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第一話∮嬉しい間違いと私達の関係
それは、秋人の言い間違いから始まりました。
友人で恋人の春は天涯孤独の身。
そんなある日、秋人が私を呼んだ後で
つられたのか春のことを
普段は“春さん”と呼んでいるのに
“春兄さん”と呼んだのです。
私は笑い、春は硬直してしまいました。
「ご、ごめんなさい」
呼んでしました秋人は慌ててました。
『よいのではないですか?(クスッ)』
まだ
硬直したままの春をチラッと見て
弟の頭を撫でました。
ある意味、間違っていませんしね(笑)
。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。
それから数日後、
父にその時の話しをすると
春を養子にしたいと言い出したのです(驚)
私としてはある意味
嬉しい話しですが春本人は
断るのが手に取るようにわかります。
「春君と言ったかな?」
『はい、四つ上の友人で
カミングアウトしてしまいますが
恋人でもあります』
さて、どんな反応が
返ってくるでしょうか?
「え!?」
普通は吃驚しますよね(苦笑)
「そうか、なら尚更養子に
迎えなくてはな」
父さんは予想通りですね。
『ありがとうございます*♬೨』
私達の会話に秋人は
更に吃驚したようです。
「お父さんは驚かないの?」
「僕は、二人が幸せなら
それでいいんだよ。
だから、二人の恋人が
同性でも異性でもどちらでもいいんだよ」
母さんと父さんが離婚したのは
秋人がまだ小学校に上がる前でしたね。
『明日、連れて来てもいいですか?』
私が訪(たず)ねると父さんは
二つ返事でいいと言ってくださいました。
◌翌日◌
お昼を少し過ぎた頃に春は来ました。
『お邪魔します』
玄関まで出迎えた私には少しばかり
緊張しているように見えました。
『春、リラックスですよ?』
“養子”の話しはしていないので、
約束をしていなかったのに
何故呼ばれたのか
わからないのでしょう(苦笑)
私と会う時は必ず
約束をしていましたからね。
『父さん、連れて来ましたよ』
春とリビングに行くと
父さんと秋人がキッチンで
お茶の用意をしていました。
「“春兄さん”、いらっしゃい」
秋人、わざとですね(笑)
昨日、私達が恋人同士だと
話した時には驚いていましたが
受け入れてくれました。
「僕は初めましてだね(๑^ ^๑)
冬也と秋人の父親で
蓮夏(れんげ)っていいます。
よろしくね♬*.+゜」
春は秋人はともかく、
父さんがいることに
困惑していますね(苦笑)
『冬也、どういうことだい?』
立ったまま、硬直しかけている春を
とりあえず、座らせました。
『今日、あなたをお呼びしたのは
父から話があるからなんです』
内容を言わない私の言葉に
最悪な方に考えてしまったのでしょう。
テーブルの下で繋いでいた手が
離れようとしたので
ギュッと握り直しました。
「僕から春君に話す内容は
悪いことじゃないよ(ニコッ)」
雰囲気で何かを感じたのか
父さんは春に笑いかけました。
『…………』
「あはは、そう言われても
何言われるんだろうって思うよね」
不安げな春の表情(かお)を
見ながら言いました。
「そうだね、言ってしまおうか。
僕の話しと言うのはね、春君を
養子にしたいってことなんだよ(๑•᎑•๑)」
隣に座っている春は
私の方を向いて“どういうこと?”
と目で訊いてきました。
『父さんはあなたが一人ぼっちだと
知って、養子にしたいと言ったのです』
数回瞬きをすると、私を見ていた目が
父さんの方に向き直りました。
『私達が恋人同士だと告げたら
《なら尚更養子にしなきゃ》と言ったのですよ』
『気持ちは嬉しいですけど……』
えぇ、春が断ることは
わかっていましたよ(苦笑)
「僕からもお願いします」
父さんの隣に座っている秋人も
真剣な眼差しで春を見ています。
『春、私達の家族になってくださいませんか?』
もう一度、春の手を握りました。
私達の真剣さが届いたのか
困ったような泣き笑いのような
表情(かお)をして
父さんに『宜しくお願いします』と
座ったままお辞儀をしました。
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