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本音は隠したままで……(心視点)

「ねぇ、父さん」 前を向いたまま呼んでみる。 「何だ?」 「心夜さんが今何処で 何してるか知ってるの?」 二十三年間も 連絡取ってないんじゃ知らないよな。 「風の噂で 小説家になったとは聞いたんだが 本当か嘘かは知らないんだ」 小説家? 「因みにPNは?」 知ってる作家かも しれないし、取り合えず PNを聞いてみよう。 「確か、 伊宮直季だったと思う」 その作家の小説なら何冊か持ってる。 「ちょっと待ってて」 オレは自分の部屋へ急いだ。 本棚の手前の方に入ってたはずだ。 そして、伊宮直季の 小説を二 三冊 持って父さんの所に戻った 成る程、 父さんは心夜さんから 心夜さんは父さんから 名前を取ったわけか(苦笑) 「はい、これが心夜さんの 書いてる本だよ」 持って来た二・三冊の内 一冊を父さんに渡した。 「読んでみて」 オレも久々に読みたくなった。 まさか、 伊宮直季の正体が 父さんの 昔の恋人だったのは ビックリだけど 彼の書く小説はどれもオレ好みだった。 父さんに渡した一冊は 彼の小説の中でも 一番好きなやつだ。 題名は 「あなた以外愛せない」だ 所謂悲恋もので 読んでる途中で泣けて来る。 内容を思い出すと 父さんの話しと 類似してる所が多い気がする。 愛し合ってるのに別れなきゃ ならなかった主人公達は きっと父さんと心夜さんなんだろう。 そぉ思うとなんだか、 いたたまれない気持ちになる。 二人の恋の犠牲の下に オレが居るのだから…… 「父さんはさ、今でも 心夜さんのこと愛してるんでしょ?」 疑問形で 聞いてみたけど確信はあった。 「ぁぁ、母さんには 悪いが今でも心夜を愛してる」 一瞬だけ、オレね 質問に驚いてたけど ちゃんと答えてくれた。 ほら、やっぱりね。 「そぉだと思った」 愛し合ってる二人が無理矢理 別れさせられるなんて悲しすぎる。 「ねぇ父さん、もぉそろそろ 母さんと別れてもいいんじゃない?」 僕の言葉に吃驚したらしい。 「いきなり、何を言い出すんだ」 だって、半ば 押し付けっていうか 無理矢理っていうか そんな感じでした 結婚に二十三年も続けて来た 父さんは偉いと思う。 オレにはまず無理だろうな。 琢磨と無理矢理 別れさせられて 父さんと同じ立場になったら 我慢出来ないだろう。 まず、見合い会場から 逃げ出すだろうな。 「オレも二十過ぎたし、 父さんがまだ心夜さんを 愛してるなら会いに行くべきだ」 「しかし、作家になった今、 何処に住んでるかも知らないし……」 弱腰だなぁ(苦笑) 「心夜さんの実家とかは?」 流石に出版社には聞けないしなぁ。 もしかしたら、心夜さんだって まだ父さんのこと 愛してるかもしれないし…… 「何弱腰になってるのさ」 オレももぉ小さい子供じゃない。 今更、父さん達が 離婚したところで困らない。 「もぉ、好きに生きていいんじゃない?」 「心……」 読み方を変えて名前の一部を 息子つけるくらい心夜さんが好きなら 元サヤに戻ればいいと思う。 「分かった。 今更かもだけど後で心夜の 実家に電話してみるよ」 良かった父さんがその気になってくれて。 その日の夜、父さんは 心夜さんの実家に電話した。 「その様子だと心夜さんと話せたんだね」 電話の終わった後の 父さんは嬉しそうだった。 「あぁ…… 最初は俺からの電話に 信じられなくて何回も確認されたよ」 まぁ、心夜さんの気持ちも 分からなくもない。 二十三年振りに音信不通だった 好きな人から電話が来れば 誰だって驚くだろう。 そぉだ!!肝心な心夜さんの返事は? 「なぁ父さん心夜さんの 気持ちは聞けた?」 気になる…… 「心夜もまだ俺のこと 愛してるって//////」 ぅゎぁ~ こんな父さん初めて見たかも。 「良かったね」 オレも頑張らなきゃな。 その後は、母さんが 帰って来るまで ソファーに隣同士に 座って心夜さんの本を二人で読んだ。 あの日から一ヶ月が経った。 父さんはあの日に 心夜さんの携番を 聞けたみたいで たまに電話やメールをしている。 そして、時々会いに行ってる。 勿論、母さんには秘密で。 オレはというと母さんに まだ別れないのかと言われたり 仕舞いには昔の父さんの時の様に 見合いしろと言い出す始末だ…… 後で父さんに相談しよう。 実家に帰って来てもぉすぐ半年が経つ。 父さんに母さんの話しを聞かされた後 すぐに琢磨に電話をした。 そしたら、全部話してくれてた。 母さんに呼び出され直接 別れろと言われたこと。 オレを愛してくれてること。 その話しも含めて、父さんが 帰って来たら話しがしたい。 「心、話したいことって何だ?」 母さんが寝た頃オレは 父さんの書斎に居た。 「母さんと 琢磨のことなんだ……」 オレは父さんに全て話した。 母さんが琢磨を 呼び出してたこと。 見合いをしろと言われたこと。 「そんな事があったのか……」 「うん……」 本当は幸せの中にいる 父さんには話したくなかった。 「由那も困ったものだな」 「ごめんね父さん…… やっと心夜さんと また会える様になったのに」 二人の邪魔をしたくない。 「心が謝ることじゃないだろう? これは、琢磨君を 勝手に呼び出した由那が悪いし、 俺と心夜は 上手くいってるから大丈夫だ。 今は 心と琢磨君のことを 由那に納得させるのが最優先だ」 父さんは本当に優しいなぁ。 「ありがとう、父さん」 「どういたしまして」 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-*-*-*-*-* 「心達のことを納得させたら 俺のことも話そうと思ってるんだ」 離婚の話しだよな。 「そっか…… でも、母さん怒り出しそうだね」 オレと琢磨のことも 父さんの離婚の話しも。 「母さんには悪いと思うが 愛がないのに一緒に居る方が 俺はどぉかと思うんだ」 それは言えてるかも。 「さて、何時話すかな…… まずは心達のことだよな」 「そぉすると琢磨君も 呼ばなきゃいけないが 連絡は取れるか?」 そこは大丈夫だ。 「ぅん」 母さんに見つからないように メールしなきゃいけないな。 「じゃ、琢磨君と相談してくれ」 「分かった。 部屋に帰ったら早速メールしてみるよ」

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