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第六章・15
「借り人競走?」
あぁ、今年から始まった競技だから知らないよね、と委員長は説明を始めた。
「借り物競走は物を借りてきて走るけど、借り人競走は人を連れてきて走るんだ。メガネをかけた人、とか、帽子を被った人、とか」
「なるほど」
確かにこれなら偶発性があって、ただ走るより面白いだろう。
選んだ人間の足が遅ければ、たとえ自分が俊足であっても1位をとれるとは限らない。
「ゴールの50メートル手前に審判がいてさ、彼が認めればそのまま走れるんだ。駄目なら、もう一度探しなおし。自分がイケメンだと思って連れてきた人間でも、審判が違うと言えばダメなわけ」
「結構シビアだな」
「まぁ、滅多にそういうことはないよ」
結局弦は100メートル徒競走のほかは、障害物競走、借り人競走に出ることとなり、棒倒しや騎馬戦に出る紅組の人間を安堵させた。
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