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ジェラシーはたぶんスパイス

「司はさ、お正月っていつもどうしてたの?」  結局、日付が変わるのとほぼ同時くらいのタイミングで押し倒されて、やけに時間をかけて繋がって。結局、ギリギリ元旦とは言えない時間に目が覚めて、あけましておめでとう、と目を擦りながら言い合うなんとも締まらない新年だ。  お節まではさすがに用意も出来なかったし、お互い実家に帰れば飽きるほど食べさせられるからと敢えて普段通りに食パンの朝ごはんをモソモソ食べていたら、先に食べ終えた颯真が思い出したみたいに聞いてくる。 「ん~? ……お節はまぁ食べるでしょ?」 「うん」 「……それくらいかなぁ……」 「えぇっ!? 初詣とかは!?」 「章悟がいた頃は一緒に行ったりしたけどねぇ……行かなくなっちゃった」  なるべく暗くならないように笑ったつもりなのに、しょんぼり顔で唇を尖らせた颯真が、じゃあさ、と呟く。 「オレとも一緒に行こうよ、初詣」 「……そうだね、行こっか」 「そんでなんか、どっかブラブラしよっか。出店とかもあるだろうしさ」 「ん、ほうしよっか」  むぐむぐと最後の一欠けを口にねじ込んでもごもご返事をしたら、ふ、と何だか困った顔して颯真が笑う。 「ごめんごめん、ゆっくり食べて。喉詰めちゃうよ」 「ん」  トントンと優しく背中を撫でてくれた颯真が、お茶を注いで出してくれる。 「……オレが毎年行ってる神社がね、おしるこ出してくれてるんだよねぇ」 「ふふっ……相変わらず甘いの好きだね」 「美味しいでしょ、甘いの」  ま、司が一番美味しいけどね、とイタズラな目を輝かせた颯真が笑う。 「……ちょっと。初詣行くんでしょ?」 「分かってるって。おしるこも食べなきゃだしね。今朝は食パンにしちゃったしさ。お雑煮がわりにおしるこでお餅食べとこ」  たはは、と誤魔化す顔で笑って、ごちそうさま、と手を合わせた颯真に倣って、ごちそうさまと手を合わせた。  身支度を済ませて二人で家を出る。  人通りの少ない道を選んで歩く颯真が大丈夫だからと言うのに負けて、手は繋いだままだ。  冷たい風から守ってくれるみたいに、颯真はオレの手を包むように手を繋いでくれている。 「颯真、寒くない?」 「大丈夫。ポケットがもっと大きかったらいいんだけどね。このコートのポケットは小さいから」 「ポケット?」 「手、繋いだままポケットに突っ込めたら二人とも暖かいでしょ」 「男同士じゃ無理でしょ」  女の子の手が小さいから出来ることじゃないの、とあまりにも恋人っぽい提案に照れたら良いのか、過去にしてもらったかもしれない元カノ達に嫉妬すれば良いのか、分からないまま呟く。 「司もオレもそこまで手が大きい訳じゃないし、いけると思うんだけどなぁ」 「ふぅん……」 「あ、あれだよ? したことないからね!?」 「へ?」 「女の子相手にはしたことないからね!?」 「えっと……その……別にしててもいいけど……」 「えぇ~……嫉妬してくんないの?」 「何それ。時々ホント、意味わかんないとこで駄々っ子になるよね、颯真は」  やれやれと笑って、まだ拗ねているらしい表情をしている颯真の手を、そっと引いた。 「ん? 何?」 「オレのポケット、空いてるよ」 「へ?」  くい、と手を引いて2つの手をポケットに入れる。ほんの少し窮屈だけれど、悪くない。 「…………なんか、照れるね、これ」 「……颯真がしたいって言ったんじゃん」 「……なんか、するのとされるのじゃ違うのかな」  戸惑ったような声を出した颯真が、ポケットの中でオレの手のひらをこしょこしょ擽ってくる。 「ちょっ、何?」 「なんとなく」  司が格好いいから、と不貞腐れたみたいに呟いた颯真が、いじけたままの唇を頬に押し当ててきた。 「ちょっ!?」 「司、顔真っ赤」 「いきなりっ……っ、するから!」  キスとは言えずに濁した言葉にニンマリ笑った颯真が、トンと体を寄せて耳元で囁いてくる。 「キスしちゃダメだった?」 「っ、そういうのは! 帰ってから!」  熱々になった顔を隠すことも出来ずにキャンキャン喚いたら、にひ、と颯真が笑った。 「じゃ、帰ったらね」 「~~っ」  ポケットの中で絡んだ颯真の指が、オレの指をするりと撫でる。  意地になって颯真の指をぎゅっと握って、ポケットから抜け出そうとした颯真を引き留めた。 「司?」 「離してやんないから、覚悟しなよ」 「…………──いいね、楽しみ」  ニヤリと笑った颯真の目が、獣の色に変わる。 「帰ってからだからね!」  念押しして手を離したら肩を抱かれた。 「──帰ったら、ね」

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