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第1話

 私は江口 濡田(えぐち ぬれた)というペンネームで活動しているどこにでもいる官能小説家である。そして……  「江口先生……その……そろそろ締め切りなんですけど……現行の状況はどうでしょうか……」  現在、絶賛スランプ中である。  「よく来てくれたね、散らかっているとは思うが適当にくつろいでくれ、今ちょうどコーヒーを入れていたんだ。君はブラックでよかったかな」  「はい、ありがとうございます。それで原稿の方は……」  「まぁ、待ちたまえ、君が仕事熱心なのは大いに結構だが物事には順番がある。そう焦るものではないよ。あぁそうだこの間おいしいシュークリームを見つけてね、よかったら食べてみないか」  「あぁいえ、甘いものは苦手で……それより」  「あぁそうか甘いものが苦手だったら仕方がない!ではこの煎餅なんてどうかなこの間旅行に行った時に旅館で出されたんだがこれがまたおいしくてねぇ!つい買ってしまったんだ」  「いえ結構です……あの江口先生、げんk」  「おやそうかい!!それは残念だな!!ではこっちの」  「江口先生!!いい加減にしてくださいよ!!いったい何時になったら原稿が仕上がるんですか!!明日が締め切りなんですよ!!」  「……ないんだ」  「え?」  「書けないんだ!!筆が一文字たりとも動かないんだ!!」  「そ、そんなこと言われましても……もうこれ以上締め切りを伸ばすことはできないんですよ……」  「分かっているよ……君が私のために頑張って締め切りを伸ばしてくれたことは。でも、書けないものは書けないんだ、どうしようもないんだよ~……」  「こ、困りましたね……そのスランプになった原因とかないんですか」  「原因は……わからない……でも最近湧いてこないんだ……」  「何がです?」  「性欲が」  「うぇ!?」  「何を見ても反応しないんだ!!風俗に行っても!!お気に入りのAV女優を見ても!!気分を変えて新しいジャンルを見ても!!ノーマルなものもアブノーマルなものも見ても全然息子が反応しないんだ!!昔買ったAVを見ても『なつかしいなぁ』というホームビデオを見ているときと同じ感想しか出てこないんだ!!!!」  「それは重症ですね」  「そうなんだ……私は今まで溢れるリビドーを糧に小説を書いてきたんだ……それなのにリビドーがわいてこない体になってしまったら私は……もう……書くことができないんだ……」  「江口先生……そんな大変なこと、どうしてもっと早くに相談してくれなかったんですか!」  「……ぇ?」  「いいですか!編集者は作家のために締め切りを伸ばして原稿を受け取るだけじゃないんですよ!作家さんが心行くまで執筆できるようにサポートし、悩みがあるなら解決策を見つける……それが編集者の仕事なんです!」  「編集者の……仕事……」  「そうです!!だから先生!!先生の悩みを解決できるように俺も協力します!!」  「……いいのかい……こんな私に協力してもらっても……」  「もちろんですよ!!俺、『先生のために一肌脱ぎます!!』」  「それは本当かい!!」  「はい!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  「あの……江口先生?」  「何だね」  「これは……どういう状況ですか」  「これとは」  「いえ、なぜ俺は手足を縛られているんですか……」  「いやだって一肌脱いでくれると言ったではないか」  「言いましたけど!!それとこれとは話が違わないですか!!なぜ先生のEDを治すために俺が縛られなくちゃいけないんですか!!」  「EDではない!!私はまだ現役だ!!ただ今はリビドーが湧いてこないだけなんだ!!」  「だからそれをEDっていうんですよ!世間一般では!大体こんなことしてリビドーが湧いてくるんですか!?俺180超えてる男ですよ!!」  「それはやってみなくては分からないだろう。大体君が言ったではないか『一肌脱ぐ』と、それに君は私が今まで何本のAVを見てきたと思っている。