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風邪

朝6時 幼なじみが起こしに来る時間だ。 俺はそんな幼なじみが可愛くて可愛くて毎日狸寝入りをしている。 その幼なじみがいつもの時間に来ない… ──何かあったのか…? 毎日時間ぴったりに起こしはずが、起こしにこないのはおかしい。 30分経っても一向に来ない幼なじみの様子を見に行こうと、俺の部屋の窓から隣の家である幼なじみの部屋の窓へと飛びうつった。 昔から隣同士で行き来していたからカギはいつも開いている。 ──ガラッ 「おい、なにかあったの………尚哉!?!」 窓を開け、話しかけながら幼なじみである尚哉(ナオヤ)を見ると、そこには倒れている幼なじみの姿があった。 すぐに駆け寄り、抱き起こすと不意に体が熱いことに気づいた。心なしか顔も赤い。 もしやと思い、おでこに手を当てると、 「あつっ!」 やはり、熱を出していた。 幼なじみをお姫様抱っこし、ベッドへ移動させて冷えピタを貼って布団を被せた。 幼なじみが起きるまで手を握ってあげようと、幼なじみの片手と俺の片手を合わせる。 ──その熱が俺に伝染ればいいのに。 そう思いながら、寝ている幼なじみに軽くキスをした。 *** 「んう……まさ……き?」 幼なじみが起きたようだ。 俺はあの後、時折幼なじみの頭を撫でつつずっと見ていた。 ──どんな形であれ、俺とお前が一生一緒に居られたらいいのに… そんなことを思いながら… 「起きたか、おはよう尚哉。」 「おはよ…、あれ、なんでベッドに…?ってか学校っ!」 まだ状況を整理しきれていないようだが、外を見て夕方頃の空でだいたいの時間を把握したのか少し焦っているようだった。 今の状況を話してやることにした。 「お前、熱でぶっ倒れたんだよ。覚えてるか?」 そう言うと、幼なじみは目を見開いていた。 「お、おれ、雅樹(マサキ)を起こしに行こうとして…それから…??」 そこから記憶が途切れてるようだった。 「お前、最近無理しすぎたんじゃないか?」 幼なじみの頭を撫でてやる。 「そ、そんなことないよ…?」 「無理して俺を起こしにこなくてもいいんだぞ?」 そう言うと、幼なじみは元々大きな目を更に大きくして目には溢れんばかりの涙の膜が張っていた。 「お、おれが…ヒクッ…ま…さきと…ヒクッ…いっしょに…いたかった…ヒクッ…からぁ…!」 体が弱っているせいもあってか精神的にも少し不安定になっているようで泣き出してしまった。 俺は慌てて、その小さい身体を頭を撫でてやりながら優しく抱きしめた。 「俺もお前といたいさ、でもな?無理してまでやられてもお互いが辛いだけだ。…な?」 赤子をあやすように優しく優しく語りかけた。 すると幼なじみは少しずつ泣き止んでいった。 しばらくすると、幼なじみは顔を上げて泣いて少し腫れた赤い目で俺を見て言った。 「おれは、これからも雅樹といたい!朝起こすのもやめない!もう無理はしない!」 そう言うと笑顔で俺にギューッと抱きついてきた。 それだと今までと変わらない気がするが幼なじみは言い出したら聞かないと昔からの付き合いな俺にはわかっていた。 「ふぅ……、わかった。お前の好きにしろ。ただし、無理はするなよ?」 これ以上の事は俺には言えない。 なにせ幼なじみで俺の大切な人だ。 惚れた弱みというやつだ。 「まずは早く直さないとな。」 その後、二人でお粥を食し、手を握りながら眠った。

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