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【二年目の記念日】1
俺、水上 雷のトレードマークは両耳に二つずつのピアスと、中一から染めてるキンキラの金髪。
あと、チビってとこくらいかな。
恋人の迅が俺のスマホを取り上げて高らかに腕を上げてしまうと、ジャンプしても届かないくらい、チビだ。
「最近お前は俺よりスマホスマホスマホスマホなんだけど、どういう事かな。 雷にゃん?」
「そんな事…っ、ないっ!」
「そんな事あるから言ってんだけど。 仕事終わったら連絡しろって言ってるよな? 朝起きたらと、夜寝る前も、連絡しろって言ってるよな?」
「してる! 言う事…っ、聞いてるじゃん!」
「四日前からちょいちょい連絡寄越さねぇよな。 そのわりには俺と会ったらスマホスマホスマホスマホ…」
「そんな事…っ、ないっ!」
「そんな事あるから……」
迅がめちゃめちゃ怒ってる。
言ってる事は分かるんだけど、迅の奴キレ過ぎてて俺の話聞いてくんないモードなんだよな。
もうこのやり取り五回目だよ。
しかも、街のド真ん中でする会話じゃないと思うんだけど。
迅はずっとスマホを高く掲げて、俺はそれを奪おうと何回もジャンプして、周りの人達はみんなクスクス笑ってるこの状況、かなり恥ずかしい。
「何回このやり取りすんだよ。 こっち来い」
「うわぁっ……!」
それはこっちの台詞だ!って叫ぼうとしたら、あっという間に迅の肩に担ぎ上げられてしまった。
抵抗の余地なくこんなに簡単に運ばれる俺……。
「なぁなぁ〜もう暴れねぇから下ろせよ〜迅様〜」
「お前がそんな甘えた声出すのは、嘘吐く時とセックスの時だけだ」
「わぁぁん! そんな事ないのに〜! …あっ、もっさん久しぶり! ひー、ふー、ほー、今日も可愛いな♡」
さっき駅前に着いたばっかなのに、スマホの奪い合いだけしてソッコー迅の家だなんてアリかよ!…と思ったけど、もっさん達にも会いたかったからまぁいいや。
三匹の子猫達は今や立派なにゃんこに成長した。
俺でもたまに間違えちゃうくらいソックリな三兄弟だけど、迅が律儀に鈴の付いた色違いの首輪で色分けしてる。
見た目に反して、迅は何とも甲斐甲斐しく四匹のにゃんこ達の世話をしてて微笑ましいくらいだ。
俺がボコられそうになってすかさず駆け付けてくれたあの日から、もっさんと子猫達をまとめて引き取って可愛がっててくれて、マジで感謝しかない。
しかも、迅の兄貴が結婚して実家出たからって、自分で隣との壁ぶち抜いて無理やり二部屋をワンフロアにして、にゃんこ達のスペースを作ったんだから凄過ぎる。
「おい、雷。 空気読めよ」
俺がもっさん達と呑気にじゃれていると、未だ俺のスマホを奪ったままの迅が仏頂面でベッドに腰掛けた。
「だってみんなと会うの久々だからさ。 相変わらずもふもふ〜! 可愛い〜!」
「そんな雷にゃんは、迅様とは会いたくなかったらしいな?」
「なんでそんな事言うんだよ? 仕事忙しかったんだってば」
「二十一時閉店のカフェ店員は多少残業あったとしても二十二時には店出られるだろ。 その後何してんだよ。 ここ四日、お前俺に隠れてコソコソどっか行ってんだろ」
「へっ!? い、い、行ってないよぉ〜何言ってんですか、迅様〜♡」
「………………嘘だな」
な、なんでバレてんだ!?
ちゃんと夜「おやすみ」って毎晩LINEしてたはずなのに…!
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