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prologue
祖父の代から続く由緒正しき白薔薇の洋館。
僕は……二十代で、この洋館の主となってしまった。
アーチ型の両開きの窓を大きく開け放つと、中庭に咲く白薔薇の花びらが夜風に舞い、二階までふわりとやってきた。
夜の空気はどこまでも澄んで冷たいのに、僕の躰はさっきからずっと火照っていた。
高揚しているのだ。
緊張しているのだ。
この先の扉を開くことに対して……
「そこにいたのか」
「はい」
振り向けば、彼が優しい眼差しで立っていた。
「さぁこちらにおいで」
彼はまるでおとぎ話のように、僕に1本の美しい大輪の白薔薇を差し出した。
受け取ると、彼の誠実な気持ちが胸に刻まれ、永遠の愛を誓う口づけを交わすと、ふわっと抱きかかえられた。
「行こう、おれたちの出航だ!」
白薔薇の甘く華やかな香りが誘う、僕らだけのおとぎ話の始まりだ。
今、その扉を開く。
ふたりの力を合わせて──
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