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忍ぶれど 第3話
「えーっ! お前、行けねぇのー?」
不満げな声を張りあげる弘人に、こいつ、人の話聞いてんのか、と苛立ち混じりに息を吐く。
「だからー、俺じゃなくても、相沢がいるだろ」
「…………」
しばらく無言で後ろを付いて来ていた弘人は、「じゃあいいや。俺もやめる」といきなり宣言した。
「ああ?」
立ち止まって弘人を振り返ると、あいつも驚いた顔で足を止める。
「何言ってんだ? お前」
「え? だってお前行けないんだろ? 1人で行っても仕方ねぇし」
「じゃなくて、みんなを誘ったのお前だろ。相沢だっていんのに」
「でも、お前行けないんだろ?」
「…………」
話が噛み合わない。きょとん、と不思議そうに見上げてくる弘人に小さく舌打ちして、俺は再び歩き出した。
「悪かったよ、予定確認しなくてさ」
「もう、いいって」
ガリガリと頭を掻く。
これ以上、この話題に触れたくねぇのに。
「でもホント、キレイなんだぜ。猪名川の花火。見に行った事ある?」
ねぇよ!
心の中で強く突っ込む。
――駄目だ。声を出したら、絶対怒鳴っちまう。
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