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第43話※啓吾視点
「おはよう啓吾」
「はよー」
朝、幼馴染である那智の家の前に行くと、俺のことを待っていたのであろう那智が笑顔で挨拶してきた。
あぁ、今日の笑顔も癒される。やっぱり朝はこの笑顔がないと始まらない。
そんなことを考えるのは那智がただの幼馴染ではなく、啓吾にとって大切な存在だからだ。
もちろん恋愛対象の意味で、だ。
いつから好きだ、と聞かれれば物心がついた時にはもう好きになっていたとしか言えない。
那智の全てが好きだった。この気持ちを伝えたかった。
だけど那智はいたって普通の、ノンケな男でいつも隣には女がいた。
これが現実だ。俺も那智も男。俺が気持ちを伝えただけ、那智を困らせるだけだ。
そう思い、ずっとこの気持ちを伝えないまま那智と一緒にいた――でも、
「今日さやと放課後街に行くから啓吾は先に帰ってて」
―ズキ、
この会話...言葉...それが聞きたくなかった。聞くたびに胸が締め付けられる想いになった。
那智はもちろん俺の気持ちなんて知らない。
だから今みたいに彼女とのことを話したりもしてくる。
今の状況は辛い。
那智が彼女と別れたと話してきた時俺は、不謹慎だが嬉しくなる。でもすぐに新しい彼女ができてまた落ち込む...そんなことを繰り返している。
「りょーかい。あんま夜まで遊んで補導されんなよ」
「大丈夫だって。あーでも、もし補導されちゃったら啓吾助けに来てよ!」
そういい那智はガバッと俺に抱きついてきた。すぐ近くに那智の顔があり、香水と薄い体臭が鼻を掠める。
「しょうがないなぁ。俺頑張って助けに行っちゃうわ」
「へっへっへ、頼りにしてるぜ」
心臓は煩く高鳴り、顔が熱くなっていくのがわかる。
那智は俺から離れると投げキッスを送ってきた。
―あぁ、襲いたい。
そんな那智をみて、ついそんなことを考えてしまった。
でもしょうがない。だって、投げキッスよりも直に唇にキスしてほしいし。
もんもんと浮かぶピンク思考をなんとか振り払い、落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をした。
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