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第74話

「やっ……うぅ」 「もしかして、()れて貰えなかったから、泣いてるの?」 「違う……見る…な」  向かい合うように体を返され、暁は思わず顔を背けた。心の中を見透かされそうで、まともに唯人を見られない。  既に……彼の策へと嵌まっているのに、それにも全く気付けなかった。 「ホント暁は可愛いな。欲しいなら自分で挿れてごらん。上手に出来たら、これ、取ってやるよ」 「ん……くうっ!」  媚薬のせいで昂まったペニスは、気持ちに反して萎えてはおらず、ブジーの先をノックされただけで、腰が淫らに跳ね上がる。 「ほら、一人で気持ち悦くなってないで」  ズボンをくつろげただけの唯人が、柔らかな声音で言いながら、己の起立を指し示すけれど、どうしていいのか分からない暁は首を大きく横に振った。 「欲しい……けど、できな……むり…だ」  唇から零れ落ちるのは、偽りの無い正直な気持ち。後ろ手に縛られた上、既に腰の立たない暁には、自ら動いて彼のペニスを受け容れるなんてとても出来ない。 「できないなら、このままだ」 「やっ……やだっ!」  非情な言葉に涙が止まらず、訴えるように唯人を見るが、兆しを見せる下半身とは裏腹に……まるで欲情を感じさせない怜悧な笑みを浮かべていた。 「ふっ……くぅっ」  なんとか願いを叶えたい。  そう思った暁は奥歯を強く噛み締め、脚へ力を込めようとするけど、全く体が言うことを聞かずそのままベッドに倒れ込む。  諦める事が出来ない暁は、それでも必死に起きあがろうと何度も試みるけれど、その都度ペニスがシーツに擦れ、愉悦に体を震わせる内、僅かながらに残されていた理性もすぐに弾け飛んだ。  *** 「あっ…あぁ……ん」  ハアハアと荒く息を繰り返し、涙を流す姿に煽られ、思いのままに貫きたいとういう衝動に駆られながらも、唯人はそれを表には出さずに暁の髪の毛へ手を掛けた。 「一人で遊んだら、駄目だろ」  そう冷たく言い放つと、「ごめん」と何度も繰り返すけれど、ペニスをシーツへ擦り付けるように前後する腰は止まらない。 「暁、俺はダメって言ってるんだけど」 「……やだっ! ゆいの……欲し…い」  仕方が無いから自慰に耽る華奢な体をひっくり返せば、まるで玩具を取り上げられた子供のように、イヤイヤと大きく頭を振るから思わずゴクリと喉が鳴った。  言っている事とやっている事が支離滅裂だ。 「暁、そんなに欲しい?」 「……しい。欲しい、ゆい、お願……ん…ふぅっ」  喘ぐ唇を自分のそれで塞いだのは、衝動的な行動だった。『つまらない』と言ったのは、背後からでは挿入した瞬間の顔が見られないという単純な理由だったのだが、予想以上の反応を彼が見せたから……唯人の中の暗い欲望は、かなりのところまで満たされた。

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