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…俺のところまで堕ちてきて欲しい。
さて、マリー では夫やパートナーとなるものはいないが、
皆はそういった関係にあるものと、どれくらい話し、衝突したりする?
《んなもん、呆れるくらいあるぞ。》
《話が合わないときは、毎日衝突することもあるわね。》
《全く無くなると逆に関係が壊れていたりするものだ。》
《物凄く気が合って、喧嘩もしない人も偶にはあるけれどね。》
うん、皆それぞれにいっぱいあるよね。
私はこれまで語ってきた話の頃は、あいつと徹底的に話し合うことがなかった。
《いや、リリィは口汚く罵っていたり、殴っていただろう?》
《生意気に反抗しまくっていなかった?》
《一応、シュテンは皇子でリリィは臣下の子だよな?そうとは思えない態度だぞ…》
《αは番のΩを溺愛するのが当たり前なのよ!》
《まぁ、ものによるけれどわかりやすく色々と許しているみたいよね。》
文句とか滅茶苦茶言ってたって?
それは言っていたけれど、あいつはやっぱり『鬼族の皇子』で、
自分の所属する階級よりも数段上の存在だから、どうしてもこちらが強く言えないものだった。
階級社会っていうのはそんなもんなんだよ。
まぁ…こちらではわからないよね。
《そんなものなのか?》
《いまいち理解できんな。》
でだ、これから話すのはあいつが私に出会った頃から勝手にしてくれた、
本当に、今でも、腹に据えかねている物凄い大問題行動と、
鬼族が受けている神からの祝福 などについてだね。
《呪い?》
何度も言ってきたが、あちらの世界の神は反則的 なものが大嫌いで、
そういった者たちに罰則 という名で、呪いを与えてるんだ。
それらを滅ぼして遊ぶためにね。
《え?いや、神は庇護したりするものだろう。》
《信仰するものがいなくなれば困るだろう?》
《神、ってそんなに近くわかりやすい存在なの?》
これも良い質問だね。
どう説明したら良いのか…鬼族 の祖であったものも、他種族の祖であるものも『神』とされる。
《《《《《はぁ?!》》》》》
《いや、本当に何だよそれ?》
《いきなり話が凄い事になっているんだけれど、どういうことかしら?》
皆が良くわからないって顔をしているな。
こちらでは、私の父母の信仰するカトリックなどをはじめ、
様々な宗教で神が存在するが、あれとはまた違う。
《まだまだよくわからんな?》
ほら、色々な創世神話で始まりのヒトは神とされているだろう?
あれと同じだな。
《なるほどなぁ…》
《うーん。》
《やはりファンタジーね。》
《それじゃあ人を滅ぼすのなら、あちらの神は人の敵?》
そうだな…昔を知らないから言えるが、私たちが受けたものは
正しく、邪神や悪神の所業としか言えないものばかりだったよ。
ところでグラス、空いたんだけれど。
出来ればボトルごとくれない?
《構わないが飲みすぎて暴れないでくれよ。》
これから話すことは長くなるうえに、飲まなきゃやってられない。
《…一体、何があったんだ?》
◇◇◇
さっきまで具合が悪く横になっていた為、僕らが今いるのは閨の中の寝具などの前だ。
場所が場所だから、いつもはこのまま抱き合って、お互いを貪る行為に耽る事になる。
だが、今日はそれではいけない。
さて、何から話すべきか?
