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第6話

「どうぞ。散らかってますけど」 「一戸建て。お金持ちなんだなぁ」  いえ、と秀一は否定した。 「母の家なんです。会社へは、自宅通勤で」 「そうなの」  その母も、男の所へ入りびたりで滅多に返ってこない。  だから、気兼ねなく何日でもいてください、と秀一は勧めた。 「ありがとう。秀一くんは、優しいね」  優しい、だなんて。  小学生以来の誉め言葉に、秀一は照れた。 「とにかく、食べましょう」  一か月も粗食に耐えて来た男にコンビニ弁当を譲り、秀一はカップ麺をすすった。    

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