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第4話

-blaze-  姉貴の旦那はソファーにぐったりしてレースカーテン越しの日光を浴びていた。それなりに可愛いらしい庭とまぁ座るくらいならあるウッドデッキがあるってのに世間体ってやつかね。平日昼間にパジャマで日向ぼっこ。このプライド高そうな人が妙な噂流されて、そんなの許せるわけなさそうだもん。他人の家の事情なんぞ実際田舎でもなきゃクソどうでもいいけど、こういう一流商社マンとかマイホーム建てちゃってるやつは成績表のグラフとプライドが比例してるからな。ベッドではめちゃくちゃ可愛いから、それはそれでギャップあっていいけど。やっぱり姉貴に開発されたんかな。モラハラしてそうな高慢チキ高飛車夫の裏の顔は案外(アネキ)の尻に敷かれてるのかな。だってあんなカラダで夫婦としてやってられんの?勿論ノーマルにやってもバレるよな。バレないか。ケツ見せないもんな。 「来ましたよ、義兄さん」  姉貴の旦那の首に何か巻かれていた。何あれ?って思ったらちょっと高いタイプの充電器のコード。純正品より長くて頑丈なやつ。前にオレも使ってた。 「…何。死ぬんですか」  みるからに病んでる目付きと空気。これは確かに外で日向ぼっこなんてしてられないね。 「自殺教唆、自殺幇助、警察沙汰ですよ。ってことでオレは止めます。やめてください」  隣に座ってコードを解く。それよりもっと楽しいことシたいんだけどな。死体とは掛けてない。 「それとも窒息オナニー中でしたか」 「火群くん…」 「姉貴はどうしてるんですか」  もしかしてあの若い男とのことで思い悩んでる?寝取られるなんてプライドが許さなそうだもんな。痴情縺れさせて空き巣さんとオレに浮気しといてそりゃねぇよな。同性相手なら浮気じゃないのか? 「……買い物に、行った…」  ソファーにある手。縛りたいなって思った。縛って犯したい。汗ばんでる冷たい手に触る。指を摘んで揉んだ。眠そうな目がオレを見る。 「しましょう」 「ほのかに、」 「姉貴がどうかしましたか」 「ほのかに、悪い…ほのかが…心配する、」  可愛い人だな、オレの前で姉貴の名前なんか出して。 「どうして?姉貴は知ってるんですか、オレと義兄さんの関係(コト)」  姉貴の旦那は震えた。この前みたいに怖がって許して、許してってやつ聞きたかったな。掌を重ねると姉貴の旦那のカラダはまたびくびく震えた。手の甲を摩って、思わせぶりに軽く抓る。指の股に指を通して遊んだ。姉貴の旦那は顔を真っ赤にしてオレの手を払うと突然蹲った。頭を抱えて何かぼそぼそ言っている。こんな人だったっけ?やめてくれ、やめてくれ、と唇を噛み締めるみたい繰り返す。 「義兄さん?」  覗き込む。顎に拳が当たった。小刻みに震えて膝を抱いて小さくなる。普通の状態じゃない。病的なものを感じる。気が狂ってるみたいな。オレの知ってる姉貴の旦那じゃない。こんなクラスのいじめられっ子みたいな人だったか? 「やめてくれ……助けてくれ、やめてくれ…」  こんなふうに姉貴に甘えてんの?姉貴はママみたいに宥める?晴火にするみたいに。晴火は弟だけど旦那じゃもっと性的(ちがう)意味になるよな。社会的に抑圧されてるお堅い職業の人間は変態行為に走るっていうけど、女王様プレイなんて(とん)でもない。赤ちゃんプレイだ。オムツにも説明がつく。オムツが先か、直腸脱が先か。プライドばり(たか)なこの人を、綺麗だと思ってたこの人を、甲斐性なしなんて言葉とは正反対のこの人を、しかも姉貴の完璧で隙のないスマートで意地が悪そうな旦那を、赤ちゃん扱いできる。