僕たちのはじまりはあまり良いものではない。
こいつの方は知らないが、僕にとっては災難としか言いようがなかった。
「百合 「朱点…」
被ってしまった。
(いつも微妙に噛み合わない。でも、珍しくこいつから話そうとしているし、そちらを促そう。)
「どうぞ、お前から話して。」
「わかった。俺は説明するのも下手だ。
誰かと上手く付き合ったこともない。
母上は母親だからこそ理解してくれている。
茨木 や四童子たちも、臣下として長く仕えているからの対応だ。
だから、理解出来ない説明なら済まない。」
僕に対してこう前置きをするこいつ。
(まぁ…確かに挙げた者以外は、みんながお前を畏怖しているもんな。)
どんなものも魅了してやまない美しい姿と、両陛下を凌駕するような強大な力。
なのに、いつ自分を殺したり、喰われるかわからない危険さ、そしていつまでも幼い不安定過ぎる内面。
周りはこいつのことを化け物として見ている。
(僕にとっては滅茶苦茶甘やかす、優しくてかわいいやつなんだけどな。)
「この間の遣り取りから、考えてみた。
母上もだが……親父、父上からも言われた。」
(珍しいな、お義父様のことを母親が取られたことから蛇蝎のごとく嫌って、普段は『糞親父』とかまで言っているのに。)
「『百合はお前のしようとしていることを理解し、了承したのか?既に手遅れだが、ちゃんと話し合っているのか?』と。」
(あの方がそんな事を仰られるなんて相当だよな?
普段はお義母様以外は塵芥の扱いなのに。
お前の兄姉だったものたちの皆殺しに関しても、『そうか』で済ませたらしい。
この間初めてお会いした時も酷かったし、お前への対応もとんでもないし…そんな事を仰られるんだな。)
「俺はお前に話していないことが…まだ話せないことが沢山ある。俺自身が受け入れ難く、話しづらいもの。
鬼族の【禁】にあたるものなどだ。」
「なんだよそれ?」
「皇宮 は親父の結界の中ではある。奴らを前に始末し尽くした。だが、まだ末端がいないとも限らない。
少し…【域】を作る。」
(えらく厳重にするが、空間を切り離してまで話すこととはなんだろう?
それに既に手遅れという、こいつが僕にしたことはなんだろう?)
困惑する僕をそのままにして、こいつはかるく印を結び、結界を創り出し、僕らの居る部屋を外から隔離する。
(お前、それもまたデタラメな力だな。
お義父様とかでももうちょっと時間も手間もかかるらしいぞ?)
「で、なに?今日はちゃんと最後まで、納得するまで話し合おう。僕だってお前にしっかりと言いたいことを言うし、お前も僕に話して欲しい。」
しっかりとこいつと目を合わせ僕は伝えた。
なんとなく気まずそうな顔をしているこいつ。
こいつはいつもの無邪気な子供のような顔ではなく、
いつか…兄弟を殺し、喰らっていたあの時のような表情になった。
昏い、苦しくて仕方なさそうな眼。
時折見せるこの表情が僕は嫌いだった。
重くなった口を開く。
「お前は【亜神】というものを理解しているか?」
真剣な眼差しを僕に向けて話すこいつ。
(ハァ?いきなり話の規模が大きくなったな。)
「俺たち鬼族の祖である、親父や母上は鬼族の守護者、【亜神】とされるが本当は違う。」
「イヤイヤイヤイヤイヤ!両陛下は亜神であられるだろう?
不老不死で鬼族 の興りから生きておられ、僕らを庇護するお力もお持ちだろう?
だからお前の言うことは、それはおかしいだろ!」
何を言っているかはわからないが、それは本当におかしい。
眷属などを創ったり、魂さえも消滅させる【権能】などは【亜神】であるお二方から下賜され、僕らが使えるようになったものだ。
だからその大きな力と永遠の命さえ持っている、あの方たちが違うとかはおかしい。
◇◇◇
亜神とは何かって顔をしてるね。
そうだね、これが一番説明しづらいが、その種の守護者として在るもの。
種の代表であり、その知識と力の全てを識 るもののこと。
絶対にあちらの種族の興りには、必ず存在するものとだけ言っておくよ。
ヒトでないのは確かだよ。
寿命も無いし、本当の意味での死も無い。
持つ力も半端なく大きい。
それ故に制限も多く、『神』から睨まれ攻撃される。
みんなが良くわからないって顔になっているのもわかるよ。
でも、そういうものなんだ。
なぜそう在るのか私にも良くわからない。
あちらのルールみたいなものだね。
…例外的にヒトから亜神になる事もある。
その事を【至】るとか【昇神】ともいう。
◇◇◇
「俺の親たちは確かに亜神であるが、鬼族のでは無い。
鬼族の元になった種の、親父は男のαたちの。母上は男のΩたちのそれらの亜神ではある。」
混乱する僕に尚も続ける。
(この流れでなんとなく理解し、これからこいつの話そうとすることも想像つくが…)
「鬼族には本当の鬼は一人しかいない。」
(やっぱりそうか…)
こいつの持つ力の大きさなどからどこかで気づいていた自分がいた。
「それが俺だ。」
どうやらこれが鬼族の【禁】であるらしい。
「ということは、お前が鬼族の亜神様?」
「そうなる。」
かなり衝撃的な事をサラッと話し、認めるこいつ。
その表情は真剣でいつもの様に適当にごまかしたり、茶化して済ませるような雰囲気ではない。
(うーん…そうなるとこいつは不老不死で、言われている強大な力も納得だ。
そうなると僕の寿命は…)
自身に起こった事に衝撃を受ける。
(うわぁ…マジかぁ?!