君の身体を女体だと想像することくらい朝飯前なのだよ」  「だったら俺じゃなくてもいいじゃないですか!!それこそ風俗にでも行ってくださいよ!!」  「いやそれでは駄目なのだ!!肝心なのはプロの演技ではない素の反応なのだよ!!」  「いやでも……」  「ええい往生際が悪い!!男なら自分の発言に責任を持って腹を括らんか!!」  「うっ……はぁ分かりました、腹を括りましょう……でもこれで治らなくても文句言わないでくださいよ……」  「分かっている、物は試しだ。では始めるぞ」  「うぅ……わかりました……」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  うーむ。どうしたものか。  勢いで担当を縛ってしまったが、やはり縛るだけではリビドーが湧いてこない。  よし、とりあえず  「ワイシャツを脱がせるぞ」  「ええ!?あぁ……はい……」  ベルトを外し、ワイシャツのボタンを一つ一つ外していく。するとへそ下から徐々に色気を全く感じない安物の白い綿質のインナーが露わになってきた。  「うーむ、ザ・独身男性という感じだな」  「実際に独身なんだから当たり前ですよ!」  飽きれる担当を何気なくインナーをめくると、見事な6パックが現れた。  「君、意外と筋骨隆々なのだな」  「いえ、まぁ……学生時代はバスケやってましたし、それに最近筋トレにはまっていまして」  「ふーむ、しかし見事な腹筋だな。触ってもよいだろうか」  「……はい、どうぞ……」  ごつごつとした腹筋に手のひらを乗せると、女性にはないゴツゴツとした感触が広がる。  「……なんというか、昔買っていた亀を思い出すな」   小学生の頃、河原で偶然見つけた亀を親に無理言って飼わせてもらってたな。我慢できなかった母親に捨てられて以来今生の別れとなっていまったが、かめ吉は元気にやっているだろうか。そういえばかめ吉の捨てられた日のスッポン鍋は美味しかったな……  「亀ってちょっとひどくないですか……ッ!」  腹筋を触るどさくさに紛れて胸の突起をさりげなく触ってみると腹筋がビクンッと跳ねた。  「ここが良いのか?」  「いえ……ちょっとビックリした程度でッ!」  もう一度赤ちゃんの頭を撫でるみたいに優しく触るとさっきよりも大きい反応があった。  「本当かね?」  「ほんトッ!でスッ!!」  明らかに敏感に私の愛撫を受けているのにそれを必死に耐えるその様に、私の中に加虐心と情熱が入り混じった赤黒い感情がフツフツと湧いてきた。  間違いない!久しく感じるこれは正しくリビドー!! 「……ッ!先生ッ!江口先ッセイ!!もう終わりにしましょう!こんな事しても先生のリビドーは湧いてきませんって!!」  顔を真っ赤にしながら必死に訴える姿にリビドーが一気に爆発した  「何を言っているんだ、まだまだこれからじゃないか」  「そんな……ッん!!!!!」  乳首を抓るように引っ張り上げると一層顔を赤くして顔を歪めた。  先程までの愛撫よりも反応がいい……  「君、ひょっとしてマゾヒストかね?」  「違いますッ!」  「そんなこと言って、君のここは反応しているじゃないか」  そう言って、先ほどから少し大きくなりかけている彼の性器に指を這わすと快楽を必死に否定しようと艶かしく腰を動かすが、彼の気持ちとは裏腹にどんどん性器の形がはっきりと、そして猛々しくなっていった。  「ハハハ、女性とは違って男はこういう時分かりやすくていいな。よしじゃもう少し強く引っ張るぞ」  「先生!少し待ってくださ……んぐッーーーー!!!!」  「ほら!見たまえ!!こんなに強く引っ張っているのに君の下着にどんどんとシミができていくではないか!!やはり君はマゾヒストなのだよ!!」  「んあぁぁ!先生ッ!だめッ!!これ以上は!!」  「何がダメだというのだね!?君の身体はこんなにも喜んでいるじゃないか!!腹筋をビクつかせながら浅ましく勃起をし、あまつさえ小便を漏らした子供のように下着を濡らしているではないか!!ほら言いたまえ!!乳首をいじめられて感じていますと!!」  「そんなッの!!言えまセッ!!!」  「言うまで終わらないぞ!!ッほら言いたまえ!!