なんか頭おかしくて興奮した。 「やめますよ。助けます」  顔を歪めて姉貴の旦那はオレを見る。気が強そうな目が濡れてる。オレの赤ちゃん。姉貴に対して晴火みたいにバブバブしてる赤ちゃん。 「今日からオレがママですよ、義兄さん」  自分でも訳分からなくなって、でも、悪くない。姉さん姉さん言ってる晴火が姉さんの膝に乗って12まで抱っこをねだってたけど、あの姉貴が選んだこの旦那も姉貴にちゅぱちゅぱせがんでんのかな。ダメだよ、姉貴は晴火のなんだから。じゃあ義兄さんはオレのだよ。悪くない。初めて会った時からかっこいいと思ってた。美形だってね。プライド高そうで、ええかっこしくて実際学歴も高くて教養もあって博識でお上品で一流企業のサラリーマン。鼻っ柱へし折ってみたかったけど知らないうちにへし折れてた。興奮する。可愛い。いや、赤ちゃんとセックスする趣味はないけどね。 「オレと気持ち良くなりましょう?義兄さん」  赤ちゃんにはおしゃぶりだろ。口の中に親指を突っ込む。トロトロしていた。案外その気じゃん。カラダはオトナだからね。誘うみたいにオレを見つめて、オレはいつでも待ってるわけで。 「ほら義弟(ママ)に甘えてください」  この前のお互いに欲望を発散するみたいなセックスじゃなくて、オレがママとして義兄さんを気持ち良くするセックスしなきゃだ。 「ほむ、ら……く、んん、」  晴火から姉貴を奪った男。かわいい。オレの親指を飴玉みたいに舌で転がす。 「ここ腫れちゃったんですね。楽にしてください。抜いてあげます」  姉貴の旦那にそんなこと言うなんて、こんなこと出来るなんてまったく考えたこともない。姉貴の旦那を抱き上げるみたいに脇の下に手を入れると立ち上がってくれた。オレの膝の間に下ろす。寝間着の上から胸を触った。女みたいな膨らみはない。こりこりしてる部分が乳首だ。やっぱ乳首も開発済みか。 「あ…あ、あ…」 「気持ちいい?義兄さん。何も怖がることなんてありませんよ。姉貴の大事な旦那さんなんですから」  服の下からこりこり凝ってきている。姉貴の旦那は尻を動かしてひぃひぃ言っている。姉貴にも乳首虐めてもらってんのかな。晴火も姉貴に乳首虐めてもらいたかったんかな。男は聖母(ママ)に乳首を虐められたいものなんだってさ。高校の時の先輩が豪語してた。 「あ、あ…っぁ!」  目に見えて股間がテント張ってる。突き上げるみたいな腰の動きで震えて、この人にもまだそういう意欲あんだなって。でもこればっかりは本能か。姉貴との夫婦の営みってやつ想像しちゃった。勘弁してくれよ。晴火にぶん殴られるわ。どうせ尻穿(ほじ)られて乳首虐められてるんだろ。 -vlam-  姉さん大丈夫かな…ってあわよくば何か食わせてもらうつもりで姉さんの家に入った。我が家!って安心感がある。我が家じゃないけど。姉さんは許してくれる。ちゃんとインターホン鳴らして、ノックして、入りまーすって断って、玄関開いてたし、危ないよ。まだ踏み入らないで姉さんを呼んだけど反応はなかった。玄関の鍵は掛かってない。知らない靴がある。姉さんの反応がない。おれは仰天しておうちの中に入ってしまった。姉さんがまたレイプされちゃう。おれの姉さんが。おれの姉さんが知らん男にいいようにされちゃう。殺す。だめだ、殺せなかった。おれがしょっぴかれたら姉さんが困る。姉さんに会えなくなっちゃう。 「姉さん!」  リビングに駆け込む。人影。おれがソファーにいる。お義兄さんと。でもおれ多分ピアスしてない。怖いから。姉さんに「ワルい子!」て言われちゃうから。