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…
家に戻ると、家の中はシンと静まり帰っていた。
玄関には和真のスニーカー。
留守中に居なくなってしまうかも…
そんな心配も少なからずあっただけにホッとした。
買ってきた荷物を玄関に置いて室内に入った。
ジャケットを脱いで手を洗い、そっと和真の
籠った部屋に近づいて、中の様子に聞き耳をたてた。
静かで物音ひとつしない…。
一度深呼吸をしてから、遠慮がちにノックしてみる。
少し待っても返事がないので意を決して、ドアを少し
開けて中を覗いた。
部屋の中は、ほのかに和真の香りが漂っている。
すぐには姿が見つからない。ベッドに目をやると
布団が盛り上がっている。
ー 寝ている…のか?
柊生はそっと部屋に足を踏み入れた。
ベッドを覗くと、羽毛にくるまってスースーと
小さな寝息をたてて眠る和真が見えた。
ー 良かった落ち着いてる
子供のように眠る姿をひとしきり眺めて
柊生はまた 静かに部屋を出た。
時計を見るともう昼時はすぎていたので
先ほど買ってきた物で、軽い昼食を済ませて
自分の部屋に戻り、自宅でできる仕事をはじめた。
1時間ほど没頭して、少し休憩しようとリビングに戻り
コーヒーを入れていたらガラッと音がして、和真が寝ぼけた顔で出てきた。
「おはよう」
そう声をかけると、和真はペコリと頭だけ下げた。
「いや、スゴい寝癖だな」
そう言って、何事もなかったように振る舞う。
和真は頭をなで回してから、洗面所借ります、と言って
リビングを出ていった。
コーヒーを飲みながら新聞を見ていたら、スッカリ
目を覚ました和真が帰って来た。
「何か飲む?」
「水もらって 良いですか?」
柊生はペットボトルを冷蔵庫から出して
和真に手渡した。
和真は水をグビグビ飲んでから、フーとため息を
ついて、先程の席に座った。
「顔色悪いな」
柊生が心配そうに呟く
「多分 副作用です。気持ち悪くて」
和真は目を会わせずにヘラっと笑って言った。
「さっき…ヤバかったですね」
「…ヤバかったな」
そう言って、二人で笑ってしまう
笑えて良かった。
気まずくならなくて良かった。
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