1 / 234

1.最悪の日?

ー 今日は朝からついてなかったな… 和真(かずま)はスローモーションのようにゆっくりと グルグル回る世界を見ながら、やけに冷静に ぼんやりと朝の出来事を思い出していた。 たまには飲みに行こうぜ!と 学生の頃から密かに思い続けている友人を いつものように友達として誘ったら、あっさり断られ あげくに恋人ができたと上機嫌で知らされた。 いつかこんな日がくるのは覚悟してたけど…。 ガッシャーンと大きな音がすぐ近くで聞こえて ほぼ同時に車のブレーキ音が夜の静かな空に響く ー …今日は? いや違う 今日だけじゃない この数ヶ月ずっとだ!良いことなんて 思い出せないほど、悪いことばかりおこってる! 一度厄払いでも行った方がいいな…。 今の状況とまったく関係ない事を 夢でも見てるようにぼんやり考えていたのは 実際は ほんの数秒だっただろう。 和真の体は、12月の空の下の 冷たいアスファルトに転がって 乗っていた原付バイクも派手な音を響かせて倒れ 数メートル滑って止まった。 後方では黒塗りの高そうな国産車がゆっくり 道路の端に停車する。 すぐに あわてた様子の運転手が降りてくる 「だ、大丈夫ですか!?」 ー 大丈夫な訳ないだろ 後ろからおもいっきりぶつけられてスッ転んで あちこち痛い!どっかから大量出血とか バキバキに骨折とか! 絶対してる!…ような気がしたけれど… ?…意外と大したことないかも…? 自分の体を確認するように和真はゆっくりと 上半身を起こして肘や膝を見る 所々 服は破れていたけれど少し擦りむいた程度で 大きな怪我は無さそうだ。 念のため肩や首をそっと動かしてみる ー …うん 多分 骨も折れてない! そう思ったら少しずつ頭が冷静になってきて ぶつけてきた相手に意識が向いた。 運転手は真っ青な顔で、小走りでかけてきた。 「大丈夫ですか? すみませんよく見てなくてっ」 道路に座りこんだままの和真をオロオロ見下ろす。 和真は、無言で相手を 睨み付けた。 運転手は清潔感のある上品なスーツにに身をつつんだ 20代後半に見える青年だった。

ともだちにシェアしよう!