10 / 10

恋人になろう 2

「明石、君?」  真田の呟きに、豊島は男を見る。すると、 「ナイフなんて危ないでしょうがっ!」  興奮気味に怒鳴りつけ、そして、そのまま地面にへたり込んだ。 「潮君、大丈夫?」 「大丈夫なわけないでしょっ。こういう時に颯爽と現れて悪者を退治するのが王子様でしょうが」  と、後から現れた、やたらきらきらとした男に怒鳴りつけた。  何のことだろうか、それは。疑問に思いながら真田を見れば、おもいきり吹いた。 「ぶはっ、その通りだよなぁ、明石君」  ゲラゲラと笑い、膝を叩く。豊島はなんのことだかわからないのでポカンとしたままだ。 「いや、無理だからね。ナイフを持ってる相手に立ち向かうのは」  笑いすぎて涙を浮かべている真田に、 「真田、そろそろ紹介してよ」  といえば、そうだったと紹介をしはじめる。 「このイケメンは俺の友達の樋山。で、勇敢な彼はこいつの恋人の明石君」  真田が言っていたのは彼らだったのか。 「で、この子が俺の恋人の 豊島ね」  話をしている途中、秋庭はいつの間にか姿を消していた。  何か言い争うをしていると急いで待ち合わせの場所へと向かい、ナイフを見た瞬間にブチ切れたそうだ。  自分でもこんな行動にでるとは思わなかったそうで、ようやく落ち着いた潮がそう話した。 「明石君のおかげで助かったよ。ありがとう」  と手を握りしめると、潮が珍しく照れている。 「ちょっと潮君、何、その反応」  樋山が嫉妬している。 「え、綺麗だし」 「く、あははは、明石君もやっぱり美人には弱いのね」  と再び楽しそうに笑っている。  高校生の時もだ。楽しいことがあると今見たく笑っていた。かっこいいだけでなく周りを明るくする人だなと思っていた。 「ふふっ」  昔と変わらないなと思い出していたら、三人がこちらを見ていた。 「え、どうしたの?」  いきなり笑ったからだろうか。 「うん、潮君が惚けるのも無理ないか」 「だろ、成は綺麗だからな」 「そうですね」  と言われて、顔が熱くなる。 「やめてよぉ」  恥ずかしくて頬に手を当てると、真田の腕が腰へと回る。 「さ、飯食いに行くぞ」 「うん」  樋山と潮が前を歩き、真田と豊島はゆっくりと後に続く。 「ねぇ、真田」  彼を見上げて手招きをすると、 「なんだ?」  前にかがみこみ顔を近づける。その頬に手を添えると、真田の唇に軽く口づけた。 「成っ」  いきなりのことに驚き、声が裏返る。 「大好きだよ、真田。俺の恋人になってください」  こんなに想っているのに、まだ伝えていなかった言葉。 「大切なことを忘れていたな、俺たち」 「うん」  真田の腕が豊島の身体を抱きしめる。 「あぁ、喜んで」  その答えに笑顔を向けると、樋山と潮がおめでとうと言ってくれる。 「ありがとう」  そして、真田からの口づけに、樋山がヒューと口笛を吹く。 「いちゃつくのは後にしてください」  外ですよと潮の声に、二人は顔を合わせて笑った。 <了>

ともだちにシェアしよう!