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第18話

      昨日の昼休みは石崎のせいで散々だった。 嫌がらせ(もしくは罰ゲーム?)とはいえ、教師にキスしてくるとは…… 生徒とキスするなんて…… キス… 急に中島とのキスシーンが頭に浮かぶ。 ぼっ❤(//>///<///) バカ!なんで中島の顔が浮かんでくるんだっっ!! 頭の中の映像をバタバタと手で叩いて消す。 やっと中島と普通に接する様になったのに、こんなこと考えてたら、またギクシャクしてしまうじゃないか! 平常心だ!平常心!! ノックするとともにドアが開いた。 「失礼します。」 今日の昼休みはいつも通りの時間に中島が来た。 俺の傍に座ると天使のように微笑んで、たわいのない話を始める。 「先生、昨日TVでテーマパークの特集をやっていたんですけど見ましたか?」 「いや、見ていない。」 「とっても面白かったんですよ。今日コンビニでテーマパーク特集の本買っちゃいました。」 中島はコンビニの袋から本を出した。 「ここのテーマパークです。新しくアトラクションが入ったんですけど俺はそっちよりもこっちがいいなって。そうだ、先生、最近テーマパークでどこか行った所ありますか?好きなところとか…」 本を広げて俺によく見せる為に中島は肩をぴったりとくっつけて気にせずに夢中で話している。 シトラスの香りと肩から伝わる中島の体温で心が落ち着かない。 「て、テーマパーク 昔は好きだったけどな…」 毅がジェットコースター系の乗り物が大嫌いでその手の場所には全く行かなくなったんだっけ。 「ここ最近全然どこにも行ってないからわからないな。どこのテーマパークが一番面白いんだろうなぁ。中島のお薦めはあるか?」 「混んでいますが、やっぱり…俺はここが好きです。」 中島の好きという言葉に心臓を掴まれた気がした。 ドキドキが止まらない。 微笑んでいる中島の美しい瞳に吸い込まれそう 優しく香るシトラスがあの日の事を思い出させる。 俺は あの日 この唇に 触れたんだ 廊下をバタバタと走る大きな足音が近づいてきて ノックもなしに勢いよくドアがバンと開く。 物凄い音に我に返った。 中島の唇に触れそうなほど接近していて慌てて離れた。 今、何をしようとしていた? 昨日の石崎のキスで理性のタガが外れているのか? 「…先生?…」 俺の不可解な行動に中島は不思議そうだった。 「拓海~!!またここかよ!探したんだぞ!」 ズカズカ入って来た足音の主は井上翔だった。 「………何しに来たんだよ。」 危なかった。 井上が来てくれて良かった。 教育者だろう! しっかりしろ俺! 「何しにって……」 「お前を呼びに来たんだよ。」 井上の言葉を遮った声の主は戸口に立っていた。! 「石崎。」 井上が中島の腕を引っ張って連れて行こうとする。 「んもう!! すぐに5時間目が始まるし! 次、体育だろチャイムが鳴る前に着替えてグラウンドに行かないと清水先生に怒られるじゃないか。」 「そんなに急がなくても間に合うのに……せっかちだな。」 「いやいや、お前のせいで これ以上被害をこうむりたくないんだよ。」 被害? 「被害? 俺、お前には何もしてないと思うけど」 「そー思ってんのはお前だけ、俺は、すっげー……」 二人の険悪な雰囲気に井上が割って入る。 「もー、お前らごちゃごちゃうるさいっっ!! 早く行くぞ!! 俺、校庭十周走るの嫌だからな!」 なるほど遅刻したら連帯責任で走らされるのか。 「……失礼しま……おい、翔! 引っ張んなよ!」 二人の姿が消えてから戸口にいた石崎が中に入ってきた。 昨日の今日だぞ、俺も馬鹿じゃない。 さすがに距離を取って身構える。 俺の目の前まで来ると石崎は深々と頭を下げた。 「………昨日はすみませんでした。」 昨日の態度とはうってかわって大人しい態度を取っているが安心できない。 「…謝るくらいないらあんなことしなければいいだろう……」 「すみません。アイツのせいで頭に血が上って…本当にすみませんでした。」 「アイツ?」 「でもっ、俺が昨日言っ……」 顔を上げて俺の腕に触れようとしたとき、石崎の両腕は井上と中島にがっしりと捕まれた。 「え?」 「お前何やってんの?! 俺、走りたくないだけど!」 「……行くぞ…」 「わ、ちょっ、待て話が………話があるんだって!」 後ろ向きのまま、ズルズルと引きずられていく。 「いってらっしゃい」 手を振って見送ると3人は、あっという間に見えなくなった。  

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