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その後のいじわる社長と愛されバンビ11

 号泣する夢を見ていたような気がする。  そのせいか異様な疲労感があり、酷く頭が痛む。ついでに気持ちも悪い。  何故自分はこんな体調のときに目を覚ましてしまったのだろうと思うけれど、寝直すにも気分が悪すぎて、観念して目を開けた。 「…………あれ?」  ぼやけた視界に映るのは、万里の部屋の天井ではない。  久世の部屋?昨晩はここに泊まったのだっただろうか。  夢……、 「ん?起きたのか」  ではなかった。  ベッドの側のソファにいるらしい久世の声に身を起こそうとすると頭がズキッと痛んで呻いた。 「二日酔いか。まあ無理もないな、あんだけ酔ってたら」 「ふつか……あっ!、~~~~」  閃くものがあって大きな声を出したら、さらに鋭い痛みが走り、頭を抱える。 「大丈夫か?気持ち悪くて飲めそうもないとかじゃなければ水分取れ。ほら」  スポーツドリンクを手に握らされて、ありがたくいただきながら、少しずつ二日酔いになった原因を思い出していくと嫌な汗が出てきた。  北条に酒を飲むといいと言われて口をつけたウィスキー。  なんとか一杯目を飲み干したのは覚えている。  しかしその間の会話や、飲み終えてからの記憶はほとんど無い。  話には聞いていたが、本当にそんなことがあるのか。 「俺……もしかして、店に迷惑かけた……?」 「客が帰るまでは自分の足で立ってたって話だから、その後早退になったこと以外では迷惑かかってないだろ。望月も怒ってなかった」 「あ~………………」  接客中に倒れたとか、全裸になって暴れたとかではなくて良かったと思うべきか。  万里は自分で考えていたよりも酒に弱かったようだ。 「もしかして、あんたに連絡行って、迎えに来てくれたの……?」 「丁重にここまでお運びしましたとも」  芝居がかった動作で一礼されて、やってしまったと手で顔を覆った。  再び『SILENT BLUE』で働けることになったとき、形だけでいいからと提出を求められた履歴書の緊急連絡先には、父のスマホの番号を書いてある。  電話をしてもフィーバー中、もしくはフィーバーしすぎでグロッキーだとかで連絡がつかなかった可能性は高いが、何も久世に連絡しなくてもと思ってしまう。  いや、嬉しかった。目覚めたときに久世がいるのはとても嬉しい。  けれど、わざわざ自分の格好悪いところを恋人に見せたい人はいないだろう。  ……全部、自分の酒量もわきまえず勧められるがままに飲んで潰れてしまった万里が悪いのであって、ただの八つ当たりだとわかってはいるけれども。 「……ごめん、なさい。仕事中だったんじゃ……」 「接待続きでやれなかった雑事を片付けてたところだったから、大丈夫だ。ヤスヒロに押し付けてきた」 「本当に……ご迷惑をおかけして……」  いつもよくしてくれる野木にも迷惑をかけてしまったとは。  何故か久世の目がいつもより優しいのが余計にいたたまれない。  二日酔いで具合が悪いのも相まってズブズブと落ち込んでいってしまう。 「俺としては、それくらいは甘えてもらいたいんだがな」  困ったような声音に、緩く首を横に振った。  それではだめだ。  甘えていては、いつまでも同じ場所には立てない。  しゅんと項垂れていると、久世がベッドサイドに移動してきた。  へこんでいる情けない顔をみられたくなくて上掛けにもぐると、あたたかい手が、そこからはみ出した頭を撫でる。  子供扱いするなと振り払うような元気もなく、泣きそうな気持ちでされるがままになっていると、やがて久世はぽつりと聞いた。 「万里……、俺といるのが負担か?」 「え………………?」

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