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7※
熱く滑った舌が、俺の口蓋を柔らかに犯す。
俺も拙く真似して、和彦の上顎や口蓋をちろちろと舐めてみた。
ざらざらして、つるつるして、舌先の感覚がみるみる変わっていく新しい快感に心がときめいた。
唾液の交わる音が心地良い。
鼻で呼吸する事を体で覚え込まされた俺は、このままいくらでもキスしていられる。 そう思いながら蠢く舌を追って瞳を閉じた。
寝室は無音で、灯りも付けていないのに瞳を閉じていても明るさで満ちていて、カーテンの隙間から月が覗いていても何にも恥ずかしくなかった。
もっと求めていいよ。 好きにしていい。
俺は絶対に和彦を裏切らない。 傷付けたりしない。
だから謝るな。
切なくてたまんなくなるから、好きになってごめんなさいなんて、二度と言うなよ──。
俺と恋する前に起こったすべてはもう、忘れてしまおうよ。
優しくなくていい。 俺にだけ優しければ、みんなに優しくする必要なんてない。
言ってる事が支離滅裂だと和彦に苦笑されちゃうかもしれないけど、俺は認めたくなかった嫉妬を体感した事でさらに「恋」を自覚してしまった。
おかしな両親と接触した事で、和彦のバックグラウンドとこれからが顕著になった。
隣に居ることで、手を繋いでいることで、和彦の精神が保たれるのなら、それだけで俺は存在意義がある。
───嬉しかったのかもしれない。
ふわふわと掴み切れなかった想いが心に染み入って形となり、恋した人の隣に居る意味を見出せた事が……。
「七海さん……っ、……いいの……? だって……」
「いい、……っ……したい……」
「……七海さん……」
和彦の首に腕を絡ませて強請ってしまうくらい、俺は積極的に舌を差し出して甘えていた。
それなのに、少し強引に離れていった和彦をムッとして見上げる。
どちらのものとも分からない唾液を俺の唇から舐め取った和彦は、膨れた俺を遠慮がちに抱き上げてベッドに運んでくれた。
明日は講義も仕事もある。 それでもいいの?と、ベッドに横たえてくれた和彦の瞳が、欲情した俺には殊勝過ぎるくらい揺れていた。
戸惑う和彦のカッターシャツのボタンを、一つ一つ外していく。 それだけなのにあり得ないくらい時間がかかった。
「あ、あの……僕自分で……」
「……やらせて!」
「……はい。 ……嬉しいけど……七海さんどうしちゃったの……?」
対面しててやりにくいからもたついてるってわけじゃない。
ドキドキし過ぎて指先が震えるんだ。
意識してないと、息も絶え絶えになりそうなほど緊張した。
服を脱がせる。 その行為だけでクラクラと目眩を覚えるほど興奮した。
「え、っ、あっ……待ってください! 七海さん……っ?」
「なんだよ」
「ど、どうしたんですか、本当に! そこは……っ」
「……舐めていい?」
顕になった引き締まった上半身をじわっと撫でたあと、和彦のベルトを外しにかかった俺を制するのは困惑しきりな瞳だ。
当然だよな。
今まで言えなかった告白をあっさりやっちゃったかと思えば、下手するとドン引きされてしまうくらいにいきなり盛って。
……止まらないんだからしょうがないじゃん。
愛おしい。 愛おしい。 愛おしい。愛おしい。
胸がいっぱいになるって、こういう事を言うんだ。
「ダメ、なんて言うはずないでしょ……」
「……うん。 へたくそだけど許して」
「上手だったら暴走案件なので、構いません。 ……でも無理はしないで」
和彦らしい返しに笑みが溢れる。
やっぱりベルトを外すのもすごくモタついたけど、カチャカチャと音を立ててやっとの事で外す。 下着をずらすと、すでに猛った性器さえ愛おしくて、盛った俺を一際誘惑した。
……俺の手……冷たくないかな。
触ってもいいかな。
恐る恐る右手で反り立つ性器を握ってみると、初々しくぴくんと揺れた。
左手も添えて両手で握り、透明な先走りが光る先端を凝視する。
和彦も、興奮してるんだ……。
おあずけを食らわせた日は、これを俺の腰に押し当てて我慢ならない様子で「七海さん…」と呻く気持ちが、今分かった。
こんなの放置してたらおかしくなっちゃうよな。
僕のは大きくない、なんて言ってたそれを真に受けた俺は馬鹿だ。
他を知らないから、「嘘吐いたな!」と騒いでもデータ不足は否めない。 だけど和彦のは大きいと思う。 …少なくとも俺の倍はある。
先端に滲む先走りに誘われるまま、俺は舌で雫を舐め取ってみた。
「………………」
……美味しくはない。 むしろちょっと苦い……?
ぺろ、ぺろ、と棒付きキャンディーを舐めるみたいに舌先で先端を味わっていく。
その度に両手の中で和彦の性器がピクピクと反応して、じわりと苦い雫を溢れさせた。
「七海さん……っ、……可愛い……」
下半身が疼くほどうっとりするような低く良い声が聞こえて、ぺろぺろしながらチラと見上げてみる。
俺の頭をそっと撫でた和彦は、苦々しくも恍惚とした表情を浮かべていてキュンキュンした。
こんなにへたくそでも、和彦が喜んでくれるならもう少し味わってていいかな。
両手を下の方へずらして口を開けると、おもむろに先端を咥えた。
「…………っっ……」
和彦が息を呑んだ気配がして嬉しくなった俺は、割れ目をちろちろと舐めてみる。
握った竿の感触は固いのに、先端はぷにっとして柔らかくて、咥えた事で滲んだ雫が増えてくのもまた愛おしい。
自分のものだとこんな風に思わない。
和彦のものじゃなければ、苦い液体が美味しいなんて思えない。
見様見真似な精一杯の愛撫を、気持ちいいと感じてくれるのは……和彦しかいない。
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