言われたい。あと髪染めてない。ハゲるから。姉さんに「ワルい子!」って言われちゃうから。めっちゃ言われたい。おれが笑ってお義兄さんが脚開いてばたばたしてた。おれがリクライニングシートみたいになってる。なんで2人で同じところ座んの。でもおれも中学生くらいまで姉さんの膝の上に座ってたから他人のこと言えないわな。 「あっあ、くあっ…」 「あ~あ、バレちゃった」  お義兄さんが胸を突き出して、おれにB地区をくりくりされてた。AVじゃん。おれはニヤニヤして結構強めにお義兄さんのB地区を摘んだ。 「あっ!」 「あ、ハルカ」  おれじゃないわ、この人。双子の弟だ。 「よぉ」 「あっ、くぅ…ぁ」  ハルカはおれを見上げてへらへらしてる。お義兄さんはその間もB地区捏ねられまくって下半身が跳ねてた。テント張ってる。 「姉さんは?」 「買い物だってよ」 「1人で?1人で行ったの?姉さん1人で?」  姉さんを1人にしたらまたレイプされちゃう。おれはいてもたってもいられずに足踏みをする。追わなきゃ、姉さんのこと。近くにスーパーいくつかある。 「まぁ待てよ。久々に会ったんだ。少しは構えよ」  ハルカはお義兄さんの耳を口に入れた。昔飼ってた猫の尻尾とか姉さんの髪の毛とかも口に入れてたよね。まだ直ってないんだ。 「でも姉さんが…」 「姉貴も子供じゃないんだ。大丈夫だろ。あんまり義兄さんにシスコン見せんなよ。悪いだろ」  ハルカはおれと喋りながらお義兄さんの胸を揉んで親指と人差し指だけでB地区を(まさぐ)る。 「こうしましょうよ、義兄さん。目隠しをしますから、どっちがオレか当ててください」  オレの味は知ってますよね?とハルカは言った。お義兄さんはB地区擦られてロデオマシンに乗ってるみたいに腰ばっか動かしてた。ハルカはお義兄さんをソファーに倒して脱がせ始める。 「あ…っ、ほむ、らく……何を、」  「姉貴奪った義兄さんに一泡吹かせたくない?」 「吹かせたくない」  姉さんが困るじゃん。姉さんに嫌われちゃう。姉さんはただでさえミャーなんとかさんを殴ったことで怒ってるし、姉さんはレイプされたことをひとり抱え込んでるんだ。 「お義兄さん、こんにちは。今日は下にいるんですね」  お義兄さんは虚ろな目で口をぱくぱくさせた。涎垂れてる。ハルカも姉さんのこと好きだよね。だから姉さんのこと横から掻っ攫っていったお義兄さんのおっぱいで我慢してるんだ。お義兄さんもよく許したな。 「欲し……い」 「なんて?」  お義兄さんの目の色が変わって耳を近付けようとするとハルカに腕を引っ張られる。 「姉貴の裸知ってるんだぞ。許せるか?義兄さんを抱けば、姉貴を抱いたことになるんだぞ」 「ねっ、姉さんを抱くってそんな!」  おれはおったまげてつい口にしてしまった。姉さんの夫の前で。 「ほ、のか…!ほのかが、どうかしたか……?」  お義兄さんは起き上がろうとしてハルカが支えた。 「ほのかは無事なのか?ほのかは、ほのか…」 「ええ、ええ、大丈夫ですよ。買い出しに行ったんでしょう?義兄さん、大丈夫ですよ」  またお義兄さんの発作が出た。ハルカがお義兄さんを抱き締めて、お義兄さんはぶるぶる震えている。 「ほのかはやめてくれ…ほのかには何も、」 「姉貴には何もしませんよ。大事な姉貴なんですから、当たり前でしょう?義兄さん、大丈夫ですよ。オレが傍に居ますから」  なんか変だ。変だ。変だわ。いつの間に仲良くなった?姉さんとか家族以外、あんまりココロ開かないハルカが?姉さんにしか笑わないお義兄さんが?目の前でハルカの服を摘んで、おとなしく抱き締められてる。