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第33話 Side.Yamato 挑戦的な従姉妹

 学校での休み時間。  俺は武義と話をしながら、窓際で友人たちと談笑する兄の伊央利をちらりと盗み見る。  ……いつ見ても、綺麗でかっこよくて、そこらのアイドルやイケメン俳優も目じゃないくらい魅力的な伊央利。  整いすぎているせいで、どこか冷たさを感じさせる伊央利が豹変するときを知っている。……それはセックスのとき。伊央利は余裕なく俺を求めて来る。掠れる声と荒い息遣い……やめてと言っても聞いてくれない意地悪で甘い表情……。  ぼんやりと行為の最中の伊央利のことを考えていると、当の伊央利が俺の視線に気づいたのか、こちらを見た。  一瞬、フッと形のいい唇を微笑ませる伊央利。  その笑顔はいつも俺を焦らせて意地悪するときのそれで。 「……何、真っ赤になってるんだ? 大和」  前の席に座っている武義が不思議そうに聞いて来る。 「えっ? な、なんでもない。真っ赤になんかなってないよ」  思わず声が裏返ってしまう。  俺を真っ赤にさせた原因の伊央利はもう元のクールな笑顔に戻っている。  なんとなく悔しいような恥ずかしいような複雑な気持ちを持て余しつつ、俺は不思議そうにこちらを見ている武義に話しかけた。 「そ、それより今日、買いたい本があるから駅前のショッピングモールにつき合ってくれる?」 「いいよ」  親友は快く承知してくれた。  余り思い出したくないけど、さやかが一方的に伊央利にキスをするシーンを見てしまってから一週間以上が経っていた。  あれから彼女が姿を現すことはなく、平和な日々が続いている。  もう二度とさやかの顔は見たくない。  そう強く願ってたけど、甘かったみたいだ。  放課後、俺と武義が校門を出ると、そこに制服姿のさやかが立っていたのだ。  俺たちの学校の制服は男女ともにブレザーだが、さやかの制服はセーラー服で、その上悔しいけど美人なので、かなり目立つ。  武義なんて隣でポカンと口を開けて彼女に見惚れている。 「大和くん、ちょっと話があるんだけど」 「……俺にはありません」 「あら。そんなことないでしょう? 伊央利のことなんだけど。大和くんが嫌なら伊央利に会いに行くけどそれでもいいかしら?」  俺は自分の肩がビクッと跳ねるのを感じた。  当の伊央利はというと俺よりも一歩先に学校を出ている。  これ以上さやかといるのは一秒だって嫌だったけど、伊央利が彼女と会うのはもっと嫌だったので、さやかに見惚れる武義をあとにして、彼女とともに歩き出した。

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