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第9話 闇社会のリーダー

 ダニスは、自分の現在あるべき場所、社会の裏側の拠点へ帰ってきて、一息付きたい所だったがそうもいかなかった。  自分がいつでも逃れるようにしておけと、出した指示に疑問を持ってる輩は多いだろうと、それぞれ担当区域でまとめ上げてる一部の人数が広い部屋に集まっていた。ダニスは部屋に入ると、奥にあるソファーへと座り、タバコを取り出すとサングラスをかけた男のボーンが火を付けた。  煙を一度吸って吐いてから、周りを見渡した。 「で、準備は進んでるか?」  周りのあちこちに其々が座って待機していた、明らかに表社会ではない男達がうなづきつつも怪訝な顔をしていた。 「言われた通り、各々足取りを消す準備は進めてますが……全員に……とは、どういう事か説明してもらえなきゃ納得いきませんぜ」  1人の男がそう返すのに周りもそれに同意らしく、ダニスの返答を待っている様子だった。 「お前らも外の騒がしい状況は、分かっているな?」  周り全員がうなづいた。  あれだけ兵が動いているのは珍しい事だけに全員把握してる事を確認してからダニスは続ける。 「……ティムに動いてらもらったが、王が病気で倒れたらしい。……にしてはきな臭い。」 「それは、つまり誰かが毒を持ったか、暗殺しかけたって事ですかい?」  周りの1人が投げかけたのに、ダニスはいい線をいっていると口の端を上げた。 「悪くはないな……あくまで仮説だが、暗殺されたが正解だろうな。それも、足取りを掴まれたらまずい……国の上層部の貴族階級だろう。病気で倒れたのと兵の動きに結びつきがない。数日後、口封じの死体が上がったら、確定だ。」 「……それで、何で俺らにいつでも逃げられるようにしとけと??」  周囲の男達は、ダニスの仮説に息を呑んだ。その話の通りなら、王は既に死んでいる事になる。しかし、それと逃げる準備の必要性が繋がらない。  ダニスは、ふっと静かに笑った。 「どうやらこの国を好きに動かしたい奴がいるらしいが、こちら側の存在を忘れているらしい。簡単に懐柔できると思われてるならその鼻へし折ってやろうと思うがどうだ?」  ダニスの言葉に全員が一瞬静まり返った。闇社会には闇社会のルールがあり、其々にこちら側で生きているプライドがある。こちら側の人間にとっては土足で踏み潰されるという事は、恥を掻くのと同じだ。  そして、直ぐに全員が鼓舞する様に笑いや周囲の背を叩いた。 「その言葉を待ってましたぜ!ここにいるヤツらはアンタだからついてきたんだ。何の文句もねぇ!なぁ皆ぁ!?」 「おおー!!」  それに続いて男達の賛同した低い声が響いた。 「頼りにしてるぞ。……当面は先に口封じされる可能性が高い奴を探し出せ。既に死んでる可能性もあるが、この状況下でこの街から出れる可能性なら俺達の方が詳しい。」 「はい、潜伏先と逃亡先に人をやります」 「相手も慎重なはずだ…….無理はしなくていい。常に足取りを掴ませないようにはしておけ。」    男達はへい!っと返事すると1人1人と部屋から出て行った。全員が出て行きダニスは息をついてタバコを吸い直し、ソファー体を預けた。  側にいたボーンも、支度してきますと出て行く。 「で、本当の所はどうなんスか??オレにはあの少年が切り札に見えるんですけどね?」  と、突然直ぐ後ろのソファーの影からひょこっとティムが現れるとダニスの顔を覗いた。  虚を突かれて珍しくダニスは一瞬驚いて口からタバコを落としかけ手でタバコを持ち直した。 「……全くお前は……。いつから気付いてた?」   ワザとティムがそうした事に、ダニスは呆れ気味にため息をついた。ティムは少しもったいつけながら悪意無さそうにニコリと笑う。 「そりゃぁ……もうあんな人畜無害そうな子をあんな雑な理由で連れて歩いた時点で。」  ティムがアランを認識したのが倉庫を出た後だった、つまりは最初っからという事だ。このティムという青年には、人に混ざり込んだり、聞き込む才能があるため、偵察や諜報活動を担ってもらっている。  少しの違和感から探りを入れるくらいには頭もいい。普段しない行動から察しがついたのだろう。 「なんで、使わないんです?」 「切り札は最後まで置いておくもんだ。」   へー…と言いながらティムは納得してない顔をしている。とういよりは、興味深そうな顔をしていて、ダニスの反応を逐一窺ってるように見えた。 「だったら尚のことダニスさんらしくないですね。いつもなら、逃げられなくするか逃げる事なんて忘れさせるでしょ?」 「……子ども相手にそんな気がおこるか……。」   ダニスは、呆れ気味に返す。それが意外だったのか、ティムは少し呆けた顔をした。 「え、じゃあ可哀想な事をしたっすね………盛っちゃいました。」 「………は?」  ティムの信じられない言葉に思わずダニスは低い声で聞き返す。ティムを見ると、あははは、と苦い笑いしていた。  どうやら、この阿保は要らない事をしでかしてくれたらしい。 「必要かなって……ね……?」   ダニスは、ガチャリと銃のストッパーを外してティムの額に当たるくらいの距離で銃口を向けた。 「……次やったらその頭ぶっ飛ばすがいいか?」  いつもより、低いトーンで静かに言葉にするダニスの表情は迷惑極まりないと眉間にシワを寄せて、それでいて冷たい眼光をティムへ向ける。  ティムは、肝が冷え震え上がってはダニスの反応に言葉を無くす。 「すいやせん……」 「……分かったなら、お前ははやく仕事をしろ」  ティムは、はぃいい!!と慌てるよう走って部屋を出て行った。慌てて出て行くティムの姿を見送ってから、大きくため息をついてタバコの火を灰皿に押し付けて消した。

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