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第173 続いていく日々 2

「お前は本当に強かになったな」 「はい」 その一言に、ますますギガイが顔を顰める。それでも、レフラはクスクス笑いながら、そんなギガイの顔中にキスを落としていく。 だって、どれだけ表情は険しくても、今もギガイは優しく腕を回して、抱えてくれている。そんなギガイの仕草の1つ1つが、レフラにワガママが言えるだけの、安心を与えてくれていた。 「ギガイ様、一緒に行きたいです」 耳下へのキスを最後に、レフラは首筋に顔を埋めた。そのまま、グリグリと額を押しつける。 「しかし、安全が───」 「行きたいです」 「そうは、言っても───」 「お願いです」 「だから、お前の───」 「どうしても、ダメですか?」 言葉では敵わないギガイだ。 わがままを言うと決めた時には、頑張って説得するより、潔く駄々をこねた方が聞いてもらえる。これも、ギガイと何度も繰り返した攻防戦で、レフラが身に付けた交渉術だった。 「~~~ッ!!」 唸るような小さな音に、レフラが顔を上げてみる。思った通り、ギガイは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。 「……一緒に、行きたいです……」 ダメ押しに、縋るように見つめてみれば、ついにギガイも諦めたのだろう。 「……分かった、 連れて行ってやるから、その表情は止めろ……そのまま泣き出されそうで、ハラハラする…………」 全く……。 小さく呟いたギガイに、レフラはエヘッと肩をすくめた。 「ワガママを言って、ごめんなさい。でも嬉しいです」 ギガイの想いにつけ込んでいるのだ。気まずさは、それなりに感じてはいる。だから、レフラだって頻繁にこんな方法はとったりしない。ここぞ、といった時の最終手段として、いつもはちゃんと控えている。 (それに、やり過ぎちゃったら、お仕置きされちゃいそうですし……) でも、何度も置いて行かれた視察なのだ。連れて行ってもらえることが、やっぱり嬉しくなってくる。 「次の視察は来週ですか? 一緒に行けるのが嬉しいです」 ニコニコと笑ったレフラの頬を、ギガイがムニッと引っ張った。 「さっきのしおらしさは、どこにいった?」 そう言うギガイの顔も、いつの間にかだいぶ意地悪いものに変わっている。久しぶりに見たその表情に、レフラは思わず固まった。 「まったく、平然と私を謀るように成るとはな……」 しかも聞こえてきた言葉も、かなり不穏なものなのだ。 「……ぎがい、しゃま……」 頬を引っ張られたまま、呼んだギガイの名前はおかしな音になってしまった。それをククッと笑ったギガイが、レフラの頬から手を離す。 「まぁ、いま約束はしたからな。次の視察には連れて行こう。だが、こうやって色々なことをしでかすお前だ。前のように、対策をしておいた方が良いだろうな」 「対策……?」 「あぁ、ここにあの足環を嵌めてやろう。ただし今度は、対になる石は大きめな物を宛がうからな。鈴が鳴らないように、精一杯努力しろ」 祭りの時に一度だけ使われた共鳴石の足環と、レフラの茎を戒めていた物を思い出して、一気に血の気が引いていく。 「まっ、待って。ギガイ様、怒ったんですか?」 「いや、怒ってはいないぞ。だが、最近はずっとお前に翻弄されっぱなしだからな。意趣返しってところだ」 口角を上げて告げてくるギガイが、どこまで本気で言っているのかが分からない。でも、あんな仕置き染みた仕返しなんてイヤだった。 「ギガイ様、本気ですか……」 レフラはフルフルと首を振って、止めて欲しいと訴える。 今度ばかりは誤魔化しではなく、真剣な懇願だった。 「……さぁな……と言いたいところだが、冗談だ。本気で泣き出しそうだな」 その怯えたようなレフラの表情に、やり過ぎた、と思ったのだろう。意地悪な笑みから一転して、柔らかく苦笑したギガイが、レフラの頬に手を添えた。

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