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極道とウサギの甘いその後5-17

 松平家に戻ってくると、竜次郎は屋敷ではなく二人で住んでいる家の方に向かった。 「竜次郎は、この後また出かけるの?」 「いや、今日はもう店じまいだ」  竜次郎が一緒にいてくれるのは嬉しいが、日守も金も不在な今、それでいいのだろうか。 「屋敷か事務所にいなくて大丈夫?」 「直近で白木の奴らがこれ以上何かしてくるってことはねえだろ。まあ、連絡があれば行かなきゃなんねえかもしれねえが、俺にはやるべきことがあるからな」 「やるべきこと?」  脱いだ靴を揃えていた湊が思わせぶりな言葉に振り返ると、先に家に上がった竜次郎は何やら不穏な笑みを浮かべていた。 「お前をお仕置きしてやんねえとな。危ねえから屋敷にいろっつったのに、のこのこくっついてきやがって」 「えぇ……日守さんからは絶賛されたのに……」  自分も少しは役に立てたのでは、と八重崎のくれた『お守り』の入るボディバッグに手を当てる。  無双状態の日守を思い出したのか、竜次郎はうんざりとため息をついた。 「お前、その兵器はマジで箪笥の奥にしまっとけ」  緊急時以外使用しないことに関しては湊も異存はない。  相手が気絶するほどの電撃を警棒の効果範囲で振るえるのは、過剰防衛に過ぎる。  一般的な成人女性よりも小柄で、耐久力が高いとも思えない八重崎には、あれくらいの護身用武器が必要なのかもしれないけれど、湊はぎりぎり一般的な成人男性の枠に引っ掛かる程度の力はあるし、逃げ足にも少しは自信があるので、できる限り使用は控えた方がいいだろう。 「お仕置きされるのはいいけど、先にお風呂に入りたいな」 「……仕方がねえな」  お前は仕置きの意味をわかってるのかとぶつぶつ言いながらも、湊に甘い竜次郎は願いを叶えてくれた。  脱衣所に入ると、自分で脱ぐ前に服を奪われ、前から後ろから全身をくまなくチェックされる。 「……怪我はねえな」  湊は、そんな風に気遣う竜次郎の方が傷だらけなことに気付いた。 「竜次郎、いっぱい怪我してる」  ワイシャツを脱いで露わになった上半身には無数の擦り傷や痣があり、拳は赤く腫れている。この分では、足も同じような状態だろう。 「あの人数と喧嘩したんだ。こんなもんだろ」 「……大丈夫?」 「お前とエロいことしたら治る」  全く堪えた様子のない竜次郎に、思わず笑ってしまった。 「初めて聞く民間療法かも」 「お医者様より草津の湯より効果覿面だから覚えとけ」  白木組とのことでバタついていたせいか流石に風呂は沸いてなかったので、ささっとシャワーで丸洗いされて寝室に連行された。  竜次郎は「ちょっとゴロゴロして待ってろ」と言うと、押し入れを開けて何かを物色し始める。  湊は素直に布団に寝転がり、その背中を眺めた。 「……何だこれ。こんだけ色々あるのになんで微妙にマニアックなやつしかねえんだよ……」 「竜次郎、何探してるの?」  八重崎が試供品をくれるので、押し入れの中には多種多様なアダルトグッズが入っている(『お守り』の本物もある)。  竜次郎はおもちゃにはあまり興味がないらしく、湊が「レビューを頼まれたので使ってみて欲しい」などと言わない限りそれらが活用されることはないのだが、今日はお仕置きなので、何か使うつもりなのだろうか。  湊にはどんな使い方をするのかもわからない物もあるから、少し怖いような、でもちょっと期待してしまうような。 「まあ、これでいいか」  お眼鏡にかなうものが見つかったらしい。  竜次郎は、バリバリと若干乱暴にパッケージを開けながら振り返る。 「それは?」 「ただのローターだから安心しろ」  ローターというと、リモコンから伸びたコードの先の楕円部分がブルブルする、というイメージしかなかったが、竜次郎が持ってきたそれは、恐らく震えそうな部分とリモコンがコードで繋がっていない。遠隔タイプのようだ。  竜次郎は、うつぶせに寝そべっていた湊をころりとひっくり返すと、その中心に手を伸ばした。 「あっ……」  ローションを付けた手で軽く扱かれただけで、そこは形を変える。  先端の裏側を絶妙な力加減で弄られると、気持ちよさに声が出て腰が浮いた。 「お前はここ好きだろ」 「う、ん……っ」  素直に頷くと、竜次郎はその場所にローターを押し当て、湊自身に握らせる。 「その一番気持ちいいとこに当てて握っとけ」 「え?ふぁ、あっ!あっ!」  状況を呑み込めずにいると、竜次郎がスイッチを入れたらしい。  突然の強い刺激に、全身がびくんと震えた。 「……や、こんな、んんっ……」  ローターとは単調な振動を与えるだけのものかと思っていたが、これは筒状になった手の中をずり上がるような動きで、ぐりぐりと感じる場所を刺激してくる。 「ひぅ、こ、れ……っ、ずんずんって、~~っ」 「なかなか楽しそうじゃねえか。俺がいいって言うまで、ちゃんとそこに当てとけよ」 「うぅ、ん、落としそ……だから、もう少し、弱くして……っふぁあ!?」  ぐんっと強くなった刺激に、大きな声が出てしまった。 「最初のが最弱みたいだな」 「そん、な……っ、あっあっ」 「イくのはいいが、手は離すなよ」 「む、むずかしいよ……っ」  今にも取り落としそうだというのに、無茶振りだ。  幸いなのかなんなのか、ローターの刺激は強いものの、人工的な振動というのもあって、すぐには絶頂に至りそうもない。  これならなんとか、しばらくは落とさずにいられそうだ。  だが、すぐにそんな余裕はまやかしだと思い知らされることになった。  竜次郎は悶える湊の腰を膝の上に引き寄せると、後ろを触り始める。  途端に、無機物から強制的に与えられる刺激までもが、竜次郎の施す甘い快感にすり替わった。 「ひぁ、あ……っ、ゆび、だめ……っ」 「なんだよ、オモチャだけの方がいいのか?」  竜次郎は、わかっていてやっているのだろうか。  揶揄う声音に、湊は息を乱しながら首を振った。 「ちが、きもち……っ、あっ、い、っちゃ……から、」 「お前がエロい声あげてイくとこ、ちゃんと見ててやるから、イっちまえよ」  視線にすら感じて、じわりと理性が溶けていく。 「ぁ!っひぅ、や……っ、~~~~っ」  びくんと腰を突き上げ、湊は欲望を吐き出した。

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