ハルカはお義兄さんのことを撫でてて、前に拾ってきた小さな猫を可愛がってた時みたいに手付きが優しい。こんな仲良かったっけ?お互いに姉さんに、ハルカならそれとおれくらいにしか仲良くしようなんて思わないくせに。生まれた時から2つで1つ。教育方針には逆らっちゃうけど、おれとおれ、同じ物が好きで同じ物が嫌い。漉餡と粒餡と、それからたぬきの里ときつねの山がちょっと合致しなかったけど。生まれた時から分身がいて、なんで他の人と分かり合おうだなんて思うのさ?しかも、おれとおれの世界に生まれた時からいた姉さんを持っていったお義兄さんなんかと。 「して…してくれ、……して欲し…」  お義兄さんのちょっと吊り気味のかっこいい目は潤んでいてハルカのことしか見てなかった。なんか変だ。でも何が変なのか分からない。 「晴火」 「ハルカぁ」  鏡でよくみる、ちょっと髪色とピアスが違うおれ。かっこいいなぁ、おれ。 「義兄さんは、姉貴のために、メンテナンスしてやんなきゃなんだよ」  お義兄さんはおむつ履いてて、ハルカはかなり平和的なAVみたいにちゅっちゅちゅっちゅして、なんかおれはもう付いていけない。髪を染めたおれがお義兄さんに手を出してる。おれがお義兄さんをAV女優みたいに扱ってる。嫌だな。おれの顔でおれの手でおれの体温で、姉さんをおれから持っていっちゃった義兄(ひと)に優しくしないでよ。 「ハルカぁ」 「晴火。姉さんが可愛がってた乳首、いぢめてあげて」  明るい髪のおれが笑って、おれはちょっと迷う。お義兄さんは髪の明るいおれの首に腕を回して、ぼんやりしながら甘えてた。火群、ほむら?そうだ、おれはハルカなんて名前じゃない。 「晴火」  おれがニヤニヤ笑っているけど、おれは首を振った。 「だめだ。だめ!お義兄さんのB地区は姉さんのなんだよ」 「じゃあオレがもらう。オレなら許してくれるよ、姉貴は甘いからな」  もうお義兄さんは素っ裸で、生B地区はおれのと比べると大きかったし結構大きかった。身体中痣だらけで、姉さんもしかして暴力振るってんの?って思ったしおれも姉さんに叩かれたい。でも殴ったり蹴ったりするにはピンクっぽい痣は小さい。キッチンテーブルに寄りかかってAVみたいな光景を見ていた。AVというよりもシマウマ食べてるライオンの教育チャンネルでやってるやつみたいだった。 「おっ、おぉッ……!ちんぽ……おちんぽ、卑しいメス穴突いてください、」  誰、このひと。 -ėrable-  珍しく、母親から電話がかかってきて雪也さんの家を飛び出して、ぼくまで事故ったら西島家、ほんとどうなっちゃうの、って話で。21年間、大体18年間一緒に暮らした姉は白い布を被っていた。世間の人としてなら指を差して、死にやがった!最低のクソ女。死んで詫びろ、ああ死んだのかって嘲笑すべき?他人の家の子をいじめていじめていじめ抜いた罰なんだって?でもぼくには家族なんだよな。どうして誰かの嘲笑とぼくの悲しさは両立しないだなんて考えた?死んだらただの肉なんだなって思った。帰りに寄ったスーパーで並んでる豚肉とか牛肉に、いちいち生きてた時の姿なんて馳せない。そんなもの。形の残ってる魚にだって。あのいじめという名の名誉毀損女はただの肉の塊になりました…満足かな。世間の意見に溶け込む必要なんかない。ぼくは遺族だ。いじめていた女のカオをぼくは知らない。ぼくには姉だった。  得意じゃないお酒を入れて近くの公園のベンチに寝そべる。太陽は眩しい。気分は最低だった。強いお酒はぼくに何の力も与えちゃくれないが奪ってもくれなかった。裸で生まれて死ぬ時は衣装を着せられる。