襲撃なら危険なことになる可能性もあるかもだけど、対象が自分の組なら、獅子身中の虫作戦ってことでありな気がする」 「お前、最近あのちっこいのにかなり毒されてねえか……」  そうかもしれない。  しかし、組同士のやりとりだと極道としてのタブーなども多く、打てるはずの手が打てないということが多々ある。  湊は関係者であっても極道ではないため、禁じ手が使えて有利。  やや反則気味だが、そう思うのだ。 「先にどこが襲撃されるかわかれば、争いが回避できるかもしれないよね」 「お前な……」  否定しつつも一理あると思ったのか、竜次郎は腕組みして唸った。

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