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第20話 「反対色」
図書館の一番奥
日差しの差し込む窓がある場所
あまり人が来ないこの場所は、俺のお気に入りだった
「あおいー、またここに居たのか」
「……落ち着くんだよ」
本棚から顔を覗かせるこいつは、いわゆる幼馴染というやつで
ふらふらと出歩く俺を、何故かいつも探しに来る
いつだか、何でと聞いた時には、なんか探検みたいで楽しいじゃんなんて答えていたけれど
今俺が来る場所といえば、大体はこの図書館のこの場所で
面白味がないだろうに、何でまだ探しに来るんだろうかといつも思う
「……何でまた来たの」
「あおいに会いたかったから」
こいつはたまに意味が分からない事を言い出す
俺に会って何が起こるって言うんだ
得することなんてないだろうに
「……よく、分からないねお前は」
「簡単だよ?俺はあおいに会いたくて、あおいと話したくてあおいを探すんだ。好きな人に会いたくなるのは当たり前だろ?」
「……分からないな」
よく、分からない
なんでお前は、俺なんかを好きだと言うんだ
「……俺なんかの何がいいって言うんだ」
呟いた声は、静かな図書館ではよく響いて
聞こえた声に、お前が反応する
「そーだねぇ……まずは綺麗なところ。動作も話し方も、使う言葉さえもがあおいは綺麗だよね。後は静かなところ。一緒にいるとすごく落ち着くんだ」
まずい、と思った
これ以上聞いてはいけないと、思った
聞いたらきっと、
「まあ結局は、あおいがあおいだから好きなだけ。あおいの全部が好きで、その一部すらも愛しくて。そう思っちゃったから、俺はあおいを好きでいるんだよ」
自信がなくて
きらきら輝いているこいつの隣に立つ
勇気がなくて
それでも、お前がこんな俺を好きだと言ってくれるなら
「……俺もすき」
「……えっ!?」
気付かなかった?
この窓からはね、お前の姿が良く見えるんだ
俺を探してここに来てくれるのをいつも待ってたんだよ
あおい、って呼んでくれるの、いつも待ってたんだ
ここにいたの、って
「……図書館では静かにね」
「う、ごめんなさい……ほ、ほんとに?」
「……うん」
大好きですよ
お前が俺を好きと言ってくれる前から、ずっと
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