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第5話(終)※

 ゆーさんは声も可愛い。  体は貧弱だが、恐ろしく扇情的なのは透き通るような色白さんだからなのかな。 乳首も美しいピンク色で、ちょっと舐めるとすぐに固くなってツンとなる。 「あぁぁっ……星夜くん、星夜くん……っ」  そしてなんと言っても、今ぐちゅぐちゅと堪能している中の具合のそれが凄まじく男を虜にする。  何度果てても足りないのは、僕がヤリたい盛りだからだけではない。  挿抜する性器が襞を分け入る度、ぴたりと纏わり付く絶妙な締めつけは彼の意図するものではないというのだから、名器と呼んでもいいだろう。  中から愛液が湧いてきているのではというほど、昂ぶった性欲を内からも熱く感じる事が出来る。 「……っ、気持ちいぃよぉ……っ、せいやくん……!」  この体を知る者が僕以外にも居ると思うと、とにかく頭がおかしくなりそうだった。  僕を誘い込んだマイルールを持つゆーさんは、性の倫理観が低いのではないかと疑う僕はおかしいのだろうか。  乱れ狂う彼の聖域である書斎に入った事はない。  どのようにして作品が生み出されるのか、喉から手が出るほど覗いてみたくとも、この半年間一度もそのルールを破らない僕は健気だ。  そう考えると、いつからだろう。  僕に用意されたキングサイズのベッドで、決まった曜日に週に二度セックスをするようになったのは───。 「ゆーさん、僕はゆーさんのために生きていくと誓ったんだ。 どんな事でも僕は順応し、受け止めてあげます。 だからゆーさんも誓ってください、僕だけだと」 「せ、せいや、くん……っ」 「ゆーさんは僕のものだ。 そうですよね?」 「あぁ、っ……そう、そうだよ……! 俺の、星、だろ……!」 「そうです。 僕がゆーさんと出会ったのは、あなたが手繰り寄せたからだと言っていたじゃないですか。 不義理は許しませんよ」 「んぁっ……っ……せいや、星夜くんっ、!」  僕の性器は限界まで張り詰めていた。  果てても果ててもすぐに復活してしまう若い欲に、ゆーさんは毎回ついてこられない。 「…………ゆーさん……? 寝ちゃった?」  ガクガクとベッドを沈ませるほど動いたせいか、ゆーさんは唇と瞳を半開きにして意識を飛ばしている。  けれど僕は貫き続けた。  目尻から流れる涙と、だらしなく開いた唇の端から垂れる涎を、美味しく舐め取って性器を大きくする。  声があるともっと興奮するんだけれど、まるで屍姦のように静かなセックスも腰が震えるほどには昂ぶった。 「ゆーさん……っ」  最後の欲は、微動だにしないゆーさんの顔にかけた。  僕はおかしいのかもしれない。  尊敬という言葉、単語が聞いて呆れる。  彼を支配したいとは思わないのに、むしろ忠誠を誓っているというのに、ゆーさんのマイペースさが時々ひどく僕の胸を焼き尽くして壊したくなる。  汚れたままのゆーさんをベッドに残し、僕は何かに突き動かされるようにガウンを羽織って彼の書斎へ向かった。  ここだけは絶対に立ち入るな、同居初日にそう強い口調で言われた彼の秘密の場所。  宇宙と交信が出来るらしい、不可思議なゆーさんの事だ。 僕の理解の範疇を超える、よく分からないものが部屋中に散乱しているに違いない。 「秘密は許さないんだからね」  僕は自分への言い訳を呟きながら、書斎の扉を開けた。 「……これは……」  目を瞠る僕の前には、部屋一面に貼られた『星と波』の文章達。  それだけではない。  中学、高校の学生服を着た僕を盗撮した写真の数々。  買い物もロクに出来ず、そもそも出歩く事を億劫だと捉えるゆーさんは、僕が彼と文章上で出会う前から星を狙っていた。 「ふふふ……っ。 僕はまんまと網に掛かったというわけか」  引力よりも、自力で手繰り寄せる力の方が大きかったらしいゆーさんの秘密は、そのうち白状してもらう事にしよう。  星と波のように難解なミステリーは、ゆーさんにしか解けない。  ひとしきり異様な書斎を見回した僕は、そっとその部屋をあとにする。  僕の精液まみれとなったゆーさんの元へ戻ると、一際強く抱き締めて屍姦の真似事を繰り返す。 「ゆーさんのために、星夜に改名してあげましょう」  彼の望む緊縛に、僕は喜んで順応する。  ただしあの書斎には鍵を取り付けておこうと思う。  恐らく僕らは社会不適合者の道を歩むだろうし、物理的にゆーさんを閉じ込められる部屋が一つくらいあってもいいかなという、とても合理的な理由によるものである。 星と波 ─終─

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