コイツ!ほんっとに先に言えよな!!)
確認のためにこいつに尋ねる。
「お前の番になり、そのうえ一方からでしか結ばれていないけど、【血の伴侶】である僕はどうなるわけ?」
「俺の方に寄せてになるな。」
ひと呼吸おいて、
「だが、俺はお前を俺と同じにした。」
(うん?どういうことだろうか?
ちょっと、嫌な予感がしてきた。)
「もう少し分かり易く言え。」
睨みつけ、少し低い声で強く言う。
「鬼族は二つの種が結ばれて生まれた。
そのことから二つの種の力を持つものが代表、亜神となる。
つまりαでありΩでもあるものがだな。
まぁ、実際に俺がそうだな。」
(そうなんだよな…こいつは時々、Ωとしての欲求が耐え難いと言ってたもんな。
自分がそうなったからわかるけど、そのへんは本当に可哀想なんだよなぁ…)
「だが、俺はそれが嫌だった。
生まれた時から味わってきた、孤独や疎外感、それに耐え難い餓えや欲求。
これらを分け合える…母と父の様な伴侶がずっと欲しかった。
亜神は伴侶なしでは簡単に狂う。
それに、ヒトのままでは永い時を生きるのは苦痛だ。」
なんだかとてつもなく嫌な予感がする…
「だから【俺はお前を【至】らせることにした】。」
予想以上にとんでもないことを口にした。
(はぁ?!)
「おい…お前、それって物凄い禁忌の筈だし、どうやったらそうなるんだよ?
姉様が『おまえ達はよく話しをしなさい』と言っていたけれどそれは、この事なのか?!」
話のあまりの重さに、色々と良くない汗が出てきて、目眩がする。
(おい!お前!!妊夫になんて事を伝えてるんだよ!!!)
(いや、後になっても困るから皇様が話せって言ってるんだよな……)
(本当に何を勝手に色々してくれちゃっているんだよ!!)
◇◇◇
みんな…絶句しているね。
当たり前だよね。
勝手にヒトをやめさせられて、神様とか化け物になっていたら、
それは怒るよね?
《どうしたらそうなれる?》
《シュテンは本当にどうしてそう問題ばかり起こすんだ?》
これもね、この話をする前に『もう既にしてくれていた』って話したよね。
これからする話の中で出てくるよ。
まぁ…大体、想像がついているかもしれないけれどね。
《あ!あれか?》
《シュテンは本当にリリィに対して無茶苦茶しすぎだろう…》
《なんでそこまでしてリリィを縛りたいんだ?》
本当にあいつの愛は重すぎだし、勝手すぎる!
百合 を欲しい理由?
それに関しては嬉しい事を言ってくれたけれどね。
………ボトル空いたから、次。
《マリー少しペースが速いぞ!》
ん?まだ酔ってないよ?私が強いのは知っているだろう?