昔祖母に言われた言葉を思い出して何も面白くないのに笑ってしまった。まだ24だった。これから多分楽しいこといっぱいあった。人をいじめておいて?そのツケが回って恨まれて?揉み合いになって?楽しいこと?鼻の奥につ~んとくる異臭がする液体を飲んだ。人が飲むもんじゃないね。じゃあ猫とか犬とかならいいのか。違う、生き物が飲む物じゃない。甘く味付けていたってすぐに消える。寒くなる。何もしたくない。何をしなくても許されるような。許されとか許されないとかいうこだわりも持たずに済む感じ。それでも強いお酒じゃ隠せない。雪也さんのお家に行かなきゃ。雪也さんのお家に。雪也さんのお嫁さんを1人にしておけない。ハルトくんが一緒にいてくれたらいいけど。でもハルトくんも不安定なのか、二重人格なのかな。真っ直ぐに歩けない。雪也さんも雪也さんのお嫁さんも1人にしたらいけない。雪也さんのお嫁さんのことも好きだよ、ぼくは。あの人のこともちゃんと守らないと。セカンドパートナーってやつ。不倫みたいかな。どうして1人しか選んだらいけないの。自分ひとりだって重いのに2人も3人も背負えるわけないから。真っ直ぐに歩けない。足ばかり急く。雪也さんに会いたい。雪也さんのお嫁さんの傍に居なきゃ。まだやり直せる。雪也さんと雪也さんのお嫁さんがやり直せたら、ぼくは?雪也さんのお嫁さんにとってぼくは邪魔になる。缶に口を付けてぐいっと上を向く。そんなこと今考えてどうするの。雪也さんと雪也さんのお嫁さんの幸せを考えられないなら… 「深秋くん、危ない」  肩を掴まれて白線の内側に寄せられる。姉ちゃん。うっうって泣いちゃう。女の人の手はどうして小さくて柔らかいんだろう。母ちゃんの手は少しゴワゴワしてて大きいよ。病院に母ちゃんを置いてきちゃった。 「酔っているの?」 「うん…」  雪也さんのお嫁さんの声は嗄れてた。夜も泣いてたんだろうな。雪也さんのこと考えて、独りでさ、 「何かあったの…?」 「何もない。帰ろ、帰ろ」  帰るも何も、雪也さんのお嫁さんのおうちだよ。 「雪也さんのお嫁さんは?」  買い出しにしては何も買った様子はなかった。でも会えてよかった。 「ちょっと、散歩…」  ふわりと雪也さんのお嫁さんが笑う。少し雪也さんに似てた。いいな。姉ちゃんも、ワンチャン好き()とこんな夫婦(ふう)になれてたかも知れなかった。また胸が苦しくなった。ぼくは30になっても40になってもたまに24で死んだ姉ちゃんのこと思い出すんだ。70になって80になって炬燵に入りながら。もうその頃には忘れちゃう? 「泣いているの?」 「う、ううん!泣いてない!」  目を擦る。雪也さんのお嫁さんに心配かけられない。雪也さんと雪也さんのお嫁さんには関係のないことだ。同時に言いたくなかった。ぼくの姉は死んで当然の人だなんて。でもきっと言っちゃう。この人たちに許して欲しいって思って。でも許されるわけない。この人たちに軽蔑されたくない。 「そう…それならいいの」  雪也さんのお嫁さんの手はまだぼくの肩に乗っていた。ぼくを白線の内側に引き留めてくれる。真っ直ぐ歩いてるつもりでも全然真っ直ぐに歩いてなかった。つもり、つもり、全然ダメだ。お酒飲んで車運転して、自分でぶつかって死んじゃった高校の友人がいたな。真っ直ぐに走ってるつもり。結局死んだ。見通しのいい大きな道路。いじめの主犯格、飲酒運転、ぼくの周りはろくでなしばっかり。類は友を呼ぶんだって。ああ、ぼくはろくでなしなんだ。じゃあ雪也さんも?まさか。隣を歩く雪也さんのお嫁さんを見つめた。綺麗な人。雪也さんの大好きな人。ぼくは雪也さんの隣を歩けないから。  