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第五章・2

 そんな気持ちを味わう事が大好きな優希に誘われて、要人は本屋に来ていた。  しかし、思いがけない出会いをしたのは、要人も同じだった。  ずっと読みたかった、あの本の続き。  上巻・下巻に分かれた本の一冊に、この小さな本屋で巡り合ったのだ。  増版もされぬまま、まるで禁書扱いを受けるようにして消えて行った問題作。  表向きは、官能小説と間違えそうな本だ。  表紙は、艶めかしい数人の男女の裸体で飾られている。  内容も、濡れ場の多い一見単なる娯楽小説。  しかしその裏テーマは、政治の中枢に対する批判と嘲笑に満ちている、と書評家が語った。  政治家と崇められる、民衆の模範となるべき人間の、この堕落しきった有様はどうだ。  派閥に汚職。癒着。裏取引。  あからさまな描写は避けてあるが、それが政府の特殊階層の者たちが織り成す腐敗であることは、読み進めてみるとすぐに勘付く。  

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