前世 の私は弱かったからこれも良いことだな。
◇◇◇
「どうして手遅れなのか聞いていいか?」
今までこいつがしてきたことで何となく想像がつくことだけれど、とりあえず説明が欲しい。
「【昇神】の条件は、両性であること。
これはお前が男のΩで条件は満たしている。
そこからは、ある条件のものの血肉や魂を喰らう、既に亜神となっているものと交わるなどのことだな。
他にも色々とあるが、お前に出来るのはこれだった。」
(やっぱりか!どおりでお前が毎日毎日、拒否しても無理矢理にでもして、滅茶苦茶食べさせるからおかしいと思ったよ!!)
(それにお前が僕を堕としたのは体からだったしな!!!)
今もいつものような曇りのない純粋な瞳で僕を見るが、やっていることは鬼畜極まりないうえに…物凄く自分勝手だ。
「はぁ…もう、なんというか、怒りよりも執念というか…
そういったものに呆れが出る。」
今、僕の前に立つ僕の夫、朱点。
鬼族の始祖たちの最後の子にして、本当の鬼とされるもの。
どんな相手も魅了してやまないその姿は………
皇 の直系の証の金色 の二本の角に、
(…僕にも番の証の一本の角を与えた。)
艷やかで美しい、明るい鮮やかな朱い髪を腰まで伸ばしていて、
(…僕が毎日櫛で梳かして整えている。)
左は金色、右は銀色の色違いの目。
(…僕の好きな色だ。)
とても大柄だけれど、しなやかでこいつに誂えたかのようにしっくりくる体つき。
(…その腕に抱かれ、愛を囁かれるのが堪らなく好きだ。)
男にも女にもどちらにも見える整い過ぎているくらいの顔。
(…物凄く僕好みだ。)
そして僕の体中にも咲いている、こいつの心臓にある奇跡としか言いようのない様な美しい【青薔薇】。
(その【華】の薫りにもまいっている。)
吃驚するぐらい純粋で真っ直ぐなところも大好きだ。
(…もう少し我慢を覚えて欲しいし、行動する前に話して欲しいけれど。)
とんでもなく危険なやつなのに、その美しさや持つ力に皆が強烈に惹きつけられる。
皆が畏怖する存在であるが、僕にだけは何故かとても甘く、優しい。
言葉が足りない、 問題行動を起こす、突飛すぎる考えについていけない。
いきなり閨に連れ込み、僕の純潔を奪い、勝手に番にしたうえに、
一方的に【血の伴侶】にしかけ、孕ませようとし、あんな惨殺現場を見せられ、とんでもない給餌行動をし、それらを無理矢理食わせる。
毎日毎日、物凄く執着してこちらが参るくらいまで、抱き潰そうとする。
(…今日も肉とか魂 があるしな。)
本当になんで僕なんだろう?
はじめての発情期で、僕がこいつを誘惑したのか?
それとも周りから誉めそやされるこの容姿とかか?
『運命』だからこその体の相性の良さか?
それならそれに飽きてしまえば、もう…要らなくなるんじゃないのか?
捨てられた【眷属】を何度か見たことがある。
彼らの最後は悲惨だった。
【華】は枯れ、元の種の寿命などを迎えていれば、一気に老い、そして死ぬ。
僕は鬼だからそういったことはないが…それでも怖ろしい。
捨てられたΩだって、気が触れたものや衰弱して死ぬものばかりだ。
いくら運命の番で既に番っていても、そういった不安はまだ拭えない。
「お前さ、僕のどこが好きなの?
何を気に入ってあんな風に誘拐して、手籠めにして、孕ませて、
今みたいな状態にしてまで、僕がどうして欲しかったの?」
ずっと聞きたかったけれど怖くて聞けなかったことを尋ねる。
「僕が…后陛下の言う『お前のお前だけのお姫様』だったからか?」
それだけはでは納得できない。
『運命』だとか『俺のお姫様』とかだけで惹かれてなんて、
そんなあやふやなものではこれからずっと一緒にいることなんて無理だ。
「母上の言った事なども勿論あるが、お前にもある様に俺にも魂を視る眼がある。
お前とはじめて会った時に驚いた。
お前を育てた緋 と同じように此方の魂なのに、お前は何故か彼方 の青と、こちらの…俺の持つものと同じ赤の混じった貴い色をしていた。
その色の近寄り難いまでの貴さに惹かれた。」
(一息に色々と話してくれているが、こいつがこんなに喋るなんて珍しい。
それに魂に一目惚れとか!鬼族の一番の殺し文句をこいつが言うなんて…マジか?!)
