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第一章・3
勤勉で律儀で、常に新しい情報や学説を解かりやすく教えてくれる衛先生。
時折まるで見当外れのボケをかましても自分では全く気づかず、笑いこける生徒たちをぽかぁんと眺める衛先生。
漆黒の長い直毛を一束に結んで流していても、それは何か勘違いしている嫌味な大人のオシャレには見えず、まるで潔い武人のような佇まいを醸している。
飾らず、気負わず、そして相談事には真摯に向き合ってくれる衛先生は、愛すべき先輩として多感な年頃の高校生たちにも認められ、親しまれ、受け入れられていた。
しかし1人だけ、そんな衛にも噛みついてくる跳ねっ返りがいる。
それが、橘 陽(たちばな ひなた)だった。
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