雪也さんのお嫁さんに引かれて雪也さんのおうちに帰る。いいな、って思った。姉ちゃん死んじゃったけど。母ちゃんめちゃくちゃ泣いてて、父ちゃん仕事切り上げて病院向かってるみたいだけど。生まれ変わったらもういじめなんてやめてよ。ぼくに真っ白そのまま、姉ちゃん死んじゃったんだって悲しませてよ。なんで姉ちゃん死んじゃって悲しいのがこんなに後ろめたいの?雪也さんのおうちの玄関のベルが鳴る。生まれ変わるって、何だよ。 「ただいま、あなた」  雪也さんのお嫁さんが気を付けるように言った。そっか、ぼくは今酔ってるんだ。雪也さんのお嫁さんはでもぼくが上がる隙間なんてないところで立ったまま。 「ぁっ、あぐっ、イぐ、んぉっ…」  雪也さんの声だ。雪也さんの声だけど。リビングから聞こえる。目の前の墨汁で染めたみたいな長い髪が波みたいになってぼくは慌てた受け止めた。でもぼくもふらふらして雪也さんのお嫁さんでぼくの大事な人のことはキャッチできたけど膝を石の床に打っちゃって、いきなり悲しくなった。姉ちゃんが傷付けた人のことなんかもうどうでもよかった。家族が死んじゃった。昔使ってた掃除機みたいに泣いた。姉ちゃん死んじゃった。人のこといじめて、恨まれて、揉み合いになって轢かれちゃった。もう会えない。 -blaze-  オレが焚き付けたのに盛り上がってるのは晴火のほうだった。オレから姉貴の旦那を奪い取ってなんだか知らんが怒ってる。姉貴の旦那は突っ込まれるのが好き、ってところが気に入らないらしかった。もう多分そんな使ってないちんぽでイかせようと必死になって、姉貴の旦那ももうケツの悦さってやつを知って戻れないみたいだ。オレは晴火に姉貴の旦那を預けて一服することにした。晴火はタバコ吸わないらしい。でもオレと晴火は同じなんだよ。タバコの美味さを知れば簡単に喫煙者になる。絶対高いオリーブオイルがぐっちゃぐっちゃ音を立てて、それを聞きながら煙を吐く。 「だめじゃないですか!」  どうせ姉貴に乳首弄られてシコらされる旦那に焼き餅でも妬いてんだろ。晴火は前から擦ったんじゃ勃たない姉貴の旦那のちんぽを飽きもせずシコる。ケツから突いてやらなきゃ勃たない、ってことに早く気付け。教えない。面白いから。姉貴の旦那を姉貴から奪っちまえ。姉貴の旦那はオトコの身体にメロメロなんだってな。晴火はなんでだよって言いながら姉貴の旦那のちんぽを擦る。嫉妬で力3割増しか。そうやってシコってんのかな。オレとは違うな。女でイけなくなるぞ。いいよ、晴火は女でイかなくたって。姉貴の旦那でイけばいい。姉貴に開発されて、姉貴の手垢が付いた旦那でイけばいい。オレがイった姉貴の旦那の中でイけばいい。それ以外に誰とヤるんだよ。 「お義兄さん!なんですか、このカラダ!ちゃんとここ硬くしなきゃ、ダメじゃないですか!姉さんに悪いと思わないんですか!」  晴火の手が姉貴の旦那のちょっとしか硬くならないキンタマを叩いた。 「あっ……痛い、」  痛いなんて嘘だ。姉貴の旦那のちんぽは少しずつ勃起してはいる。見た目によく似合ったご立派な逸物だが、もうケツイキばっかりで前からはご無沙汰って感じだ。勃たなきゃ結局は可愛いもんだ。 「姉さんのこと放って置いてるんですか!なんですか、メス穴に欲しいって!姉さんにそんな下品なこと言わせてませんよね!?」 「あ、っあ、ほのか、ほのか…!」 「姉さんの名前出して大きくするのやめてください」  晴火は姉貴のこととその旦那のことばっか。晴火が思うほど姉貴も清純で卑猥なこと何も知りません、って女じゃなかったわけだ。でも斜め上。