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第33話

「はぁ、はぁ、あぁ……」  窓の外は、夜。  月の姿は見えないが、その明るい光の加減は見て取れる。  満月に近いのだろう。  今夜の月は、赤いのだろうか。  赤い月の人狼を、愛してしまった吉乃。  まだ息の荒い吉乃の髪を、ヒトの姿に戻った健が、撫でてくれる。  穏やかな葉月さんと、荒っぽい健。  まるで、恋人が二人いるみたい。 「『葉月さん』と『健』、どっちが好き?」  そんな意地悪な質問を、健は時々吉乃に投げる。 「……どっちも大好き」  その都度、吉乃は健に抱きついていた。  バルコニーに出て二人で眺めた月は、やはり赤かった。  温かな光で、彼らを祝福していた。

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