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第5話
アヤの脳内がとうとう吐精欲に支配されそうになったその時、来客を告げるインターホンが鳴った。
「リョウ、出て」
「ほっといたらええやろ」
「あれ、たぶん、今夜一緒に食べようって言ってたカニ」
「……もう」
カニと聞けば放っておくわけにも、とリョウは指の動きを止めて立ち上がった。アヤはただただこのタイミングでやってきた配送業者に感謝した。
「んもう、カニちゃうかったで……あら」
荷物を受け取り部屋に戻ってきたリョウが薄笑いをうかべたまま固まった。
「そう、じゃもう一個のほうだったんだ」
同じく薄笑いをうかべたアヤは、すっかり元のサイズに戻っていた。リョウからダンボールを奪い取ると早速開ける。
「いろいろタイミングが絶妙だったな」
箱から取り出したのは、黒くて凸凹した長細いもの。
「えっと、あの、俺も朝メシ……」
くるりと背を向けようとするリョウの首根っこをアヤが引っ掴んだ。
「リョウのおかげで俺の方は準備万端になったから、次はリョウの準備しようか、これで」
まるで業務用のような怪しいほどに完成された微笑、の手に握られた黒光りのする怪しい物体、の下部に未だ勢い衰えずそそり立つ屹立、を交互に見比べ、リョウは決して暑くも無い部屋で額に汗を滲ませた。
「覚えてろって、言ったよな?」
【おわり】
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