放課後、秀は5組の吉牟田 靖（よしむた やすし）と下校していた。 　手には、くだんの手紙を持っていた。 「これ、どう思う？」 「秘密、って何だよ。秀、お前誰かに知られたらまずい秘密とか、あるのかよ」 「それは……」 　それは、今まさにそういう状態にあるのに。 　秀と靖は付き合っていた。 　だが、誰にも言えない秘密。 　同性同士で恋人になるということが、この高校ではまだ奇異に見られていた。 　1年生の頃、女子同士で付き合っていた子が秀のクラスにいたが、それを執拗にからかわれ、不登校になってしまったのだ。