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第32話

 「俺は、おかしいのか」  千晶に再び突きつけられたのは聞きたくないことばかり。  “少年愛者の変態”  -なぜそんなことばかり言う。違う、俺はそんなんじゃない。そんなんじゃ...  それならどうして、幼い誠太に手を出した。  どうして、昔のハメ撮りの動画を見て興奮した。  どうして、こんなに焦っている。  「ちが、う...違う違う、どうして俺がおかしいみたいな言い方をされなきゃいけないんだ」  終わらない自問自答。事実から目を背けている限りみえない答えを探しては胸を締め付けた。  -シャワーを浴びて少し冷静になろう。  今更になって半裸という自身の滑稽な格好に気がつき、春臣は気分転換にシャワーを浴びることにした。  部屋に備え付けられているシャワー室はトイレと一体型になっており簡易的なものだが、使い勝手は良かった。  服を脱ぎ、温かな湯を全身に浴びればいくらか気持ちは落ち着き冷静さを取り戻していく。  -こんなくだらないことで悩んでる暇はないじゃないか。今大事なのは千晶との関係性だ。この撮影期間中、きっと今日みたいな脅迫行為は続く...自分はそれに耐えられるだろうか。  「いや、耐えなきゃダメなんだ」  そうじゃなきゃ、全てが水の泡だ。  増え続ける汚点。ここまできたら最早反抗など無駄な足掻きであった。  ただひたすらに千晶たちに従順であること、それだけが皮肉なことに唯一の救いに繋がるのだから。  -そうだ、役になりきればいい。これは一つの作品だ、もちろん主役は自分自身。主人公は苦難に立ち向かいながらも輝かしい未来を獲得するんだ。  演じれば、辛くない。  この現実も、辛くない。  これはあくまでも作品だと思えばいいんだから。  辛く、ない...はずなんだ。  「...助けて、京太」  しかし、気持ちとは裏腹に震える唇から出るのは蚊の消え入るような声であった。

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