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わん
僕と先生が出会ったのは、先生が不純異性交遊をやっていたから。たったそれだけの事で、僕と先生の関係は始まった。
私立坊ヶ丘高等学校 は僕が入学した普通の共学校。自然にあふれのびのびとした生活を、モットーらしく木が多い。園芸部も力はいってるし、写真部とか美術部とか、文化部に力の入った文系高校だ。個人的には体は動かすべきだと思うんだけど、まあ閑話休題。
話を戻そう。高校2年生の春、僕は先生に出会った。白衣を着た保健室の先生。つまり養護教諭で、まごうことなき男の先生。成田金 。黒髪は少し長めで右側を後ろに流し、形のいい耳が見えてる。真っ黒のピアスが一つ耳たぶに鎮座してるのもいい。目は細目でいつも眠そう。青いフレームのアンダーブロータイプのメガネがよく似合う。とどのつまり、イケメン教諭だ。男女区別なくモテる。教師内からの評価もいいし、生徒に対して区別、差別なく優しい。
と思ってたのはつい3秒前までなんですがね。
カーテンの奥から聞こえるスプリングの悲鳴。喘ぎ声。少し状況を整理しよう。此処は旧校舎。昔使われてた校舎で、立ち入り禁止である。今寝てる場所は旧校舎の保健室のベット。ベットはここしかないし、多少汚れてるけど家からシーツ持ってきてるし問題はない。現状は問題だらけだが。
「アンッ……ンッもっとぉ……」
AVを聴いてるときみたいな、でもAVみたいな演技感の無い、本当に感じてる声が聞こえる。しかもこの声、クラスで一番かわいい佐倉怜 さんの声だよなぁ。
「ん? どこに欲しいの。ちゃんと言って」
「奥っ……せんせぇの、もっと奥にぃっ……アアンッ」
よく見るエロ同人みたいな。ギシギシアンアンってやつ。やばい。俺の息子勃起する。佐倉さんの声より先生の声がエロい。耳障りの言い低い声が甘くて、僕に言われてるわけじゃないのに腰にクる。寝起きでボーっとしてる頭にそのエロ声はクる。脳みそがぞわぞわして思わずズボン越しに擦る。
音を出すな。存在感を出すな。今出ていくのは死を意味する。けど股間のこいつをどうにかしたい。思案しろ。成田先生にも佐倉さんにもバレない様にヌク方法。
いや、いやいやいや。そもそも僕は何で佐倉さんじゃなく、先生の声で勃起させてるんだ? 普通は逆だろう。佐倉さんのほうが喘ぎ声も大きいし、よく聞こえるし、何より彼女は女だ。女に欲情するほうが普通だろう? なんで僕は男に……?
いやもうそんなこと後でいいか。今はとりあえずこいつを抜きたい。落ち着きたい。気持ちよくなりたい__
僕の一番近くから、何かが落ちる音がした。
枕元に置いていたはずの僕のスマートフォンは消えていた。
息を呑む音がする。急いで着替えるかのような音と、バタバタと走り去る音。恐らく、佐倉んが怖気ついて逃げたのだろう。
「あーあ……行っちゃった。折角その気になってきたのに」
心臓が痛い。起きてることを悟られるな。寝てろ、絶対に。
隣のベットで服でも着てるんだろうか、ギシギシ聞こえる。息遣いも聞こえてる。エロい。すごくはっきり言ってエロい。熱が引ききってないのか、吐息交じりなのは腰にクる。
「2のA、出席番号1番青谷望 くん。狸寝入りしてないで起きて」
「っ___!?」
耳元で話しかけられて、なおかつ耳に息を吹きかけられた。腰から脳みそにかけて電気が走ったみたいにびりびりする。なんでって?
「おお、良い反応。すごい顔真っ赤だけど、なに。先生の声に興奮した? 変態君」
だって僕は、最低最悪であるはずの男に、恋をしているんです。
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