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第1話

 日が陰り、薄暗くなってきた。  眼でたどっていた文字が読みづらくなってきた事で、透はそれに気づいた。 「美咲、遅いな」  風紀委員の望月 透(もちづき とおる)は、がらんとした生徒会室で林 美咲(はやし みさき)を待っていた。  読んでいたのは、美咲が貸してくれた恋愛小説。  こんな恋ができたらいいね、と無邪気な年下の彼女が貸してくれた本だ。  その本も、暗くて字が見えにくくなってきた。 「電気、点けようかな」  透が立ち上がったところで、ドアが開いた。

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