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番外編 たまにはやる夜彦
「ではその命、わたくしがいただいてもよろしいでしょうか?」
急に出てきたのはオレンジの髪の青年、夜彦。
大人の余裕を醸し出す笑みを浮かべながら、少年へと近づいていく。
「あげます、もうどうにでもしてください」
にへらと笑う少年の額に夜彦は自分の額をくっつけた。
「あなたは夕馬です」
静かに告げた言葉に少年は戸惑う。
「なに、それ」
「代わりにお名前を差し上げたのでございます」
夜彦は愛おしそうな顔をして少年を見て、髪を撫でる。
「あなたは今から人質でございます。朝日家の四男として生き、いづれかは御前家を潰すトップへとなるのでございます」
「朝日、家……?」
「はい。あなたは罰として生きていただきます」
夜彦はおほほと笑う。
「あなたは愛に溺れていただきます。縛られて苦しんでも、絶対に死なせませんので、ご覚悟を」
愛を知らないのか、少年はポカンとする。
「くるしい、の?」
「それはもう」
「それな、ら……おねがいいたします」
少年は力尽きたのか、目を閉じてしまった。
「ようちゃん、泣くくらいイヤであれば守り抜かねばなりませんよ」
諭すように言う夜彦に陽太は両手で顔を拭い、鼻をすする。
夜彦は静かに少年を抱き、真昼の元へ駆け寄る。
「人を傷つけるのがどれだけイヤなことか、あなたがよくご存知でございましょう。 この傷、2人で治して差し上げましょうね」
ふふっと穏やかに笑った夜彦は静かに消えていった。
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