21 / 35
お題『寝る? それとも寝る?』
あのさ。
確かに俺は、お前相手なら、
男同士でも大丈夫かなとは思ったよ。
お前とは話も趣味も合うし、
部活も同じだし、
食べたいものも、観たい映画も大体被る。
お前の隣は、他の誰より気楽だし、
女の子相手と違って、変な気遣いも見栄も必要ない。
お前と居るときだけは、
いつでも飾らない自分で居られる。
だから、そんなお前から「好きだ」って言われたときも、
驚くより、ただ純粋に嬉しいと思った。
真っ直ぐな好意っていうのは、強く心を揺さぶるんだと知った。
何より、お前も俺に対して本音を曝してくれたことが、
俺は凄く嬉しかったんだ。
──そう、嬉しかったんだけど……。
新しいゲームを買ったと聞いて、
何気なく家へ遊びに行ったつもりだったのに、
どうして俺は、部屋に入るなりベッドに押し倒されてるんだ!?
そもそも俺たち、まだキスどころか手も繋いだことなかった気がするんだけど、
動揺している俺が初心すぎるのか?
いやでもだって。
男同士って、色々勝手が違うだろ。
心も身体も、それなりに準備が必要なわけで……。
魚みたいに口を開閉させながら、狼狽る俺を見下ろして、
お前が不敵に笑う。
「ねぇ……俺と寝てくれる? それとも、寝る?」
……男なんて、本性は結局オオカミだ。
でもそんな遠慮のない本音が、やっぱり少し嬉しいと思ってしまうから、
こういうのを、
惚れた弱味って言うんだろう。
「それ、俺に拒否権ないだろ……」
こうなったら仕方ない。
俺も男だ。
そう簡単に逃げて堪るかという意地もある。
ここまで来たら、
お前の欲求ごと全部、
俺が丸呑みにしてやるから覚悟しろ。
ともだちにシェアしよう!