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第47話

 「久しぶり~、宵人のお兄さん。今更こんなとこに何しに来たのぉ?」  場所は変わって人気の少ない空き教室。 朝のHRが終わるなり、綾西は俺の元へ来ると腕を掴みここまで俺を連れてきた。  もちろん俺は無抵抗だ。ちょうどこいつと2人きりになりたいと思っていたところだ。  だから抵抗する理由もなかった。  「ねぇ、ちょっとー、無視?」  あれから何一つ変わっていない。相変わらずのふざけたような笑みに、間延びした口調。  今すぐにでもそのご自慢の顔をナイフでぐちゃぐちゃにしてやりたい。  しかし、まだ今はそれをするべきではない。幕は開けたばかりだ。じっくりとこいつを苦しめていかなければ。  「なぁ、お前さ...性格も笑顔も、作るならもっとうまく作れよ」  「...は?何言ってんのぉ。頭おかしいんじゃない~?てか、俺の質問の答えになってないし」  まずは内側から。4人の中じゃこいつが一番弱点がわかりやすい。  前にあった時はわからなったが、今ならわかる。 こいつは、俺と同じように自分を作っている。  「お前は全て嘘くさい。今まで誰にも気づかれてないのかよ」  「ッ、だからぁ、意味わかんないこと言わないでよ。それより少し失礼じゃ――」  「家族絡みか?そうやって自分を作って全てから逃げてんだろ?誰も自分を分かってくれない。だけど理解されるのが怖い」  「やめて!妄想するのは勝手だけどさぁ、それを俺に押し付けるのはやめてくれない?はぁ、もう気分悪い」  強気な態度だが、焦点が定まっておらず焦っているのは明らかだった。  これ以上はヤバいと思ったのか、綾西は俺から離れ教室を後にしようとする。  「そうやってお前は逃げるんだ。自分がそんなに可愛いか」  「...ッ」  キッと俺を睨む綾西。しかし動揺を隠せないのか、ドアに伸ばしてある手は僅かに震えていた。  乱暴に閉められる扉。  酷く同様していた表情。きっと今まで誰にも触れられてこなかったのだろう。  あいつは愛に飢えている。人の好意に囲まれていないとすぐに不安になってしまう。  俺の中ではすでにわかりきってしまっている事実。  ああいう奴ほど何か突きつけられたらすぐに脆くも崩れてしまうものだ。  完璧だと思っているから自分の仮面をつけ続ける綾西。  「どれくらいそれがもつかな」  綾西が出ていた方を見て笑う。 今のお前の唯一の光、沙原 弥生に見捨てられたら、一体お前はどうなってしまうのだろうか。  大切なものをなくし、屈辱を味あわされる苦痛。それを与えられる記念すべき1人目はお前だ、綾西 泰地。

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