56 / 88
第12話 - 3
ハワイに行く話が出た頃には、もしかしたらもう意識していたのかもしれませんが、その時点では、憧れていたという方が合っていると思いますね。
でも男同士ですし、私は恋愛経験自体ほとんどなかったので、それがどういう思いなのか、自分でも正直わからなかったです。
ただ一緒にいると楽しくて、教わる事が多いのが刺激的で。
非常に綺麗な顔立ちで、物腰も優しく穏やかで、一緒にいれば誰だって好意を持つと思います。こういう男がモテるんだろうなと思いました。
前半はワイキキに滞在して、レッスンや街歩きを楽しみました。
後半はノースにジョージの友人の別荘があるというので、そちらに移動しました。
海に面した、小さいんですが感じの良い家でね。
そして、周りに何もないんです。静かで、自然に囲まれて、素晴らしい所でした。
車で10分か15分か走れば、ハレイワの町があるし、反対側に行けばスーパーなんかもあって、買い物や食事に出かけたりしてね。
別荘の前は岩場に囲まれた小さな砂浜で、プライベートビーチのようになっています。潮が引いたら岩場の向こう側まで散歩して。
夜は月明かりで海面がキラキラ輝くんです。
ジョージが裸で泳ごうと言うので、最初はちょっと恥ずかしかったんですがね。
他に誰もいないし、まあいいかと思い切って入ると、海水が心地よく全身を受け入れてくれるようで、なんともいえない、愉快で、楽しくて、幸せな…… ものすごい解放感で。
生まれて初めての感覚でした。
そこでジョージから告白されて、初めてキスをしました。
驚きました。
けど、幻想的な夜の海の、映画の中みたいな雰囲気にのまれたのか、
そのまま夜を過ごす事になって。
僕はすべてを受け入れました。
はい、初めてです。
でも不思議と恥ずかしいとも感じなくてね……
なるべくしてなったような、深い所で腑に落ちるような感覚でした。
日本に帰って、また日常に戻りました。
普段通り出勤し、週2回は小池と一緒にレッスンを受け、週末はジョージと過ごす。
すべてが順調だと思っていました。
ともだちにシェアしよう!