私は乳首をいじめられて感じてしまうマゾヒストですと!!」  「……ッ!!ゎたしゎ……」  「声が小さいぞッ!!」  「んああああああ!!!!ッわた、私ハッ!!乳首をッんんんん!!乳首をいじめられて感じてしまう!!変態です!!」  「やはりそうだったか!!変態め!!ほらッ!これが気持ちいいのか!!?」  「ッッッッんんん!!はいッ!!はい!!!気持ちいいです」  「そうか!!では最後に思い切り感じろ!!」  「んんんんんッッッッ!!ダメダメッ!!乳首ダメ!!取れちゃうううう!!!」  最後に思い切り爪をたて引っ張ると魚のように身体をビクつかせた。  「フーッフーッ、大丈夫かい?すまない、私とした事が熱くなってしまったようだ」  彼からの返事は返ってこず、ようやく解放された彼の乳首は赤々と腫れ上がっており、彼自身は顔を乳首の様に赤くし、果てた女のようにぐったりとしていた。  これだ!素晴らしい!!!私の中に渦巻いているリビドーから文章がポロポロと溢れてくる!! 早速執筆しなければ!!!  しかし、ノートPCを開き、執筆を始めると程なく、スィスィとスーツ特有の衣擦れ音が然りに聞こえ始めた。  「あ……あの、先生……」  「今は執筆中だ、静かにしたまえ」  「でしたら、腕を解いて下さい、あと出来ればトイレを拝借させていただけると助かるのですが……」  「それはできない相談だ、君の拘束を解いたらまた書けなくなってしまうかもしれん」  「そんな……でも……その……」  「ええい!煩い!!編集の癖に作家の執筆の邪魔をするとは!!少し躾が必要みたいだな!」  私はガムテープで彼の口を塞ぐと近くにあったピンクの卵形の玩具を彼の乳首に取り付けた  「んーー!!んん!!んーーん!?(何で近くにローターなんてあるんですか!?)」  「それは君、執筆のために決まっているだろう」  「んんーんんんんー!?(何で言ってる事が分かるんですか!?)」  「このローターには少し細工をしていてね、私のノートPCと連動させてあってね、ホラこうしてキーボードを叩くと」  「んんー!?」  「君に取り付けたローターが動くという仕組みになっている、私の執筆の邪魔をした罰だ、精々玩具で遊んでいなさい」  「んん!?(そんな!?)」  「ちなみに、エンターを押している間だけ最大出力になる」  「んんんんん!!(本当に無駄な技術ですね!!)」  彼を無視して執筆作業を再開すると、彼の乳首に取り付けられたローターが微動し始めた。  その度に彼の塞がれた口からは甘い悲鳴が聞こえてきた  部屋に響く、打鍵音、バイブ音、喘ぎ声  何と理想の執筆環境だろう……  更にリビドーが湧き上がった私は爆発し、そのまま2時間ぶっ通しで執筆し、なんとか原稿を仕上げる事が出来た。  途中から集中していたせいか、彼の事をすっかり忘れてしまい、後ろにいる彼の姿を確認すると、元々赤かった顔を更に赤くし、涙を流しながら苦しそうに息をしていた。何回か、果てたみたいで、ズボンには漏らしたみたいに大きなシミが出来ていた。  ……少しやり過ぎてしまったみたいだ。  拘束を解いた瞬間暴れだすのではと恐る恐る、彼の拘束を解くと彼はダランとしたまま動かなかった  気絶してしまったのかと思い彼を揺すり起こそうとするその瞬間、腕を掴まれ、そのまま凄い力で押し倒された  不味い!こんなにでかい男に殴られたら私なんてひとたまりもないぞ!!  「……先生」  「いや!待って欲しい!!私の話を聞いてくれ!!執筆のためとはいえ君を好き勝手した事は謝る!!だがしかし暴力は無しにしようじゃないか!!お互いに冷静になって改めて話を……」  浮気を誤魔化すクズ男の様に必死に私が言い訳していると彼はおもむろに私の手を自分の赤々と大きくなった熱々の乳首に当ててきた  「んっ……、先生……もっと俺をいじめて下さい……」  惚けた様に懇願してくる彼を見て、私は思わず生唾を飲み込み、またも自分のリビドーが爆発するのを感じた。  暫くはスランプになる事はないだろう。そう確信しつつ、私は彼の乳首を摘んだ

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