(コイツ!滅茶苦茶ロマンチスト?ってやつじゃないか!!)
「もう、既にした事について謝ることはしない。
そうまでしてもお前を側におきたかった。
…【俺のところまで堕ちてきて欲しい】。」
「【お願いだ【紫 】】。」
感情が昂ぶっているのか、話している言葉が呪いとなってきている。
僕に強く認めさせるような、そんな力の籠もった愛を告白した。
(はぁ…なんで僕の本名をそこで呼ぶかなぁ。)
「【至】るとか、【昇神】とか言われているから昇るではないのか?」
「こんなもの生まれた時からそうで在る俺にとっては、話にある様な地獄だ。
だから【俺と一緒にそこに堕ちて欲しい】。」
(なんか物凄い口説き文句だけれど、『お前にしか勃たない。』よりはよっぽどまともだから、
そちらを言ってくれたほうがキュンと…しないな。)
勝手にヒトをやめさせる。
これもこいつの問題行動に追加しました。
「なってしまったものはしょうがない。
僕が許すとか、そういうものはこれからのお前の態度で示せ。
この子が産まれたら返すって話していた、【血の伴侶】の契約も取り敢えず僕が納得するまで保留だ。」
(……………………。)
納得できない訳ではない。
勝手に僕に何も話さずにしたことに腹が立つ。
もっと早くにその事を腹を割って話してくれれば、受け入れたかもしれない。
(いや、僕もこいつの愛の言葉を散々茶化して、適当に対応していたから、仕方ないのかもしれないが…)
「僕に毎日、愛を与えて可愛がれ!
僕の話をちゃんと聞け!
なにかする前に相談しろ!
絶対に、勝手な考えで行動するな!
…ずっと仲良く一緒に居たいなら守って欲しい。」
少しの間、僕とこいつの間に沈黙が流れる。
「わかった。」
そう言って、こいつは強く頷いた。
そんなにも狂いそうな愛を僕に捧げられたら、なんにも言えない。
惚れた弱みというものがあるがきっとそうだろう。
(認めよう、僕はこいつに『恋』をしたんだ。
いつかこれが愛になるのか?
こいつから与えられる様なとても重く熱いもの。
そんなものにいつかなるのだろうか?)
少し素直になって甘えたい。
「なあ、朱点。
僕が今、お前に可愛がって欲しいとか言ったら嫌か?
ほら、お腹の子の為でもあるし。」
(嘘だ。)
(お前の言ったことに酔って、僕はどうしようもなく今、お前が欲しい。)
「母上からは腹が張っているときは少し控えろと。」
「それは今は大丈夫だし、優しくしてくれ。」
(今は本当に大丈夫だし、お前のぬくもりが欲しいんだよ!)
(あぁ…もう!)
「分かれよ!嫁が抱いてくれって求めてるなら答えろよ!!」
◇◇◇
うん。わかっていたけれど、皆が黙ったね。
《シュテンの真っ直ぐな告白はなかなか良いよ。》
《『お前にしか勃たない。』よりも全然良かったわ。》
《良かったわねリリィ!》
《リリィの本名は紫 か。確かに古来から高貴な色とされるな。》
ありがとう。
あいつはそのへんはもう本当に純粋で…物凄く我儘だった。
《確かにロマンチストではあるな…それが母親からの言葉とか…マザコン過ぎやしないか?》
仕方がないだろう!あいつを全肯定していたのは義母くらいだったんだ。
このあとは恥ずかしいけれど、それまでで一番…燃えたな。
発情期でもないのにな。
《マリーの理想の男をよく知りたい!》
話すのか?!
本当におまえ達は恥じらいとかそういうものは無いのか?
《マリーに言われたくない。》
そうだな、じゃあ…語るよ。
私はこういう話をなんでしちゃったんだろう?
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