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すれ違い①
一方ケイを探していたノイルは、部下の狐と牛のギャペラを前に怒りに震えていた。
「どう言う事だ!?
あの青年を見つけたら私へ連絡しろと言った筈だ!!」
「そ、それは………」
ケイをノイルに黙って研究員に売ったのがバレて二人は動揺を隠せない。
何故バレたのか………
実は、二人の会話の様子をたまたま聞いた他の部下がノイルへ報告し、事が露見した。
こうしてはいられない。
早くケイを取り戻さないと……
以前ノイルは研究所に警備員として配属され、捕らえられたニンゲンの見張りを任された。
ニンゲンを見るのは初めてで、ギャペラとは異なる容姿や言葉に最初は不気味さを感じたが、次第に興味を抱いていった。
だって容姿や言葉が違っても、感情はギャペラとはなんら変わりない、ただ種族が違うだけの存在なのだからと気付かされた。
ある日のこと、ニンゲンは何やら歌を歌っていた。
勿論ニンゲンの世界の言葉で。
歌詞の意味は全く分からなかったが、なぜだか無性に切なく、悲しく、そして言葉の美しさに惹かれたのだ。
それからだ。
ノイルはニンゲンに話しかけるようになり、日本語を学ぶようになったのは。
研究員達も彼の言語を解読しようと日々ニンゲンを連れ出し言葉を探っていた。
だがその一方で、ニンゲンは一日中研究に連れ出され、外にも出してもらえず、どんどん痩せていくのを目の当たりにしていた。
ノイルは少しだけでも外の空気を吸わせてほしいと懇願したが却下された。
結局ニンゲンは10年、研究所に隔離された挙げ句、一度も外に出ることなく病で亡くなった。
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