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第2話

 しかし、そのような漢(おとこ)所帯で、ただ1人影を背負う者がいた。 竜崎青(りゅうざきせい)。 竜崎清吉の息子、ひいては龍崎組の坊である。 青は、亡き母に似て線の細い透けるような色白の青年だった。儚げな色香が芳しく、女性と言われても遜色ない程の美形であった。 ただ、組の漢達が殆どアルファかベータなのに対し、唯一のオメガでもあった。 組の坊ということで、手を出す輩はいなかったが、手を出せば即始末されるか、その手は、胴体と切り離されるか二つに一つだったせいもある。 そんな、青に、父親である清吉は、腫れ物を扱うように距離を置き、若頭補佐の新羅出雲(しらぎいずも)に、その世話役を命じたのであった。 新羅は、命じられたまま淡々と業務をこなすように、青の世話をした。 食事や着替え、大学への送迎。 それは、プランニングされたAIかと思う程の性格さと無表情で。 そのせいか、青は、一向に心を閉ざしたまま。陰を被ったままだった。 冷酷にも見える世話を受けながら、こんな扱いを受けるくらいなら、死んだほうがましだと考えるくらいには、日に日に病んでいった。 どうせ自分は、組を継ぐ気なんかない。そんな器でもない。まして、オメガである。 せめてアルファならば、オメガの女に子を宿させ跡継ぎくらいは作れるものを…… 今の僕には、それすら出来ない。 まして、自分が他所の男の子を身籠って産むなど、言語道断。 そんな愚行を父が許すはずもない。 侠気で生き抜いてきたようなあの人が、息子が犯されて妊娠したなど、受け入れられるはずもない。 では、なんのために自分は生きているのだろう……。 子を成せず、世継ぎも作れず、組をも継げず…….。 こんな家に生まれなければよかった。 いや、そもそも、存在してはいけなかったんだ。 自問自答に陥り、何度となく傷つけた細い手首を握りしめ、歯軋りをする。 今夜も、また、 切ろうか……。 いっそ、その方が……。 血を見たい。 生きてる証を……。 金属音を立ててカッターの刃を滑らせようと手首に当てた……。

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