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第10話 王様は誰だ

その男は大きな声で勝利宣言をした。 150枚もあるメダルの中からアタリを見つけたらしい。 開始たった5分で王様が決まってしまい、周りの生徒の動きは全て止まった。 ショックで拾ったメダルを手から落とす者もいる。 体格の良いその男からメダルを取れるような強い者はおらず、みんなただ見守るだけ…… 彼には兄弟か親戚に子供がいてレアメダルの知識があったのだろう。 静まり返る中、得意気にメダルをみんなに見せびらかす手の中のメダルは キラキラとホログラムのシールが貼られ光っている。 メダルを撒き終えたドローンが戻ってくるのと同時に彼はゴールした。 「2-3 宍戸(ししど) (れん)だ。」 副会長にそう告げてメダルを得意げに渡すと、宍戸 漣は後ろに振り向き親指を上に立てて、みんなに勝利のサインを出してアピールしている。 生徒会書記がクラスと名前をチェックして合図する。 パソコンに繋がれたスキャンに副会長がメダルのバーコードをかざした。 『ブッブーーーッ!!』 とてもアタリとは思えない音声が流れた。 「はぁーい、残念でしたぁー。」 でかでかと生徒会長の明るい声がマイクを通してみんなの耳に届く。 宍戸 漣は大口を開けて呆然としている。 周りの諦めていた生徒もポカーンとした。 ハッと我に返った宍戸 漣は副会長に詰め寄った。 「なんでっ!!どうして?!これレアメダルだろっ!!」 「元々はレアメダルかもしれないけど生徒会が登録したのはこれじゃありません。」 「なんだそれはあああ???」 「皆さ~ん、チェックまであと25分だよ~。早く持って来ないと時間切れだよ~~。」 生徒会長の声にさっきまで諦めていた生徒たちは、慌てて一斉にメダルを拾い吟味しだした。 一番乗りでチェックをした宍戸 漣はがっくりと肩を落として彼のクラウンゲームはあっという間に終わった。 その他の生徒たちは、これだと思うメダルを持ってゴールへ走っていく。 ほどなくしてスキャンするための長い列が出来て『ブッブーーーッ!!』というブザーが絶え間なく鳴り続けている。 「修斗、どこにいるのかな?メダルはもう拾えたかな?」 きょろきょろと修斗を探しながら歩いていると…… ガリッ! 足に違和感と変な音がした。 そっと足をどかすと、その下からは1枚のメダルが地面にめり込んでいた。 「あっ……割れちゃったかな?!」 おもちゃのプラスチックメダルを慌ててて拾い上げ汚れを叩く。 良かった割れていない。 でも、汚れが落ちないや、思いっきり踏んずけたからなぁ。 ……うん、バーコードは読めそうだ。 メダルの中央には楕円形の顔をした可愛い白い妖怪の絵が描いてある。 ホログラムでもないし、その上、汚れているメダルなんかきっと誰も拾ってくれないだろう。 汚したのは俺だしな。 「ごめんな。お前は俺がゴールに連れていってやるから。」 一人メダルに向かって呟くと握りしめてゴールへと向かった。 去年までは王冠を見つけたら、体力自慢の男子生徒達の奪い合いで、体力のない生徒は諦めなくちゃいけないという不公平なシステム。 でも今回の宝くじみたいに誰が当たるか、チェックするその時まで分からないワクワク感が嬉しい。 当たらないとわかっていても夢があるよな。 もし俺が当たったら何をお願いしようかな? そうしたら絶対…… 「修斗の恋人になりたい」 なーんて言っちゃったりなんかして❤きゃー!! 恋人になれたらどんなに幸せだろう❤ 一人照れながら、列の最後尾に並ぼうとした時、後ろから声をかけられた。 「ナギ!」 振り向かなくても解る。 この声は大好きな修斗の声!! 修斗は俺の所に駆け寄ってきてくれた。 今日は一度も会えなくて寂しかったとか、俺を探し出してくれて凄く嬉しかったとかいろいろな感情が湧き起こる。 「メダル拾えたか?」 「うん、これにするんだ。」 俺は自分の汚れたメダルを見せると修斗の顔色が変わった。 「あっ!! これ! 俺のとこう………」 「?」 「………いや、可愛いな。」 「だよな。修斗のは?」 見せてもらうと俺のメダルによく似ているが体の色が白ではなく黄色。 「あ、俺のメダルの色違いじゃん。俺達お揃いだな。」 「そうだな。それ大事に持っていけよ。」 「うん。」 修斗は静かに微笑んで俺の手を引いて列の最後尾に連れて行った。 ちょっと修斗、手を繋ぐなんてどうしちゃったんだよ。 わあああ、ドキドキするーーー! 俺は自分の心を悟られないように、修斗とお揃いのメダルをどうやって見つけたか話した。 そうしているうちに、列はどんどん短くなっていき、とうとう俺達の番になった。 生徒会長の「残念でしたぁー❤」を何回聞いただろう? 「2-1 辻 修斗です。」 修斗はそっけなく副会長にメダルを渡した。 副会長は修斗のメダルを見て顔を近づけて何やら話している。 「……で……のか?」 「はい………………ます。」 僅かに二人の会話が聞こえた。 メダルをスキャンするとハズレのブザーが流れた。 「残念だったね。」 生徒会長も今までみたいに大げさに言うのではなく本当に残念そうに言っていた。 修斗はぺこりと頭を下げて俺に場所を譲った。 「2-2 岩崎 渚です。お願いします。」 メダルを渡すと副会長はハッと俺と修斗を見た。 なんでそんなに驚いているのかな? メダルをスキャンしてもらうと 『ピンポンピンポン❤』 さっきまでの不快なブザーとは異なり軽快なリズムが流れた。 騒がしかった校庭が静まり返り、全てのノイズが止まったようだった。 「アタ~リ~!!」 生徒会長の能天気な声でアタリが告げられた。 後ろに並んでいた誰かの「うわーっ!!!終わったー!」と落胆の声が漏れると校庭のあちこちから残念がる声、1年生と3年生の間から拍手が湧き起こる。 「アタリが出ました。残りの人はゴールに一人1枚メダルを持って来て下さい。回収します。」 副会長が俺の肩に手を置いてニッコリと笑って 「おめでとう。君が王様だ。」 …え…おれ?? 俺が王様ぁ??

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