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さらにその後のいじわる社長と愛されバンビ22
「明日は、ほんとに仕事行くの?」
「ああ」
「じゃあ、こんなことしてないで早く寝たほうがいいんじゃ……」
「俺の安眠のために必要なことなんだよ」
絶対そんなわけないだろと思ったが、怪我をさせたという負い目があるため断りきれず、万里は赤くなった顔の口をへの字にして、己の着ているものに手をかけた。
数分前。
食事を終え、その片付けを済ませて戻ってくると、久世はリビングのソファで呑気に新聞を読んでいる。
そんなことをしている場合かと、つかつか近寄っていって新聞を取り上げた。
「怪我人はさっさと寝た方がいいと思う」
久世は肩を竦めると立ち上がり、突如その足をよろめかせた。
「う…傷が…!」
「えっ…だ、大丈夫?」
乱暴に追い立ててしまっただろうかと、慌てて体を支える。
傷が開いた?また出血してしまったりした場合、救急車?いやそれとも神導に連絡した方がいいのか…と、狼狽えていると。
「……お前に、」
「?俺が?」
自分に何かできることがあるのかと、聞き返す。
俯き加減の久世は、少し屈み、万里の耳元で囁いた。
「キスしてもらえたら痛くなくなりそうな気がする」
「……………………は?」
キス?
思わず顔を見ると、久世は痛みを感じているどころか悪戯っぽく笑っていて。
絶句し、口をぱくぱくさせた万里は、からかわれていることに気付いて、いつものようにワンパン入れたい衝動をグッと堪えた。
「どうした?してくれないのか?」
「馬鹿!心配して損した!」
本気で心配したのに、と怒るが、久世はいつものごとく柳に風だ。
「だから、大した怪我じゃないって言ってるだろ」
「もー、いいから、さっさと寝る!」
こんなときまでふざけた男を寝室へと追い立てる。
ベッドに腰を下ろした久世は、ちゃんと寝ることを見届けようとする万里を、ちらりと見上げた。
「そういえば…、お前は大丈夫なのか?」
「何が?」
「怪我とか、しなかったのか?」
「見ての通り、俺は何ともないよ」
「いや……だが、自覚はなくてもどこか痛めてるかもしれないだろ」
何故そんなに食い下がるのだろう。
突然謎の過保護キャラに?と首を傾げた万里に、久世はにっこりと笑いかけた。
「俺がみてやるよ」
「は?」
「脱げ。俺が全身確かめてやる」
…そして、冒頭のやりとりに戻る。
久世は、にこにこと楽しそうにこちらを見ていて、万里は、もうこれはやらないと終わらないパターンだと悟り、少々やけっぱちな乱暴な動作で、着ていた服を全て脱ぎ捨てた。
間接照明のみの室内は、それほど明るいわけではないが、互いの表情はきちんと確認できる。
つまり、覆うもののなくなった全身が、久世にきちんと見えてしまっているということだ。
ただ、そんなにじっくり見なくても、どこにも怪我がないのは明らかなはずで。
「……も、わかっただろ」
「もっと近くで見せてくれ」
「………………」
馬鹿なこと言ってないでさっさと寝ろと出て行けば、久世は追ってこないとは思う。
けれど……抗えない。
久世の瞳に欲望の色が見えると、恥ずかしくても、もっと求められたくて、逃げられなくなる。
「もっとこっち…ベッドの上に乗れ」
促されるままに、ヘッドボードにもたれる久世の脚を跨いで座った。
「真っ赤だな」
「う、るさい…っ、あ!ゃ、触……っ」
わざわざ言われなくてもわかっていると怒ったが、不埒な手が既に形を変え始めている万里の中心に伸びてきて、びくんと身体が震える。
擦るのではなく、指先で軽く弄ばれて、じれったくて思わず非難の眼差しを向けてしまった。
「お前もしてくれ」
「……、」
気持ちを汲むどころか要求までしてくる悪い男を、万里だって弄んでやる、と眼下のスウェットと下着をずらして中身を取り出す。
まだ育ち切っていないそれを扱こうとすると、腰の位置をずらした久世が、己のものと手の中のものをくっつけ、万里の手ごとまとめて握り直した。
「やっ……、な、こんな、」
「一緒にするのも、いいだろ」
熱い。
それが、久世の手か、己の手か、密着した昂りなのかもはやわからず、過ぎる快楽に万里は腰を浮かせる。
「あ!っん、待っ……、ぁ、っ……!」
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