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第14話 喧嘩

部屋の中には、二人の愛を確かめ合った残り香と熱い吐息が零れている。 身体が凄く痛い…… ……でも…… それ以上に修斗を好きだという気持ちの方が大きくて痛さも嬉しい。 呼吸が少しずつ落ち着いてきて冷静になってくると、今自分の置かれている状況が客観的に見えてきて……… うわぁっ❤恥ずかしいっ!! こんな所でこんな事するなんて思わなかったっっ!! ……話の内容を確認しないで返事した俺も悪い…… けど 普通は何回かデートしたりして、 もっとお互いを良く知って、 好きって気持ちがめちゃくちゃ盛り上がってから、 こういうことをするんじゃないのか? ……でもでも、これで俺は……修斗の恋人……なんだよな❤ うわぁ~~~~~~っ❤(;≧_≦) 「……ナギ」 俺を抱き寄せると、またキスから始まり手は身体を撫でながら双丘へ入っていく……… 「あ……っん、んんっ」 キスでとろけてしまった脳はさっきまで考えていた恋人の段取りのことなど どうでもよくなってしまい…… 修斗に求められるがまま許してしまう。 そこへ再び内線電話が鳴りだした。 プルルルルルルルッ!! プルルルルルルルッ!! 「だめ、出ないで」 「やだ、誰かここに来たら困るから……」 修斗のお願いを断り、ふらつく足取りで受話器を取った。 「もしもし?」 『用務員室ですが、下校時間を過ぎてます。早く帰宅して下さい。』 「えっ! 」 内線をかけてきたのは用務員さんだった。 カーテンが閉まっていて外の様子が分からなかったが時計を見ると針の指し示す時間は夜を告げている。 「す、すみませんっ!! すぐに帰りますっ!! 」 急いで身支度を整えて、玄関に行くと校内にはもう俺達しかいなかったそうだ。 用務員さんと守衛さんに沢山謝ってすぐに学校を後にした。   こんな夜の時間に修斗と二人きりで駅まで向かうなんて初めてだ。 学校の周辺に人影はなく、通い慣れた道なのに夜のせいなのか、それとも修斗の恋人になったせいなのか、いつもと違って景色がキラキラと輝いて見える。 「………ナギ……ごめん。大丈夫か?」 「……ん。」 こくんと頷くが本当は全然大丈夫じゃない。 身体の奥の方が熱くて痛くて歩くのが辛い。 いつもより、かなり慎重にゆっくりと歩かなくちゃいけない。 「……ナギ…」 「なに?」 「その……俺達、恋人でいいんだよな?」 「!」 修斗は自信なさげに聞いてくる。 生徒会室であんな大胆なことしておいて今更それを確認するのか?! そう言いたかったけど さっきのことを思い出してしまい、俺は急に恥ずかしくなって声が出なくて……また、こくりと頷いた。 すると修斗は立ち止まってもう一度 「本当に俺でいいんだな?」 修斗……俺の口からちゃんと聞きたいんだ。 「………修斗でいい」 「…………っ!! 」 次の瞬間 修斗に抱きしめられていた。 「っ、修斗……」 「……もう戻れないからな。」 「うん。」 「お前のこと離してやらないからな。」 「うん。」 そんなの俺だって同じだよ。 修斗のこと大好きだもん。 でなきゃ、《《あんな事》》 許すわけないじゃん。 「俺、ナギにもっと好きになってもらえるようにいい男になるから。」 ん? 「ちょっと待ってよ!! それ以上いい男になってどうすんだよ。修斗は十分モテてるだろう?!」 「女の子にモテるのとナギに好かれるのは全然違うだろう?俺はナギに釣り合ってないから、もっと努力しないと……」 ぐわ~~!! どこを見て言っているんだ!! 「釣り合ってないのは、どう見ても俺の方だろ!!」 身長とか、成績とか、バスケとか、修斗に一つも勝ててない。 「なに言ってんだ。ナギはウチの学校で一番可愛いじゃないか!! ………はっ!! 」 か………可愛いだとぉ~~!! 人生で一番聞きたくない憎むべき言葉を!!! 嫌な過去がフラッシュバックして瞬く間に脳を埋め尽くした!!! ぶっちぃーーーーーんっ!! 怒りで頭の中が赤く沸騰して大声で叫んだ!! 「俺を可愛いなんて言うなっっ!!!俺をバカにするやつは絶交だっ!!顔も見たくないっ!!」 「ナ、ナギっ!ごめ…………」 「さわるなぁっ!!」 駆け寄る修斗の手を払った。 もうここに………修斗の傍にいたくなかった。 服に傷が擦れて酷く痛いけど、身体の事なんか構わずに走り出した。 「ナギ、ごめん。嫌なこと言って。本当にごめん。あ、あのナギ…俺が悪かったから…」 修斗が謝りながら俺の横にぴったりとついてくる。 俺の足では修斗を振り切るなんて無理だが1秒でも傍にいたくなかった。 駅に着くとドアの閉まりかけた電車に急いで飛び乗った。 電車のドアをどんどんと叩く音が聞こえるが、俺は背中を向けたまま他人の振りをする。 修斗が何か言っているけど、そんなの知るもんか!! 電車が走り出して すぐにスマホがガンガン鳴り始める。 ディスプレイを見ると「辻 修斗」の文字が表示されているから、留守電モードに切り替わるまで放置した。 またすぐにスマホが鳴り出すと言うことを繰り返すこと数回 家に帰るまで2時間ずっと鳴り続けるのは、他の乗客に迷惑になる。 俺はスマホの電源を落とし、窓の外に流れては消えていく夜景を睨みつけた。

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