メス穴言わせてるのは姉貴ってわけだ。恐ろしいな。晴火のケツはオレが守ってやるよ。流石にオレと同じ顔がケツいじられてヨガってるのはな。いや、姉貴は嫌がるだろ、晴火はやって欲しがるかも知れないけどな。どうしてもケツの悦さってのを知りたいならオレがヤる。 「なんでイかないんですか!」 「ぁ……ぁっ足らな……くんんっ、足らないぃ、!」  あの姉貴の旦那がもう子供のおねだりみたいに泣きべそかきながらちんぽ欲しがるんだもんな。姉貴も可哀想だがオレも晴火も可哀想だ。晴火は躍起になって姉貴の旦那のちんぽをシコる。姉貴の旦那は暴れながらオレを見た。可愛いよ。晴火から姉貴を奪って、晴火の頭ん中にはアンタまで入り込む。可哀想な、義兄さん。 「乳首弄りながらやればいいんじゃねぇの」  オレと晴火は同じなんだよ。オレが言えば晴火は染まる。すぐさまオレの手が姉貴の旦那の乳首をぐりぐり弄っている。オレ、あんなところに絆創膏してたっけ。してねぇよ。じゃあ晴火の手だ。晴火の手で姉貴の旦那は痙攣してガクガク腰を突き上げる。 「あっあっあぁ、んぁ、」  勢いはない。毎日毎日何回も大量射精、三十路にそんな元気はないか。晴火の手に姉貴の旦那のザーメンがかかっていた。オレの手。骨の浮いた甲。量も多くはない。色も薄い。オレの手を汚す。晴火の手を。 「義兄さん、ちゃんと前でイけたんですね。偉いですよ。ご褒美です」  姉貴の旦那の目がとろんとしてオレを見る。自分から腰を上げてひくひくしてる穴を晒した。そのうち薔薇になる。尻に何か真っ赤な生肉の塊を挟んでるみたいに。 「おねだり、ちゃんと出来ますよね?」  指を挿れる。フーセンガム膨らました時みたいに中身が出てきて、姉貴もブッ飛んだコトするよな。姉貴かどうかは、分からないけどな。 「メ、メス……穴ま、んこに………おちんぽ…挿れてくださぃ…」  個人的にはメス穴まんこってあんまり好きじゃないな。絶対使い方おかしいだろ。重複表現は強調の意味もあるって国語で…やったか?その域を超えてねぇか。どう思う、晴火?晴火にそんな卑猥な単語教えられるかよ。姉貴は嫁に行ってもまだ処女だって信じてるんだからな。実際処女かもな。処女じゃないのは、この義兄さんで。なんならヤっちまっても姉貴だけは処女、聖母、女神だなんて思ってる。旦那のケツ穿(ほじ)って乳首イきまでさせてるなんて概念も無いだろうさ。裏の顔は娼婦じゃないがとんだメスカマキリだった。あの姉貴が。晴火が信奉する姉貴が。晴火を撫でてオレを宥める手が旦那を犯してる。 「上出来ですよ、義兄さん。いい子」  尻を揉んで突き入れる。 「んぉっおっお!」  熱くて柔らかい。締め付けはそんなに強くない。ただぶつかる肌の感触と、姉貴を晴火から奪っていた男を犯してる事実にオレも熱くなる。 「ハルカぁ」  晴火はオレを困惑してみてる。いいじゃん。悪くない。オレと晴火と姉貴のセカイに入ってきたのは義兄さんなんだから。晴火の大敵だな。オレが絡め取って食べてやらないと。晴火はオレなんだから。 「あ、あっあつぉ、んぉ、あっあ、」  姉貴の旦那から腰を揺らして、オレはこの人にとったらただの肉バイブなんだろうな。姉貴にやたらとベタベタしてる若い男とも肉体関係(カンケー)あるの? 「んぉっお…おまんこイく、あひぃ!」  晴火はドン引いてる。姉貴を奪った学歴良し見てくれ良し一流企業勤務のアヘ顔見とけよ。ぱつんぱつん言う音が大きくなって義兄さんは逃げようとする。 「イぐぅぅうっ!」

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