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第182 直後の2人 3

あの傷でと思いながら、何だか理由を含めて全てがあの方らしいと思ってしまう。 確かに昨日の傷の深さを思えば通常ならばしない、というよりもできないだろう。でもギガイを通常と同列視することも違和感があるのだから、何とフォローをすれば良いのか分からなかった。 「…いつもの流れで思わず、ということではございませんか?」 どうにかリランが絞り出した角の立たない理由に他の2人も乗っかることにしたのか。 「きっとそうに違いありません!!」 そう言って大きくレフラへ頷いて見せていた。 だけど本人たちでさえ説得力が皆無だと思っているような台詞なのだ。 「それでもです! 私だってギガイ様が傷付いて欲しくないのに、全然分かっていらっしゃらないんだと思います! 私の手でケガを負ったギガイ様の傷が、さらに私のせいで悪化をしたらと思うとこんなに怖いのに、なぜこれぐらい平気だと笑うんですか!! 」 「これぐらいって……ッ!」 あの傷をこれぐらいだと言って退けてしまうのなら、いったいどの程度の傷ならばあの主にとって重傷となるのかが分からない。ラクーシュの口から思わず乾いた笑いと一緒に呆れたような声が零れてしまう。すかさず横からリランがなにくわぬ顔でそんなラクーシュの脇腹に素速い一撃を入れて黙らせる。 これでレフラの感情をさらに煽ってしまったらヤバイのだ。 「レフラ様、まずはそのお気持ちをギガイ様へお話ししてーーー」 だが幸いというべきか、不幸にもというべきか。珍しくギガイに対してものすごく腹を立てているレフラの耳にはそんな3人の言葉は届いていないようだった。 「だから決めたんです!!」 そのままの勢いで顔を真っ赤に染めて何かを決断する姿に3人の背中を冷たい汗が流れていく。 「決めたって、何をですか…?」 正直なところ、この流れからは良くない予感しかしないのだ。 エルフィルがゴクッと唾を飲んで、恐る恐る聞き返した。 「ギガイ様の傷がちゃんと治って、ギガイ様がそういった所をしっかりと分かって下さるまで、今までみたいにはくっつきません!!」 内容を聞くだけなら微笑ましいとさえ言える宣言だった。 何も知らない者が聞けばただの痴話喧嘩として笑って聞き流せもするだろう。 だけどレフラがいま言っている相手はあのギガイなのだ。 日頃あれだけ溺愛しているレフラから、拒否をされた時のギガイの反応が正直なところ怖かった。 もちろんこれだけレフラを溺愛しているギガイのことだ。さっき見た姿のようにレフラの機嫌に合わせてギガイが譲歩する可能性だってあるだろう。 だけど報告書で見たいろいろな過去から、レフラ自身がひどく独りを苦手としていることは知っていた。我慢強くて日頃から自分を律しがちな分、そんな所を押し隠してしまいがちだということも、今では3人とも知っている。 そんなレフラがいままで当たり前だったはずのギガイとの触れ合いを断っても平気なのかが心配だった。 昨日あんなことがあったばかりで、今は怒りが勝っているだろう。だけど落ち着いた時にこの決断がレフラ自身を追い詰めてしまわなければ良いと思う。 今までが辛いことも多かったはずなのだ。そんな中でも『内緒です』と言いながらギガイを思って微笑んでいた姿を思い出す。せっかくトラブルが解決したのならずっとあの笑顔が続いて欲しいと、日頃レフラのそばにいる3人だって思っているのだ。 「レフラ様、意地を張ってしまいますと、ご自身が辛くなってしまうこともありますよ」 「大丈夫です!!こう見えても我慢強い方なんですよ!」 報告書や今回のトラブルを通じてそれはもう知っている。 「だからこそ心配をしておりますよ」 エルフィルの言葉にラクーシュやリランも苦笑しながら頷いた。そんな3人へレフラが小首を傾げていた。 「心配ですか……?」 「はい。取りあえず、ムリはなさらないで下さいね」 何について言われているのか、ピンッと来てはいないのだろう。それでももとは根が素直なレフラなのだ。 「分かりました、気をつけます」 戸惑った表情のまま、コクンと3人へ頷いていた。

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